iOS_の画像__54_

フィンランド〜イギリス〜デンマーク視察のレポート


9月23日〜10月2日にかけて、フィンランド〜イギリス〜デンマークに渡り、13件の視察に行ってきました。


今回の視察は、僕が子どもの貧困分野やスクールソーシャルワーカーで著名な教授に誘われたのがきっかけで、社会的インパクト評価の測定・実践についてや海外のプログラミングによる社会的に厳しい状況の人を支援する団体を訪問し、CLACKの事業に中・長期的に活かすという目的で参加しました。

他のメンバーは、その教授の研究室の大学院生2名、公衆衛生や保育が専門の看護学科の教授、シンクタンクの研究員の方といった専門性の高い方々で、非常に興味深かったです。

このnoteでは、せっかく今回いい機会をもらえたということで、視察の内容の一部を共有し、実践のヒントにしてもらえたらと思います。
(一部、文体などが揃っていない部分もありますが、ご容赦ください)

【視察先の内訳】

[フィンランド]
・小学校
・中学校

・教職員組合(OAJ)
・ネウボラ
・保健福祉研究所(THL)

[イギリス]
・ロンドン大学ゴフ先生(児童虐待とエビデンス活用に関しての世界的権威)
・ロンドン大学ボアズ先生(実装科学の第一人者)
・アカデミースクールの小学校(貧困地域)
・Luton地域の自治体
・What Works Centre for Children's Social Care (WWCSC・子どものソーシャルケアに関するエビデンスを測定し、実践に繋げるための機関)
・EIF(Early Intervention Foundation・早期介入のエビデンスを測定し、実践に繋げるための機関)

・kings college London mathematics school
(数学に特化したgifted向けの貧困層向けの完全無料の実験的な高校)

[デンマーク]
・コペンハーゲン Hack Your Future
(難民や社会的弱者へのプログラミング学習機会の提供し、就労に繋げる非営利団体)

【概要】

全部の団体についての詳細な報告をしていくと膨大な文章量になってしまうので、一部の組織・機関についての概要・メモ書きを共有します。


【フィンランド小学校】

・1クラスは平均18人の少人数制
・フィンランドでは教員になる条件が全員院卒以上。

・公立学校でも先生の転勤はほとんどない。そのため、この小学校の校長も
この学校で先生を30年間してから校長になったとのこと。
・大きな計画は校長なども関わるが、個々の教室運営に関しては、担任の先生に一任されている。

カウンセラー、スクールソーシャルワーカー、保健師が常駐でそれぞれ1人ずついて、問題を抱える生徒がいないかを校長も入れた上で週一回会議を開いている。

iOS の画像 (80)

↑小学校の図書室の読書スペース(いかにも北欧って感じ)

児童へのプリントなど紙媒体の配布は一切なく、全てWilmaというクラウドサービスで先生と保護者のやり取りも行われている。(生徒も小学5年からはWilmaにアクセスできる)

・教科書もかなりの教科で電子化されている。
・WilmaのようなICTを使うのが苦手で、紙でのプリントの配布を希望する方にはどう対応しているのかと質問したところ、
「移民やICTに弱い方には十分な説明をして、使えるようにしてもらっている」とのこと。
・WilmaのようなICTサービスは国で一斉に導入しているのではなく、民間の企業が作り、それを自治体単位で購入している。


・プログラミング教育は取り入れられているが、プログラミングという授業があるのではなく、算数や理科の授業の中に論理的思考を身につける手段として取り入れられている。

【フィンランド中学校】

・小中一貫の中等部(フィンランドの小中学校が小中一貫校ばかりなわけではない)
・ICTを使った数学の学習などが盛んに行われている。
(ICT教材はヘルシンキ大学などで研究して作られている)
・生徒の自主性が重視されていて、computerの時間などは自分の学びやすい場所や姿勢でやれるようにしている。

iOS の画像 (74)

↑アイデアを出しやすいように、天井を高くし、自然が見えるように設計した教室

【フィンランドネウボラ】

[前提]
・ネウボラとは、フィンランド語で「助言の場」を意味します。 母親の妊娠期から子供の小学校入学まで、担当の保健師が子育てに関するあらゆる相談にワンストップで応じる仕組みです。 妊娠中に約10回、産後に15回程度の定期健診や発達相談を受けます。 父親やきょうだいが受けるものも含まれます。

・英語訳はMatanity clinics and child health careでこっちの方が名前からイメージしやすいかもです。

・見学先はフィンランドのEspoo市にあるネウボラの現場。
・ネウボラに関しては、日本でも増えていっている。(フィンランドのものと多少内容は異なりますが)



[本題]

・利用者のアンケートを重視し、意見の多いものに対し、順次対応。
・心理士、社福士、医療従事者、保健師が関わっている。
・健康サービスは任意(とはいえほぼ100%使われてる)で無料
・夫が同席するのも勧めている。
・予防接種も無料

・健康カウンセリングも検診の一環としてある。
・基本はエビデンスベースでの取り組みを行なっている。
・ネウボラには助産師がいるが保健師の資格も持っている。
・面談以外にもパートナー関係の悩みの相談や移民関係のイベントも開催している。
・エスポー市では年間3000人が43000回利用。
・2030年には30%が移民の利用者になりそう。
・ネウボラの受給証明書が他の社会保障を受ける上で必要不可欠(だからネウボラ受給率高い)
・全ての保健師が英語でも対応可能になっている。
・myネウボラ:最初の面談の前に事前情報を入力してもらうシステム。
まだ導入したばかりだが、myネウボラを利用した専門家による利用者のための相談サービスなどといった、いろんな応用法を検討中とのこと。

