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今更なワールドカップレポート


こんにちは、こんばんは。としおです。

今回は大学の授業を通じて作成した
2022カタールワールドカップについてのレポートを
評価もついたので公開したいと思います。

(ちょろっと修正・加筆して)

課題内容としてはデータや客観的事実から
現代サッカーの戦術戦略と未来像を考察せよ。
あと日本についてもね。
みたいなものでした。おぼろげですが。


提出期限が1月29日でレポート開始日が12月18日。
データの量が膨大なくせに期限が1か月と10日しかなかったのでイライラしながら作った記憶しかありません。


グループステージを突破できる国と突破できなかった国の間にはどのような差があるのかということに焦点を当てています。


雑で足りないところも多々あると思いますが
そこは承知でご覧いただきたいなと!!!!



W杯のトレンドからみる
世界の現在地


 


 
・ブロック守備の猛威


 
今大会特に目立ったのはボール保持に対する守備であった。アフリカ勢初のベスト4を成し遂げたモロッコを筆頭に規律あるブロックによって中央の密度を高め、チャンスを作らせないというのが主だった目的である。世界的に起こっているブロックを崩すための圧倒的な個やストライカー不足によってこの戦法は猛威を振るっていた。このことからブロックの密度が高ければ高いほどグループステージを突破できたのではないかという仮説のもとFIFAが毎試合公開しているPost Match Summary Reportの中にあるDefensive Line Height & Team Lengthという項目からMiddle Block とLow Block、それぞれの縦幅と横幅のグループステージ平均を各国算出しその縦幅と横幅を掛け合わせて個人的に導き出したBlock AreaをMidlle、Lowともに作成した。


Block Area参考画像

(例.上記した算出方法に数値を当てはめてみると
縦幅:23.7×横幅:41.3=978.81という風に。)


これによりピッチ内に作ったブロックの大きさと各国間にあるブロック密度の差が判明し、この密度が高ければ高いほど守らなければいけないゴールがある中央を上手く消すことが出来ていると思ったからだ。今回はその中でもMiddle Blockを扱う。ボール非保持の時間帯の内このミドルゾーンでブロックを組み、守備をする時間が多いからだ。このMiddle Block Area によるランキングは以下の画像の通りである。



1位サウジアラビア
2位韓国
3位スペイン
4位オーストラリア
5位モロッコ&日本

と続き最下位はセルビアであった。


紫色でハイライトされている国名はベスト16に進出した国を表しており上位16位内に11か国、下位16か国に5か国とミドルブロックの密度が高ければ高いほど突破できる可能性があったことを示唆している

このAreaの大きさはフォーメーションを考慮していない。なぜならその必要性は低いと思ったからだ。実際のところ4バックよりも5バックの方がブロックの横幅が広がりやすいためこのBlock Area は大きくなりやすい。今大会も32か国の内5バックを主としてGLを戦った国はセルビア、オランダ、ウェールズ、カナダ、ベルギー、エクアドル、デンマーク、カタール、日本といった国々で日本とカタールを除いて下位16か国に位置している。
が、これらの国のうち突破できたのはオランダと日本のみである。

つまるところそれだけピッチ上を広くカバーしようとしてしまいコンパクトさに欠けているということを示唆しているのではないだろうか。後の項でも触れるが同じ5バックでも日本はコンパクトにブロックを組み強豪の攻めを耐えきることが出来ていた。

5バックだろうが4バックだろうがコンパクトであること。これが今大会の守備において突破できたか否かを大きく左右したものだった。



さらに興味深いのはこの数値を各グループ内で比較した時である。


Franceの正式な数値は988

こちらの画像はグループ内でMiddle Block Areaを順位付けしたもの。



 

そしてこちらの画像で紫色にハイライトされているのはGLを突破した国である。見ての通り8グループ中6グループにおいてグループ内ミドルブロック密度が高い2か国が突破したというのが判明した。これは密度の高さが突破に大きく関与していることの更なる裏付けだと言えるだろう。また、1位サウジアラビア・2位韓国・4位オーストラリア・5位日本とアジア予選を勝ち抜いた4か国すべてが上位に入るという健闘を見せており、これは今大会アジア勢が結果を残したことと繋がっていると考える。



