ジョジョミュ・ファントムブラッド感想

帝国劇場のジョジョの奇妙な冒険ミュージカル・ファントムブラッド(2/20夜)感想です。現地で一度観ただけなので記憶違いあるかも。気になったところだけで取り留めないです。
原作(一部以降も)含めてネタバレ注意


・舞台は老スピードワゴンの語りから入る。演劇っぽい入りだなと思った。『エリザベート』の狂言回しからのオープニングを思い出した。

ジョジョミュは、原作の要素を大事にしつつも、原作の完全再現に拘っている訳ではなく、演劇として映える要素を尖らせたという感じで、いい舞台化だなと思った。ひとつの舞台として観ても満足度が高かった。

ジョジョ一部の時代背景が帝劇作品っぽい事もあって、観ているうちに段々と漫画原作の舞台を見ている意識が薄れてくる。(原作が違和感なく演劇に落とし込まれているため)

が、いやにエネルギッシュだったり特徴的な台詞回しをするモブが断続的に現われるので、『そうだ、これジョジョ原作だった』と我に返る感じだった。

・帝劇らしく歌は皆ハイレベルだったが、曲単体ですごく気に入ったというものは無かったかも。曲としてはツェペリさんのジャズの曲が一番好き。

・ジョジョはアニメでは台詞の熱量が凄かった(原作の勢いの再現をしていた)が、ミュージカルでは抑えるところは抑えるように変更していた。
ディオがエリナの唇を奪うシーンと、スピードワゴンが『こいつは生まれついての悪』ってディオに言うシーンの抑えた演技が特に印象的だった。ミュージカルの方はキャラの内面に焦点を当てており、原作アニメに比べると静かめな作風なので、このアレンジは作風に合ってていいなと思った。


・子供時代のディオ、なんか上品だった。
ジョースター邸に行ってから上品に振る舞うならわかる。けど……生家にいる頃のディオはもっとゴロツキ然としている方が自然じゃない?と思ってここはちょっと違和感があった。ダリオが500%純粋なゴロツキって感じなので、本当に親子なん?という違和感を覚えてしまう……。

・子供時代のジョナサン、ザ・ボンボンのおぼっちゃんという感じでちょっとびっくりした。パンチは腰が入っていないし、身体はなんかぽよぽよしてるし、これではディオに勝てる訳がない……!!!と、この時点では思った。エリナはこの時代のジョナサンの事を好きになったのだと思うと凄い慧眼だと思う。

・ディオとジョナサンの出会い、出会って5秒でジョナサンイビリを開始するディオ。ひどい。でもディオの所作はすごく綺麗だった。ジョジョ立ちというか、モデル立ちのように立ち姿が堂々としていた。ここは原作のポーズを舞台風味にアレンジしたのかな?ジョナサンの方はこの時点では姿勢が悪い。ディオに戸惑う気持ちがよく表れててよかった。

・ミュージカルのスピードワゴンはラップをする。ラップで時代背景等をいっぱい解説してくれる。狂言回しだ。


スピードワゴンがラップをするのは本人の出自的にも多弁な性格からしてもなるほど、と思ったけど、スピードワゴンのほぼ全ての曲がラップだったので、ラップ以外も聴かせてくれよ……と思ってしまった。これはスピードワゴンの歌はオペラが似合いそうだぜとか私が勝手に想像していたのも関係している。

スピードワゴンのジョナサンといるときの可愛さとか、客席を煽ってムードを作るのがうまい感じとか、魅力に思うところが沢山あるだけに歌があんまりはまらなかったのが個人的に残念に思った。

スピードワゴンは客席へのファンサが沢山ある2.5の舞台ならもっと輝くような印象を受けた。帝劇での2.5は従来の2.5とはちょっと作風が違う気がする。

・エリナの歌がうまい。透き通るような高音がすごい。帝劇だけあって全ての歌唱がハイレベルだったが、一番うまいと思ったのがエリナだった。
あと、ジョナサンとエリナのユニゾンがすごくいい。声の相性も含めてジョナエリのキャスティングを決めたのかな。

歌の良さもあって、ジョナサンとエリナのカップル、マジで尊い、守りたい……と思った。
それはそれとして、木にハート相合い傘を描くジョナサンは、改めて見るとなにやってんのこいつ、、、、ばか、、、、と思っちゃったけど。


・エリナの唇を奪って囁くディオのくだり、すごい。

ディオって『悪の帝王』『様々な人間を悪の道に誘惑する』といった面があるキャラだけど、誘惑されて道を踏み外してしまう人の気持ちを肌で感じたというか、妖しい色気が凄かった。エリナのシーンだけでなく、他でも蠱惑的な囁きをするところがちょくちょくあった。

原作を読んだときは、『ジョジョの作中の吸血鬼には従来の吸血鬼感を感じない、吸血鬼特有のお耽美な感じが無い』と思っていたけど、ミュージカルのディオはすごく耽美だなと思った。
だからこそディオに全く靡かないエリナの美しさが光る。

