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映像制作から地方都市のあり方を考える

前回の記事では、CityOndとしてのマチづくりへの想いについて触れました。「大きな企業や行政に頼るばかりではなく、個人としてマチのためになる何かをしたい」そんな思いを持つ人が活躍しやすいマチになるために、新しい選択肢を作ることがCityOndの活動目的の1つ。

これまでの仕事の一つして、国交省も力を入れ始めた”ウォーカブルな都市”、歩行者空間の分析・デザインを多く行ってきました。良い歩行者空間の条件の一つが、”各空間のつながり”。

例えば、利用者が少なく不活性の広場・公園をどうにかしたいと言った時にまず思い浮かぶ対策は、その場所をより素敵な場所になるよう再整備すること。しかし、これだけでは他の広場・公園とのパイの取り合いに留まり、限りある予算の中、エリア全体をケアすることにはなりません。

そこで、欧米を中心にかねてから重要視されてきたのが、エリア一帯を対象とした、面的な歩行者空間整備の戦略検討と実践です。エリア一帯の人の流れ・アクティビティを観察・分析して、エリア全体としての理想的な人の流れや賑わいを実現していく考え方。

こういった検討をする時の重要な視点が”各空間のつながり”です。家に例えると話はシンプルです。「たくさんの部屋とつながっているリビングは家族みんなが集まりやすい。2階の奥にある寝室は自分だけのプライベートな空間」

一方で、まち全体に対して、この”つながり”の関係性を捉えるのは容易ではありませんが、ロンドン大学で生み出されたスペースシンタックスという手法により実務レベルでの検討が可能となりました。ウォーカビリティを議論する手段として、欠かせないツールの一つとなっています。

イギリス全体のスペースシンタックス分析データは、オープンマップとして公開されており、”つながり”に起因する空間特性が美しく表現されている。

私も、スペースシンタックスを活用した分析・検討を通して、空間のつながりの力・重要性について多くを学びました。尾道でも、ハード面に関する取り組みについては、こういった手法も活用していく予定。

新しい取り組みとしては、こういったフィジカルな”つながり”の関係性といった視点に加えて、非フィジカルでの”つながり”の構築にも取り組んでいます。私自身、2020年3月に尾道に移住してきて、それから3か月近くは全てのイベントが自粛となり、マチを通した人とのつながりを持てなくて非常に困りました。

東京のイベントは、早々にオンラインイベントに切り替わるなど、逆に多くの情報に触れることができましたが、地方のリアルタイムの情報発信はやはりまだまだ少ない。

新しい生活が始まりつつある今、地方暮らしの価値も見直されつつある。地方を拠点としながらも、東京に劣らないオンラインでのつながりを持つことができれば、より多くの人にとって地方暮らしが魅力的な選択肢となる。

オンラインでリアル以上のつながりを生み出すためには、リアルな質感・温度感を伝えるなど、情報の解像度を高めることも重要。オンラインであっても、偶発的な気づき・出会いを生み出すことを可能とする、そんな、リアルなマチを少しでも代替できるような、”まちの映像制作舎”としての事業を始めました。

この事業を通して、まちと映像の関係性深めていきます。イベントの自粛などでフィジカルなまちづくりが停滞して困っている方がいましたら、微力ながらご協力します。



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