これらブロックの密度が高いほど突破できた原因として冬開催による準備期間の少なさ、そして圧倒的な個やストライカーが不足していることにあると考える。初の冬開催となった今大会はリーグ戦を中断して行われており、メンバー全員が合流したのが大会初日の1週間前という国が多く、過去今までのW杯に向けた調整法が通用しにくかった。前回大会まではほとんどの国のリーグ戦がW杯開幕1か月前程度に終わりそこから各国がキャンプ地にて合宿を行い、親善・練習試合を通して完成度をより高めていく。という手法を取っていた。しかし、今回は準備期間はわずか1週間ほどで、試合も1試合こなすのが限界という風になった。そのためここまであまり呼んでこなかった新しい選手の融合を図ることが難しいこと、合宿等で見直すことが出来ていた課題点といった本大会に向けた準備を整えることが今まで以上に難しかったように思う。特に攻撃面においては守備面以上に細かいところまで掘り下げ、決めごとが増えるため習熟度を高めるのに時間がかかる。それに対し守備ではコンパクトさと連動、相手の陣形との噛み合わせ等、決めごとが少ない。そのため守備の方がコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが良い。だからこそこれほどまでに守備が脚光を浴びる大会になったのだと思う。


そしてもう一点の圧倒的な個やストライカー不足についてだが昨今、08-09バルサによってボールを保持するサッカーが広く浸透し、11人で攻守両方とも行うことが主流となった。これによりバッジョやロナウジーニョ、リケルメといった類まれなるセンスとそのセンスを意のままに表現できる技術をもったいわゆる10番タイプ。PA以外であまりボールに関わることは少ないがそのPA内でもっとも力を発揮し、ゴールを奪うことに特化した海外だとポーチャー型と表現されるCFタイプは時代と共に消え去っていった。一人でチャンスをクリエイトする、一人でチャンスを決めきる。いわば「攻撃で違いを見せてくれれば守備免除という存在」はどのような局面でも11人で行うことが求められる現代サッカーでは邪魔でしかないと考えられたためだ。このあおりを受け育成において各国ではチームの中に組み込むことが出来る献身性やチームワークに長けていることがより重視され始め、また攻守両局面で力を発揮できる選手が強く求められ、個に優るが1つの局面(攻撃)のみでしか力を発揮できない選手は評価がされにくくなった。


スペシャリストよりゼネラリストが評価される時代となったのだ。


これにより10番タイプやポーチャー型は淘汰されていき現代サッカーでは極少数派となった。しかし組織力を伸ばすことを目指し、ゼネラリストが評価される昨今のサッカーだったが、今大会勝ち上がっていったのはメッシやエムバペ、ネイマールというスペシャリスト、モドリッチやアムラバト等、スーパーゼネラリストがいる国だった。反対に組織力で勝負しようとしたスペインやドイツ、ベルギー等々は志半ばで敗退することとなった。

(スペインはボール保持に特化したスペシャリスト集団
とも言えるかもしれないが)


組織力で戦うべきだ、組織力ももちろん大切だけれど最終的には個だというどちらが良くて悪いという二極した考え方で測れることではないだろう。
クロアチアやモロッコのように組織力で勝ち上がった国もいるからだ。

なのでハイレベルな組織にケーキに乗せるイチゴのような
スーパーな個を加えられるとより良いかもしれない。
 
 

日本の現在地



 
日本は今大会、優勝候補と見られていたドイツ、スペインと試合巧者でベスト8に進出した経験もあるコスタリカという過去類を見ないほどの死の組に放り込まれた。事前予想ではGL敗退、勝ち点3さえ獲得できないだろうと厳しいものだったが予想を反しまさかのドイツ、スペインに2勝しGLを首位で通過することとなった。これは日本のW杯歴史上初の快挙であり国中が湧いた。そんな今回の日本代表は自国の得意なことだと思っていたポゼッションが通用せず、ブロック守備による我慢が通用した守備の大切さを知る大会であった。W杯史上最も低い支配率で勝ったスペイン戦、前半からチャンスを作られまくり1失点で終えるのが不思議だったドイツ戦両方とも守備に奔走する時間が長かったが、Middle Block Areaにおいて出場国内で5番目に密度の高い、狭いブロックを築けたことが作用し耐えきることが出来た。またサッカーにはゴール期待値というものがある。放ったシュートに対する評価方法みたいなものでシュートを打った場所、前にいるディフェンダーの数等々から導き出され1が最大値である。1に近ければ近いほどゴールに値するシュートで0に近いほどゴールを決めにくいシュートである。というものである。裏を返せば守備側からするとどれだけ失点する可能性があったのかを表しているものとも言える。今大会のGLにおける日本は失点期待値4.24ながら実際に喫した失点は3と予想された失点数より1点少なくすることが出来ており最後の最後で踏ん張れているということが出来る。


