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来週の相場見通し(2/22~2/26)

 マーケットでは「リフレトレード」がキーワードとなっており、株式全般、リート、原油、資源などが幅広く買われている。また、米国債が弱含む一方でハイイールド債の金利は大きく低下するなど、市場のリスクオンムードは相当に強い。リフレトレードとは、すなわち世界的な景気回復が織り込まれていくということである。従って、株式市場ではイメージ的に景気敏感株と言われる日本株が買われやすくなり、業績の回復と、その確信度合いが高まるため、バリュー株が見直されたり、出遅れ銘柄が物色されることになる。
  日経平均株価は30年ぶりに3万円台を回復した。年初からは12%以上の上昇となり、ダウ(3%)やS&P500(4.6%)を大きく上回る。日経平均は、この上昇の中でもPERはピークの26倍から22倍台に低下し、むしろ健全化している。株価の上昇以上に、10-12月期の企業の業績の回復が良好なためだ。米国ではアップルやフェイスブックなどGAFAが全て最高益、日本でも任天堂、レーザーテック、シマノ、スシロー、マクドナルド・・幅広く最高益となった。昨年後半の企業業績は、予想以上に強かった。サプライズである。

日経平均株価は、先週の週初にいきなり3万円台にジャンアップしたが、2万9千円台を回復してから一度も2万9千円を割り込んでいない。相当に元気な相場だ。3万円到達後も、達成感があまり出ていない点も興味深い。なにしろ、日経平均株価がこの水準に達したのは30年前であり、言ってみればこの水準で買ってしまって塩漬けになっている買いポジションなどは想定しずらく、戻り売りの需要は一切ないため、株価は上がりやすいのだ。外国人投資家も1月は5700億円を売り越したが、2月の1週目だけで8500億円を買い戻しており、トレンドフォローの買いは継続している。

 米国株は小型株の好調が目立つ。ラッセル2000やS&P小型株600は年初から16%も上昇している。ラッセル2000は2020年のEPSが▲12㌦だが、21年度は61㌦に急回復が見込まれている。S&P600小型株のEPSは20年の18.9㌦から58.9㌦へ上昇見込みだ。これに対し、ダウは昨年のEPSが1,115㌦で21年は1,529㌦と37%程度の上昇と見劣りしており、米国株は業績予想に基づいた値動きが顕著と言えるだろう。但し、市場のこうしたバリュー株への楽観的な見通しには、私は警戒感も持っている。それは、今回の景気回復が過去のケースとは大きく異なる点が多いからだ。確かにワクチンの普及とコロナの抑制で経済活動は正常化していくだろう。それに伴い企業の業績も回復していくことは間違いない。しかし、このコロナ禍で企業のバランスシートは大きく悪化していることは忘れてならない。日本の民間金融機関は昨年1年間で33兆円も貸金を増やした。政府系の金融機関も合わせれば40兆円を越える貸金が新規に実行された。これは裏返せば、企業の借入が増加したことを意味する。たとえ無利子のローンであっても、それは返済しなければならない借金である。通常の借入は、設備投資や長期運転資金のように、企業の収益の増強の見通しがあり、それが返済原資となる。しかし、今回はそんなものはない。人々の経済活動の正常化、消費活発等により、売り上げが伸びるのを期待するしかない状況である。加えて、政府・中央銀行のサポートは低下していく。金融政策は緩和政策が延々と続いていくだろう。しかし、財政政策はそうはいかない。「財政の崖」という言葉があるが、これまでサポートしていた財政が途絶えるだけでも、経済にはマイナスなのである。今回のコロナでは未曽有の財政政策が大きな効果を発揮した。しかし、こちらは金融政策と異なり、継続することはできない。未曽有の財政政策が途絶えると、その影響は大きくなる可能性もある。従ってバリュー株の見直しは、一時的なものに留まる可能性が高いと考えている。(まだ先の話ではあるが)

