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現役時代×退職後 第3回 ■好きと趣味の間

貴重なセミリタイア期間

 人生百年時代と言われているが、きっぱり生涯現役派となるか、あるいは早期リタイアして隠居生活を楽しむ派になるか、特に勤めビトの場合は、その間で思い悩んでいる方々は少なくないのではないだろうか?
 自身としては適当な時期にリタイアして、その後、一定の充実した生活を送っている(つもりである)が、改めて振り返ると、セミ・リタイアと完全リタイアの間の5年間が、その後の暮しにおいて貴重な準備期間だったのではないかと思える昨今である。齢は63歳から68歳まで。その間に徐々に地域デビューを果たすことができ、完全リタイア後は土木学会等の関係で現役時代の余韻は残るものの、スムースに地域活動をメインにすることができたように思う。
 

地域の水に係わって

 地域での活動の対象は、専ら水のこと、地域の水環境と、その背景にある水のめぐり・水循環に関心を抱いて、地域に係わってきた。そのベースには、我が住いのある東久留米市は、豊富な地下水から湧出する水を集めた清流、黒目川や落合川が流れ、それに育まれた緑に満ちていることがある。上の写真は落合川の夏休みの一コマである。この水辺空間には小金井市辺りまで含めた近隣市の方々も家族ぐるみで来られている。
 因みに市のキャッチコピーは「東京別世界」、市政50周年を記念したこのタイトルのプロモーション・ビデオが下である。都心から20数分の地で、このような別世界があることを「売り」にしている。


 自身が参加している団体は多少公的なもの1つを含めて3つあるが、その一つである「東久留米の井戸水位を調べる会」のメンバーとして、去る6月30日に、ローカルFMラジオ局「くるめラ」の、地元情報サイト・くるくるチャンネルの市民団体紹介枠で出演させていただいた。八十路(数え)にして初めてのメディア出演であったが、巧みなリードのもと、気分良く、会のあれこれについて1時間程お話しできた。

趣味でやってる~好きでやってる

 その中で、時間の関係やら頭の整理状態も反映してお話しできなかったことが有った。「好きと趣味」のことである。終ってから考えてみた結果を以下に。
 上記の市民団体の関係で、農家さん宅の井戸の水位を調べていた時に、最も印象に残っている出来事は、そこのご婦人から「趣味でやってるんですか?」という質問を貰ったことだった。何時も住まわれている訳ではないその方は、初めて我々の作業を見て、相当“奇異”に感じられたのかと思う。多分、「この人達は何故、他所の家の井戸の水位を測っているのだろうか?あまり楽しくもなさそうだし・・・」という事かと。
 その時、「趣味」と言われると何か少し違うように感じた。咄嗟に的確な返答も思いつかず、モゴモゴしながら「まあ、好きでやってるんでしょうね!」と答えたかと思う。
 この「趣味でやってる」と「好きでやってる」、その相違をどう考えればいいか、以来悩んできていたが、十分に整理できていなかった。今回の機会に整理した結果が表である。


 簡単に言えば、好きな対象(モノやコト)に対する働きかけ=行為によって趣味、ボランティアおよびビジネスの3つに分類されるのではないか、このボランティアでやっている思いの背景に、即物的な見返りの無い中で「好きでやってる」ことがあるのではないかということである。
 分かりやすくするために、「好き」な対象として私たちが活動している分野の「水環境」の他に「切手」や「音楽」も入れてみた。好きなモノやコトに対して個人的な範疇で、あるいは仲間内でクローズして行動しているのは「趣味」で、社会的に役立つことを意識して、但し、ビジネスとしてではなく、無償で活動することは「ボランティア」になり、この場合は「好き好んで」、あるいは、略して「好きで」やっていることになるのではないか。分野で言えば、切手の世界では、ほぼ個人や仲間の中でクローズするのに対して、音楽が好きな場合には、社会的に拡がりを持つ場合も少なくないように考える。
 この分類でいけば、私たちの地域活動は「水環境の維持や向上」に係わって、「社会に役立つ」活動であり、「対社会/オープン」な「ボランティア」活動ということになろうか。あの時、お答えした「好きでやってる」の「好き」は、上記の「好き好んで」の「好き」だったかと納得した。
 この素晴らしい水環境が「好き」になる方は地元に限らず一杯居られることだろう。(そういえば、この前も、朝霞でアニメ絡みのユニークな活動をされているご婦人を落合川に案内して、市のフアンを一人増やした。) 老若男女を問わず、多くの地域の方がその維持や向上に向けて活動することを「好き」になって頂いて、このかけがえのない水環境・自然環境を何時までも、先ずは次世代に繋げて行くことが願いである。

おわりに

 「好きと趣味」でWEB検索してみると、約1.4億件がヒットした。上記の整理では趣味をやや一段下に見たような感じになっている。「無趣味のすすめ」というエッセイのある村上龍氏の影響かもしれない。ただ、趣味は趣味で大変貴重なものでもあることは認識しているつもりである。この辺りも含めてもう一度整理できたらと考えている。
 これから、リタイアを迎える方が好きでやるのか、趣味でやるのか、何れにしても心豊かな時間を過ごされること、また適切な準備期間が得られることを念じている。
 なお、自身が所属しているとしている名目だけの組織「オフィス パスタイム」の pastime は、一般に趣味とか道楽と訳される hobby と対比される言葉でもあった。

執筆:YSN瑞空


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