CIVILSESSION 29: "（5）杉浦草介／いわゆるクリエイターじゃない人のクリエイション"

2020年12月9日 18:58

今回のCIVILSESSION 29 "REVIEW"では、過去28回行われた中から各CIVILTOKYOメンバーがお気に入りの作品の一部をご紹介します。

第29回の他の記事はこちら
（１）目的と概要
 （２）根子敬生
 （３）伊藤佑一郎
 （４）山森文生

※CIVILSESSION 29は、限られた観客の方々にご意見など頂きつつ、渋谷のCIVILTOKYOオフィスにてひっそりと開催されました。以下記事はその発表内容のまとめです。

杉浦草介／いわゆるクリエイターじゃない人のクリエイション

今はpinterestやgoogle画像検索でそれっぽいものがいとも簡単に見つかる時代です。「おしゃれっぽい」「かっこいい」「面白い」だけならば、似たような画を無限と言っていいほど簡単に見つけることができます。だからこそ、作品を作るときの「なぜ（＝コンセプト）」は、それが他のものとなぜ、どう違うかを伝えられる要素だと思っています。

そもそも自分は「クリエイター」という括りは非常に曖昧な上に馬鹿馬鹿しくて嫌いですが、それはさておき、例えば「クリエイター」と呼ばれる人たちは、後付けであれなんであれ、そのコンセプトメイキングからビジュアル化までの一連作業に慣れてる場合が多いです。しかしながらCIVILSESSIONには「一般的にクリエイターと呼ばれない人たち」も多数出場します。そういう人たちを出場しないか誘うと戻ってくる返答はこんなです↓

「いやムリムリ！作品なんか作れる技術ないし」

「こんなクオリティ高いもの作れないよ」

「そもそも何作ったらいいかわからないから怖い」

とか。ある意味当たり前の反応だと思います。きっと格闘技経験ないのに「RIZINに出場しませんか？」と言われているような気分なんだろうし。ただわかって欲しいのは、CIVILSESSIONではその技術やクオリティだけの勝負にならないように、コンセプトや経緯を話すためのプレゼンテーション時間を設けたり、技術力で極端な差が出ないように制作期間を1週間とすることにこだわっています。普段の仕事をしながらの一週間で、作品制作に使える時間なんてたかが知れています。だから上のようなムリムリ族の方達が出場してもグランプリを取れる可能性は十分にあります（実際、「いわゆるクリエイター業」ではない人がグランプリとなる会は複数回あります）。

それでも結果的に出場してくれた希少で勇気ある方々は、やはり場数をこなしている人たちに比べて、作品制作をする上での悩みの種類も度合いも違う。何をどう作品にしたらいいかわからないけど、何かやらなければいけない、どうしよう、という恐怖は尋常ではないと思います。そういう背水の陣で挑んでいる人たちの作品やプレゼンを見ていると、リアルさや生々しさが感じられます。デザイナーやアーティストが「どうすかこれ、思いついちゃったんですけど、面白くないっすかね？」という、いわば自分が思いついたアイディアの話をするのとは違って、「今ここにいる自分はこういう人間です。一週間かけて絞り出して来ました。自分果汁100%です。もう出ません。」という、いわば告白とか悲鳴みたいなものを見ている気になるものが多いです。だからおもしろいんですよねー。

ここで、本来は自分が選んだ方達の作品を紹介を書くべきなんですけど、上で書いたような内容ってプレゼン見てもらわないと伝わらない部分だし、なんか言いたいことをこれ以上わかりやすく文字起こしできる気がしないので、勝手ながら省きます。ただその日の発表を見ていた観客の一人として思うのは、第11回で千葉友貴さんがプレゼン中に言っていた「自分がヨガ講師である以上、SECRETと聞いてこれ以外にやることが思いつかなかった」や、第17回池田早希さんの「だって普通のOL喋る以外、何も作れないもん」は決して諦めや発想力の欠如ではなく、「自分はこれしかできない。だからその『できること』でどう表現するか」に真正面から向き合っていたから出た言葉なんじゃないかと思っています。

 ここまでに書いたことを自分が感じた作品の例として、下にリンクをいくつか貼りました。過去の作品の中ではこれ以外の作品でも「クリエイターじゃない人のクリエイション」に当てはまる作品は多数ありましたし、こういった見方で見るとそれぞれの会もまた違って見えるのかなと思います。

［CIVILSESSION 03: FIGHTER］中村功徳／戦士どっさりゼリー