 さて、こうしたリスクオンムードの中、米金利は5年0.5%、10年1.2%、30年2.0%の節目を超えてきた。先週末はウイリアムズNY連銀総裁から、「足元の金利上昇は景気回復によるもので懸念していない」との発言があり、米金利は一時1.36%まで上昇している。市場では、金利の上昇に対して神経質になり始めている中、FRBの中心メンバーからこうした発言が出たことで、短期的に金利は更に不安定になるかもしれない。しかし、FRBは金利の緩やかな上昇に懸念を持っていなくても、政府、財務省は立場が異なるだろう。イエレン財務長官は、低金利の今だからこそ、大規模な財政政策を打つべきと主張している。また米国予算局の今年の米長期金利の平均見通しは1.1%である。この水準から大きく乖離することは、政府サイドの見通しを狂わせることになる。今のFRBは政府と一体である。イエレン財務長官とパウエルFRB議長のコンビでは金利が大きく上昇するイメージは持てない。確かに金利上昇は、企業業績の回復、追加景気対策、コロナ収束によるものであり、金利が上昇する中でも米国株価が堅調さを維持している点は注目だが、ここまでは先行して期待インフレ率が上昇してきたことから、実質金利は上がらなかった。しかし、足元では期待インフレ率の伸びは鈍化してきている。米金利について言えば、リフレトレードの中で、イールドカーブはスティープ化が進んできた。ベア・スティープで金利が全体的に上昇するなかでも、中期の金利上昇よりも長期の金利がより上がる展開である。米30年金利は既にコロナ前の水準に戻っている。ちなみに、2019年12月の平均は2.3%程度であり、本格的なリフレトレードが継続するなら、更に20bp程度の上昇の可能性も否定できない。しかし、期待インフレ率上昇の鈍化とともに、今後はむしろ長期金利の上昇が止まり、中期の金利が上昇してベアフラットする展開が見込まれる。5年金利の0.75%という水準は市場でも注目度が高いため、この水準には注意したい。

 バイデン政権の「アメリカン・レスキュー・プラン」は、トランプ前大統領への弾劾裁判がスピード決着となったことで、2月後半から3月上旬には成立する可能性が高まっている。市場の関心は、「いつ」から「規模」に変化している。今週の経済指標では、1月の米小売売上高が、市場予想を大きく上回る5.3%となった。オンライン、家電、家具は二桁の伸びであり、米国社会では現金給付等のバラマキ政策は、確実に消費に結びつくことが示された。むしろ1.9兆ドルもの経済対策の必要性への疑問は高まっているが、イエレン財務長官はこうした景気の回復の中でも、大きな景気対策が必要であると繰り返し主張している。そして、その根拠を「未だに900万人もの雇用が失われている状況」と雇用に求めている点は重要だ。恐らく、コロナの影響で社会全体が変化したこともあり、失われた雇用の完全回復は相当に困難だと思われる。それにも関わらっず、雇用に固執して経済刺激策を取ることは、全体の米国景気を必要以上に吹かすことになり兼ねないからだ。市場がこの先のインフレに敏感になっているのもそのためであろう。 

 さて、次の「インフラ投資案」については当初は2月中に公表が見込まれていたが、4月から5月に後ずれし、来年度の予算に組み込まれる可能性が高くなっている。インフラ投資案については財源が注目される。税金が多く組まれた場合は株式市場が失望し、国債増発の場合は債券市場が動揺する可能性がある。公約では4年で2兆ドルを、この分野に投じるとしている。

 欧州でもコロナ感染減少を受けて、景況感が急回復している。またイタリアではドラギ首相が誕生した。但し、イタリアの政局は複雑であり、ドラギ首相でも安定的な政権を形成できるかは不透明だが、現状では市場は好感している。但しドラギ氏の魅力は、EUへの大きな影響力であるが、イタリアの五つ星も同盟も、EUとは距離を置きたい政党であるため、どの辺が今後のポイントになるだろう。

 さて、株価に戻ろう。日経平均株価は強いトレンドが出ており、決算発表一巡後も堅調さを維持している。日本でもワクチン投与が開始された。非常事態宣言の解除等もそう遠くないだろう。オリンピックも市場は中止の可能性を織り込んできたことから、開催できるならばそれも好感するかもしれない。短期的な過熱感と米金利上昇に伴う米国株の調整はリスク要因だが、日経平均株価の下値は堅そうだ。来週は29,400円から30,600円のレンジを想定する。

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