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新宿のサンマルクカフェで親の仇に出会った話

さきほど喫茶店でひとり、コーヒーを飲んでいた時のこと。

隣の席の会話が耳に入ってきて、どうやら、健康グッズの営業らしい。

見れば、気の弱そうなお婆さんと、いかにも気が強そうなおばさんの二人組。テーブルせましとカタログ拡げたおばさんが、さかんにしゃべりたてている。

いわくこのグッズを使えば日本のお年寄りが元気になる、あまりに効きすぎるので危機感をおぼえた医学界からは無視されている、年利20%のリターンがある、あなたはラッキーな人だ、などなど。

私はこれを古典的な詐欺だと思い、セールスおばさんがトイレに立った隙に「それ、詐欺です」とテーブルナプキンに書いて、被害者になろうとしているおばあさんに渡して店を去りました。

ネットでよくあるように「論破」できればかっこよかったんだけど、これくらいが私の、限界だ。ほら、内気なんでほら。

新宿の、とあるサンマルクカフェでの出来事です。

そういえば5年前、私の母が死病に侵されたときに、どこから聞きつけたのか、ガンが治るという触れ込みで、たくさんの「キノコ商人」が湧いてきました。

しかし、本当にガンが治るのであれば、利にさとい製薬会社たちがそのキノコの成分を研究し、抽出し、臨床実験まで持っていき製品化するに違いないわけで。

あるいは医学系の研究者たちが我先に論文を書き、巨万の研究費を得て、ノーベル賞でも取っているに違いなく。

しかしそれらがないということは、要するに「効かない」ということの何よりの証明ではないか。ハッキリ言って、病気で心の弱った人に付け込む、サギです。

私のこうした単純なロジックを、キノコを持ってきた人たちに話すと「あの子は冷たい」と言われました。「お母さんに治ってほしくないんかい?」とも。

なにを言うか。母に誰よりも治ってほしいのは、私だ。

人をだます、いや情弱をだますテクニックというのはわりと万国共通していて、ポイントは負の感情の利用。

誰かの「儲けたい、死にたくない(欲望)」だとか「なんか気にくわない(差別感情)」だとか「俺はもっとできるはず(劣等感)」を煽り立て、きれいごとで塗りたて、既得権益者を仮想敵とし、自分たちを「正義側」に落とし込む。

そして「あなたはそれに気づいた、賢い、特別な人間だ」と選民意識を植え付け、自己や商品の信者にして、利益のために操作するのです。

正しい情報をシャットダウンして被害者の判断を誤らせたりするのも特徴です。既得権益側に叩けばホコリが出るとして、それを叩いた側が正義だと無邪気に信じ込める、その脳のつくりがふしぎだぜ。

私はそういう、意図して情弱をだますインフルエンサーや詐欺師、疑似科学が嫌いで嫌いで、「親の仇ですか?」とよく言われるんですが。


そうだよ、親の仇だよ、といったところなのであります。


以上、よろしくお願いします。

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