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〈18〉躾は支援員がするものなのか

マナーやルール、言葉遣い、態度。人として生きる上で大事なことですよね。それを子どもに教えるということは、親としてとんでもなく重大ミッションなわけです。

放課後児童クラブで様々な保護者を見ていると、どんな親でも、その親なりに必死に子育てしていることがよくわかります。

この混沌とした時代に子育てを頑張る全ての親に、本当によく頑張っていますねという最大限の寄り添いを大前提として、今回は敢えて躾について述べたいと思います。


親自身の人間性や生活レベル、能力が子ども達に与える影響はとても大きいものです。

親自身がどんな価値観で、どれほどの道徳心や倫理観で生きているのか、子育てをすると本当に問われます。

またそれは親自身がどう育てられてきたかという、時にパンドラの箱を開けるかのような振り返りを強いられます。

それが先祖代々脈々と受け継がれてきたようなものですし、またそこに神経発達症(発達障がい)などが影響している場合も考えれば、本当に今目の前にいる子どもだけの問題ではありません。

筆者自身も今現在小学生の親ですから、自分がどう育ってきたかから目を背けることができません。

自分が育てられたようにしか子どもを育てられないと思うこともありますし、自分が育ってきたようには育てまいと頑張ることもあります。

そして放課後児童クラブで様々な親子を見ながら、もっと自分の子どもに優しくしてあげようとか、もっと話聞いてあげようとか、こういう場面でのマナーやルールを自分の子どもにも再確認しておこうなどと、子どもと向き合うために必要なことを自分自身も学んでいます。

〈17〉の記事でも書きましたが、家庭保育が土台です。ここに保育園や幼稚園での乳幼児期の保育が積み重なります。

そしてその上に学童保育と学校教育が積み上がっていくのです。

土台の時点で、ある程度(せめてやって良いことと悪いことの区別)の躾を完了しておかなければ、学童期の集団生活は、本人はもちろん、周囲の友達や大人にとってもなかなか難しいものになるのかもしれません。

学童期に入ってから、それこそ放課後児童支援員がいくら促したって、注意したって、身に付くものではありません。

テーブルに乗る、棚に登る、食べ散らかし、片付けしない、挨拶しない、下品な言葉、乱暴な言葉…

現場の感想としては、学童期から他人が何とかしようとしても手遅れです。改善できたとしても乳幼児期の倍以上時間がかかりますし、時に直らずに次の発達段階へ進んでしまいます。

もちろん発達障がいやグレーゾーンの子どもへはアプローチの仕方は工夫する必要があります。


そもそもの親の素質の他にもう一つ、躾に影響するもの、それは子どもと過ごす時間です。

一緒にいる時間が長ければ良いという話ではありません。

確かに子どもの振る舞いを目にする時間が少なければ、見えないことはあるでしょう。目の前で行われた時に声かけするのが有効なわけですし。

ではそれが出来ない場合はどうするか。

まずは気にかけてください。気にかけないことには何も始まりません。

自分の子どもが家の外で友達や大人にどんな言葉を使っているのかな?行儀はどうかな?ルール守れているかな?仲良くできているかな?

気になったら、迎えに来た時に子どもを見てください。帰り際の短時間でも、子どもの言動を見て聞いてください。

そして支援員に聞いてください。技術がある支援員は、ちゃんと関係性を見ながら、言葉を選びながら教えてくれると思います。

躾がどうかなんて、他人から言われて良い気になる人なんていません。ですが、目を背けて耳を塞ぐことは、親としてしてはいけません。子どもの将来を生きづらくするだけです。時に子どもの振る舞いが親の立場を危うくすることだってあります。

家庭保育での躾は本当に土台になるので最重要です。でも親だけで頑張るのは苦しいです。

だから保育園や幼稚園では保育士が一緒に頑張ってくれます。小学校では先生が、放課後児童クラブや学童保育所では放課後児童支援員が一緒に頑張ってくれます。

一緒に頑張るのです。親だけが頑張ることでもない。先生だけが頑張ることでもない。丸投げだけはしてはいけません。

子どもと過ごす時間がないと躾できないなんてことはないです。

一週間7日のうち6日預けっぱなしの場合は、さすがに一緒にいる時間の確保を優先した方がよいと思いますが…

でなければ、どれほど長い時間子どもといるかより、どれほど子どもと濃く向き合うかです。

子どもと濃く向き合うために時間が必要なら、きちんと確保しなければいけません。

どれほどの長さの時間が必要かは、自分の子どもの言動をよく見ればわかります。もっと話を聞いてほしい、もっと一緒にいたい、一緒にこれがしたいなどと必ずサインを発しています。


では躾の前提に何があるか、必要か。

それは愛着であり、信頼関係ではないでしょうか。

愛着形成と信頼関係あってこその躾。

親はもちろん、子ども達と関わる職種も。

同じことを注意されたとして、好きな人から言われたのと嫌いな人から言われたのでは受け入れ方に違いが出ますよね。

子どもが相手でも、まずは信頼関係をきちんと構築しなければ、聞く耳は持ってくれません。

子どもは自分を大事にしてくれる大人の言うことを聞いてくれます。大事にしてくれない大人の言うことは聞いてくれません。

では子どもとの愛着形成、信頼関係構築のために何をするか。

子どもの話をよく聞くことです。どんな主張もまずは傾聴します。気持ちを言葉にしながら整理したり、理解を示します。この大人は自分の話を聞いてくれる大人だと思ってもらうのです。

言いなりになるのではありません。全てを聞いた上で、物事の良し悪しはその都度伝えます。

それを積み重ねるのです。積み重ねて子どもの信用を得るのです。1年生だった子どもが4年生、5年生になってやっとということもざらにあります。

自分を認めてくれる、正しいこと間違っていることをきちんと教えてくれる大人だとわかってくれると、少しずつ子どもの言動は変わっていきます。

これを親も周りの大人も皆がするのです。

それが社会で地域で子どもを育てるということなのではないでしょうか。



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