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戦争の虚無を描く 映画『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』

世界は、私たちは、美談として受け入れていた復讐も、国のために命をかけた戦士たちの戦いも、許容できなくなってしまった。

その状況を踏まえて華麗で迫力のある殺陣を、あえて虚無に見せる演出。

気高い本当のヒーローは復讐に走らない。

個人的な怨恨に民を巻き込むのは良き指導者ではない。

前作の主役ブラックパンサーでワカンダ王のチャドウィック・ボーズマンが2020年にがんで亡くなった続編として、代役を立てずに王の死から始まるのは正直心が痛くて終始その痛みから抜けられないまま(チャドウィック・ボーズマンのブラックパンサーは本当に本当にかっこよくて大好きだったのです。国の秘密を守りながら世界と対峙して平和に導くことを本気で考えていたリーダーでした)、残された女王と王女と戦士たちの誰に憑依するでもなく、淡々と世界を見守る冷静な立場で考えさせられる珍しい立ち位置の映画でした。

思えばアベンジャーズシリーズは、最初は主人公のヒーローや時には悪役に入り込んで、威勢よく戦うシーンに肩入れして応援していたものですが、

途中から善と悪の区別が簡単にできなくなり、サノスに至っては悪役なのに主役級に同情かったり、そういう善と悪で世の中は語れないんだっていうヒーローとヒールの紙一重感を出してくる21世紀感があったものですが、

いよいよ復讐や戦そのものにも疑問をぶつけてくるマーベルとライアン・クーグラー監督の現代的な問題提起にしびれました。

リーダーの振る舞いについて考えさせられる作品でした。続編にも絶対期待。

ライアン・クーグラー監督は次作はロッキー新シリーズの『クリード3』なのでこちらも絶対期待。

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