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時間に追われる私たちのために -「モモ」評

娘に誕生日プレゼントに渡したのをきっかけに、読み始めた。一気に読んだ!昔いつ読んだか忘れたが、小さい頃だったと思う。記憶の彼方にあったが、今読むと、これが深い。

大江麻理子さんや小泉今日子さんが愛読書といい、多くの、とくに女性の絶大な支持を集めるこの本。なんと1973年の著書なのに、全く色褪せない。むしろ、このテクノロジーが発達した21世紀こそ、刺さる内容だ。

時間どろぼう。マイスターホラ。そして、モモ。私はジジが好きだ。ジジこそ、現代人の象徴だ。時間に追われて、自分を見失って、怒ってばかりいる。もっと自分の時間を大切にできるのに。もっと良い時間を過ごせるのに。

読んだ後は、自分の時間の流れ方が変わったように思えた。そう、感じ方、考え方で、すぐに変わる。天丼は二杯食えない。人間のやれること、考えることなんて、1万年変わっていない。進歩したのは技術だけ。人間自身は、何も進化していないのだ。

後段は出口裕明さんの受け売り。出口さんがジョージ・オーウェルの「1984」の書評をしていた中で、仰っていた。モモは、自分の時間を、大切にする。仲間との時間を大切にする。人の話をじっくり聞く。誰でもできそうだけど、現代人の多くができていない。ああ、何てバカなんだろうね。忙しくすることこそ、意味がある風潮。私自身も然り。大いに反省。もっと自分を大切に、仲間を大切にした時間の使い方ができるだろうに。

考え方だけで、すぐ変えられる。皆さま、すぐ読めるので、一度読んでみて下さいな。女性にも、男性にもオススメ。もちろんおじさんにも。説教じみたところもなくはない(そういう批判もあるようだ)が、児童書とは思えない深く楽しく、切なくドキドキする内容。

翻訳文がいささか古風で演劇風なのも良い味が出ている。翻訳がいいな、と思って検索してみたら、翻訳が素晴らしいことを分析したものがみつかった。なるほどやはり。言葉が美しいと、女性の支持を大きく集めるということなのか。大島かおり氏のセンスが光る秀逸な翻訳。

「時間術大全」とか、時間をつくるために効率を追求することにばかり目が行き過ぎて、本質的なことを見失っていた。時間は誰にでも平等だ。でも、誰にでも、密度の濃い時間と薄い時間がある。1分1秒でも濃いときもあれば、数時間が薄いときもある。音楽をやっているのに、気づいているはずなのに、知っているはずなのに。

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