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オリンピック開会式のゲーム音楽行進が世界から「無名曲」「残念」と酷評されてしまったのはわりと予想できた件

東京オリンピックが盛りあがっております。

連日の金メダルラッシュに、私も興奮していす。

選手たちは頑張っていますね。運営も、放送も大きなトラブルはないようです。このクソ暑い中、頑張ってくださっているスタッフの人たちのおかげでしょう。

なんだかんだ、開会できたことは良かったのだろうと思います。特に選手たちにとっては。みんな表彰台で感謝の言葉を述べておりますがこのコロナ禍の開催は当たり前じゃなかったということなんでしょう。

ただいっぽうで、ひとつだけ納得いっていないことがあって、あの開会式ですわ。

開会式に文句をつけると「盛りあがっているのに水を差すな」とか「開会式、良いところもあったじゃないか」とか言われそうではあります。知り合いも関わっていたりするので、彼らをおとしめる気がして、気が滅入る。

あらかじめ言っておくと、私は開会式の全てを否定しているわけではありませんよ。

あれだけのショーを、事前のトラブルが多々ありながら、大きなミスなく終わらせたスタッフは神がかっていると思います。

自分もまがりなりにも生放送のディレクションをやる立場なので、あれがどれくらい凄いことか、難しいことかの片鱗はわかるつもりです。

あの開会式に携わったすべての人へのリスペクトは、まず最初に来るべきだと思っています。

ピクトグラムも面白かったし、ドローンも世界水準は知らないが素晴らしかったです。

いっぽうで、そもそも廃案になったMIKIKO案だったらどれだけ良くなったか…という思いはぬぐえません。

現場力が素晴らしかっただけに、そこは本当に無念でしかないです。

世間的にもおおむね不評のようっす。

ただ、そんな中でも一つだけ日本のSNSで絶賛されているところがあります。

選手入場シーンで流れたゲーム音楽です。

ドラクエにはじまり、ファイナルファンタジーやモンハンへと続く日本が誇るゲーム音楽の流れた瞬間にTwitterは沸きました。

かくいう私もドラクエ音楽のCDを買いあさり、コンサートに行ったくらいのドラクエマニアなので、あの瞬間は鳥肌が立つくらい嬉しかったです。

「虐げられていたゲームがついに日の目に~」的な気持ちもないではないです。あれらの曲を秘密裏に開会式まで持ってきた運営の人達の努力にも敬服しています。

ただいっぽうで、ばーーーーーーーーーっかじゃねえのそこでドラクエかよという気持ちは超ぬぐえないっすわ。

というのも、ドラクエは日本でしか人気がないんですよ。

世界的にはぽかーんという人が多いんです。いやひょっとしたら人気がある国があるかもしれないけど、世界的にはそう。

だからこんなふうに言われちゃうんです。

>ニューヨークタイムズ「行進曲は日本のビデオゲームミュージック
しかし最も有名なゲームスタジオNintendoのものがなく落胆」

https://nytimes.com/2021/07/23/sports/olympics/opening-ceremony-music-video-games-mario.html

>ワシントンポスト「過去40年世界で支配的だった日本のビデオゲームだが知名度低めの選曲が多く残念」

https://www.washingtonpost.com/video-games/2021/07/23/video-game-music-olympics/

うるせえよ馬鹿。でもそう言われると思ったよ…。

日本の誇る名曲たちが、無名の扱い、がっかりミュージック扱いって悔しすぎるじゃありませんか。

■セットリスト

ドラゴンクエスト「序章:ロトのテーマ」/ファイナルファンタジー「勝利のファンファーレ」/テイルズオブシリーズ「スレイのテーマ~導師~」/モンスターハンター「英雄の証」/キングダムハーツ「Olympus Coliseum」/クロノ・トリガー「カエルのテーマ」/エースコンバット「First Flight」/テイルズオブシリーズ「王都-威風堂々」/モンスターハンター「旅立ちの風」/クロノ・トリガー「ロボのテーマ」/ソニック・ザ・ヘッジホッグ「Star Light Zone」/ウイニングイレブン(Pro Evolution Soccer)「eFootball walk-on theme」/ファイナルファンタジー「MAIN THEME」/ファンタシースターユニバース「Guardians」/キングダムハーツ「Hero’s Fanfare」/グラディウス(Nemesis)「01 ACT 1-1」/NieR「イニシエノウタ」/サガシリーズ「魔界吟遊詩-サガシリーズメドレー2016」/ソウルキャリバー「The Brave New Stage of History」

なんでクロノが2回やねん…。

いっぽうリオの開会式では、マリオとパックマンを使ったんです。そのときは大盛り上がりでした。

これの制作にかかわった当時のチームは、なんならパックマンよりドラクエのほうが好きかもしれません。

ただそこで自分軸のJRPGじゃなくてパックマンを選ぶセンスがいいんですよ。キャプテン翼とか、ドラえもんとかね。

だからなんで「日本の30代から40代のオッサンにはストライクだけど相手の知らない曲」を本番で持ってくるかな~。

それってめちゃくちゃ内向きで、オリンピックのテーマである相互理解も多様性もクソもあったもんじゃないと思うんですよね。

いろんな考えの人がいる、相手を認めるというのが多様性だとすれば、まずもって自分の価値観に相手を当てはめてどーするよと思っちゃう。

日本は、ほかにもピカチュウ、ストリートファイターとかを持ってるじゃねーかよ。リオからマリオ戻ってくるフリはどーした。

ゆっとくけど、私、ポケモンにも思い入れはない世代です。ドラクエ3が手に入った時、泣き崩れるくらい嬉しかった男ですよ。過去作ぜんぶやりこんでますよ。

でもあえていう。ここで使うべきはドラクエじゃないだろう…。

これと同じ理屈で、採用されるべきは王長嶋や、QUEENの中でも世界的に不評と言われる「手を取り合って」じゃないんですよ…。王長嶋やQUEENが好きなだけに、余計悔しいんです。

もちろん「俺たちのことをわかってくれ!これが日本だ!それが相互理解だ!郷に入っては郷に従え!」という考えもあるっちゃるでしょうが。

でもそれは郷に入る側が言う理屈で、郷に招くほうが使っちゃいけない言葉ですよ。

あるべき姿として、もしやるんであれば相手の知っているゲームミュージックを流して、行進する人達を思わず小躍りさせて、小うるさい海外のマスコミに「グレート」言わせて、その中にこっそりドラクエとか「世界に伝えたい、日本の本当に素晴らしいゲームミュージック」を紛れ込ませるのが茶の心なんじゃないですかね。

オモテナシなんじゃないですかね。オーモーテーナシは最初に言ってみただけか?

名曲の浪費だ…。ドラクエはもっと輝けたはずだ…。

演奏した人、携わった人にリスペクトしつつ、めちゃくちゃ悔しいでしかないです。このくやしさをばねに我々は、本当は僕らは、やればできるんですというところを見せていかなければならないです。

以上、よろしくお願いします。

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