・92%の利用者がネウボラに満足しているらしい。
・ネウボラの指標としては母子の死亡率の低下などを測定している。

【イギリス アカデミースクールの小学校】

イギリスには2010年より、アカデミースクール という学校の形態があります。
一言で言うと、「公立小中学校の私立化」です。
予算は国から出すのに、学校の運営自体は教育委員会の縛りを受けず、校長や教員が自分たちで独自の運営を行うことができます。

アカデミースクール のすごいところは、新しく学校を作るのではなく、既存の公立の小中学校をアカデミースクール に変えていっていることです。

視察に行ったのは、40%の家庭が貧困家庭という地域にある小学校でした。実際、その学校には貧困をなんとかしたいと思う教員が集まって、リーダーシップのある校長の元、貧困対策のための独自の取り組みをいくつも行っていました。
(例)
・朝登校してきた生徒全員に校門の前でパンを配る
・放課後に保護者向けの職業訓練の機会の提供
・常勤のソーシャルワーカーが生徒一人一人の出席や遅刻状況、宿題の提出状況をチェックし、問題がある生徒に対して家庭訪問などを行う
・上記のような取り組みに対し、一つ一つエビデンスを取って効果があるかを測定している。

iOS の画像 (65)

↑朝、校門の前で登校する児童にパンを配るソーシャルワーカーさん

【WWCSC(What Works Centre for Children's Social Care )とEIF(Early Intervention Foundation)】

エビデンスに基づき、政策を実行していくために、9つの政策分野(Health and social care,Crime reduction,Early intervention, Local economic growth, Improved quality of life for older people,Wellbeing, Homelessness
,Children’s social care)の機関のうちのEarly intervention(早期介入)とChildren’s social careに関する機関2つの機関を訪問。

スクリーンショット 2019-10-20 10.34.14

↑事業のアウトカムの効用とエビデンスとしての信用性を測定し、Webサイトで公開している。

・Webサイトに様々な子ども支援の取り組みの成果などがガイドとして、評価され掲載されている。
・しかし、そのガイドを用いて実行している団体は今のところほとんどない。
・実行団体にエビデンスを用いてもらうのには苦労している。
・理論と実践はやはりずれる。そのズレは大規模な組織か小規模な組織かでも異なる。
・EIFはエビデンスを出すだけではなく、その活動をもっと訴求していかないといけない。

↑EEF(Education Endowment Foundation)のエビデンス活用のためのWebサイト 日本でもこういう風にエビデンスが公開されたらいいなと思います。


【kings college London mathematics school 】

iOS の画像 (59)


・2014年度に設立された、数学に特化し貧困層の中からでもgiftedを育てようという実験的な高校で、学費無料・遠足など全部無料。

1学年70人で4クラスという少人数制で、今年度の進学実績はオクスフォード10名、ケンブリッジ7名と4人に1人がオクスフォードかケンブリッジに進学。

・特徴的なのは、数学・物理・コンピュータ・経済学の4科目しか学ばないこと。
言い換えると、理系科目に特化はしているが、化学や生物を学ばないということ。なので、医者になりたいなら来ないようにと公言しています。


【デンマーク Hack Your Future】

iOS の画像 (69)


・難民や他の社会的弱者に対し、7ヶ月間無料でプログラミングを学ぶ機会を提供し、エンジニアとしてのキャリアについてもらおうというプログラム

・週1(日曜日)の対面でプログラミングを教える機会をエンジニアボランティア(有名企業が多い)が行っている。

・交通費も全額支給

・基本は大口の寄付と企業へのエンジニアの紹介費で運営

カリキュラムやノウハウをgit hub上に完全公開するなど、仕組みを広げる取り組みにも力を入れていてオランダ、デンマーク、ベルギー、カナダで広まっている。

以上が、Hack Your Futureの基本情報で、CLACKと運営の仕方が非常に似ていることもあり、特に準備した上で訪問しかなり得ることも多かったですが、長くなりそうなのでここでは割愛します。(興味があれば聞いてください)

【最後に】

・EBP(エビデンスを用いての実践)を進めている機関・組織を政策レベルから現場レベルまで一通り見たことで、エビデンスを実践に用いていく上での課題点や力を入れていくところが見え、CLACKでどう活用していくかのイメージが湧いてきました。

・イギリスのアカデミースクールの学校を見学し、日本の小中学校にもアカデミースクールの導入できれば、教員不足の問題や貧困対策においてかなり効果的なのではないかと思いました。5年先、10年先にアカデミースクールを政策導入していくために、ヒト・モノ・カネを地道に仕込んでいこうと思いました。

・Hack Your Futureを訪問したことで、CLACKとして目指していることが間違っていないということを再確認できました。あとは今描いている中・長期構想を泥臭く、一つひとつ実践していくだけだなと実感しました。それと短期的にもCLACKに活かせそうなヒントがいろいろ見つかりました。
(楽しみにしててください)


今回の視察についてはこのnoteに書いたこと・書けなかったこと以外にも多くの学びを得ることができました。


高校生をサポートする活動を「応援したい!」と思ってくれた方は、ぜひマンスリーサポーターになって頂けると本当に嬉しいです。

より多くの高校生に機会を提供していくための交通費やPC購入、講師謝金などに使わせていただきます。

▼月額1000円からのCLACKサポーターになる


最後まで読んでいただきありがとうございます! サポートしていただいた分は生徒の交通費などに使用させていただきます。