また、普段大人しいのに怒ったら鋏やら定規やら椅子やら机やらを振り回し暴れる小学生のような変貌により一気に逆転することが出来るということも示した。昨今元代表監督である岡田武史氏がよく仰っているが個で見れば素晴らしいものを持った選手が着々と増えている。ヌルヌルドリブルで世界を驚かせている三笘、アーセナルで揉まれている冨安、圧倒的なスピードと運動量で大外を制す伊東純也、パワフルなミドルと献身性を持つ堂安、ボールに関わるセンス抜群の鎌田など各国リーグで様々な個を持つ選手が活躍している。そんな彼らを展開や状況を見て適材適所に登用することで選手を変えて戦況を変えられるようになった。この選手によって戦法を大きく変えられるカメレオン的な部分は今大会を通じてわかった日本の長所といえるかもしれない。
 
 


世界の行く末



 
私はW杯を通して世界のサッカーが変わっていくとは思えない。なぜならば、代表シーンから未来を予測するのが難しくなったからだ。今でもW杯が持つ大会の規模や知名度、注目度等はサッカーの大会においてNO.1であるが今はもう欧州のクラブシーンが持つ影響力が大きすぎる。2018年優勝したフランスは特定の戦術に沿って選手を選ぶのではなく今いる選手たちにとっての最適な組み合わせを作ることを重視したチーム作りでありサッカーだったが、世界のサッカーシーンがこれに追随したかというとそうではなく、未だにペップバルサがもたらした特定の戦術によるコンセプトに選手を当てはめることが主流のままである。しかしながらそんなクラブシーンからサッカーの未来変化を予想するのもまた難しい。守備と攻撃の発展サイクルが過去類を見ないほどに速くなっているからだ。あらかたここ10年でボールを保持することが一定に浸透したことでそれに対抗する守備も備わりつつある。ビルドアップに対するマンツマーン守備や5バックでレーンを埋め、引きこもること等々。攻撃時3-2-5可変というトレンドが18-19シーズンぐらいからペップを端に発されたが20-21のチャンピオンズリーグ決勝で対戦したトゥヘルが守備時5バックという一つの答えを示した。そして22-23の今シーズン、5バックで固める相手には3-1-6で攻めるといいのではということを試し始めている。このように1,2年で流行がクルクル変わっているのだ。

とはいえ予測しなければならないので無理やり考えるならば、これからは如何にして自陣に引きこもり守備を固める相手を崩しゴールを奪うのか。というところにまだサッカーは進歩の余地を残しているように感じる。個に頼るのか誰でも点が取れるようにするのか。という部分において変化が起きるのではないだろうか。このビルドアップに対する守備はあきらめてひきこもる、今大会のW杯でのモロッコや日本のような相手に対する崩す術をサッカー界は長い間見つかっておらず、ボール保持型のチームは苦戦を強いられている。いつも戦術最先端であるペップシティにおいてはハーランドというゴールを奪う怪物を獲得し崩すのに困ったら預けて祈るという方法を取っているが、世界もこれに追随するのか、属人化を避けるのか。注目していきたい。



 

日本が目指すべき未来に向けすべきこと



 
日本がベスト8以上に進むために取り組むべきことは
・ブロック守備の強化
・GKを交えた安定したボール保持による前進と崩し

といった所だろうか。

今大会一番世界に通用したことは何か。それはブロック守備を中心とした我慢である。スペインやドイツと言った世界屈指のボールを保持し崩しにかかる相手に対し最少失点に抑え、逆転するための下地を作ることが出来、それが決勝トーナメント進出に繋がった。この部分をより伸ばすことも大切だと考える。これから先、攻撃のトレンドも変わっていくであろうし、それに対する守備も同時に発展していくため常にアップデートしていくべきである。しかしながら4年ごと、W杯ごとのリセット癖がこの国というか代表の中心選手たちというか本国協会にはあるような気がするため継承されるかは未知数ではある。


また、今大会というより2018年以降の課題であるボール保持による前進と崩しという部分をより伸ばさなければいけないだろう。コスタリカ戦で露呈したように、日本は自陣に引き込みブロックを作る相手に対する手立てを持っておらず、ベスト8に進出した国々に比べGKを交えたボール保持と前進に関して圧倒的に後れを取っている。自分たちでボールを保持する時間が作れなければ90分間ただ攻められるだけで体力も気力も大いに削がれる戦いになり到底ベスト8に進出する国々に対抗できない。また2026大会からは48か国制となる。格上より格下又は同格の国が増えることが予想され、日本よりも弱くブロックを組み、ひきこもる国と当たる確率が高くなるはずだ。そういった国々から勝利をあげるためにもボールを保持することと崩しを確立していかなければならない。予選の方式が変わらなければの話だがW杯予選ではこのようなブロックを組みひきこもる相手が多い。そのため崩しにおける様々なことを試す機会はある。次回こそ4年間で積み上げたものをぶつけるW杯にしたいものだ。



ご覧いただきありがとうございました。

当たり前なことですが守備のコンパクトさが大事だ
ということが再認識できました。

最後に原文を置いておきます。



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