・『星』と『泥』の話、原作でもあったけど、ミュージカルでは更にここをテーマとして押し出してる感じ。個人的に好きな話だったので嬉しい。

・宮野真守演じるディオは、これはディオだ!となる瞬間と、これは……これはディオ・ブランドーなのか?いや、宮野真守……かな?でも、演技も歌もクオリティが高いから、まあいいか!となる瞬間を行ったり来たりしている感じだった。

これは私が宮野真守を知っている状態でミュージカルを観たが故の弊害かもしれない。宮野の記憶を失った上でジョジョミュを観てみたかった。

・青年になったジョナサン、子供時代から大きく成長している。発声からして子供時代と変わって、『自分の馴染みのあるジョナサン』にしっかり切り替わっていたのに驚いた。

舞台だと顕著に感じるんだけど、ジョナサンが強くなるごとに大事な誰かと別れたり、失ったりを繰り返しているので……、純粋に成長したというより、研ぎ澄まされたという印象を受ける。ヤスリで研磨する事で輝く宝石みたいだった。


・ディオ、ダリオの幻影に苦しむ。

ディオが母親を大事にしていて、ダリオは憎んでいるのは原作も同じだが、ミュだと『ダリオと同じ血が自分にも流れている』という事に相当ディオが苦悩している描写が入ってくる。第一幕と二幕合わせて、ダリオの出番が観る前の想像の七倍くらいあった。

ジョジョミュではディオのキャラを『ダリオへの憎しみから殺害に手を染め、その後悪の道を歩く事になった』と描きたいのかな……?と思った。
そうすると、スピードワゴンの『コイツは生まれついての悪』という台詞は間違いという事になってしまうので、それは……つまり……?とちょっと悩んだ。スピードワゴンの台詞はミュでも言われているので、ミュ時空でも生きている筈なんだけど……。

ミュージカルのディオの母親は『星を見なさい』とディオに言うような人だったらしい。タイプとしてはジョナサン父に近い、高潔な人だったようだ。そんな母親をディオも愛していたのだろうと思うが、作中でディオは母親の事は殆ど思い出さない。父親への憎しみと苦しみばかりを募らせているように見える。そういう、自分を取り巻く世界の中の悪いところばかり探して暗黒面に落ちてしまうのが、『生まれついての悪』という事なんだろうか。

個人的には、ダリオと自分は違うと言い続ける割に、ダリオの言っていた世界を手にするんだ!という言葉通りに進んでいるディオが不思議だった。
ジョジョの世界では『継承』というのが重要なワードになっているが、負の要素も継いでしまう事があるということをディオ親子で描きたかったのかな。

・ワンチェンの身のこなしが身軽過ぎてびっくりした。軽やかにダンスしながら演技していて見ていて楽しかった。
原作からミュへ大胆なアレンジがされた中で、一番好きになったのはワンチェンかもしれない。
そしてワンチェンの俳優さんで色んなキャラを見たくなってしまった。真島吾郎とか、西谷誉とか……どうですか??


・ディオが石仮面を被り、ジョースター邸で決戦を迎える。

アニメ3話も凄かったけど、ミュージカルの方も歌・舞台演出が極まっていて、圧倒された。仮にここで舞台終わりですよと言われても大満足で帰れると思う。

あと、宮野ディオの演技が、ディオが石仮面を被ってから一段階ギアが上がった感じがする。ディオが人外になったという事が演じ分けによってスッとわかって良かった。

・第二幕はじまりのスピードワゴンの言葉、
舞台が全部終わる頃には遅くなるから気をつけろよ
家に帰るまでがファントムブラッドだぜ
』みたいな注意喚起をいただいた。

ファントムブラッドのラストがああなる事を考えると、最後まで油断するなよって言葉に重みがあるね…………


・第二幕でワンチェンとスピードワゴンがおいかけっこしてるとき、ワンチェンの軽やかな動きによってなんかイチャイチャしてるように見えてしまい、ちょっと笑った。必死にワンチェンを追うスピードワゴン、かわいい。

・ツェペリさんのジョナサンとの出会いとダンス、楽しい〜。音楽もいい。
波紋でのバトルは舞台でどう表現されるのかな?と思っていたけど、わかりやすいバトルシーンに仕上がっていて良かった。

・スピードワゴンがジョナサンとツェペリさんを案内するとき、レペゼンオウガーストリート…akaウインドナイツロット…みたいな事言ってなかった!?

・スピードワゴン、第二幕で敵に怯えてジョナサンにくっつくところがもうね~めちゃかわなんだよね。ミュージカルだとジョナサンはディオとの関係性に強いスポットが当たっていて、スピードワゴンとの絡みは少なめだった感じを受けたので、ここは癒やしだった。
ミュだとポコの出番が無くなってその分スピードワゴンに言動が統合されたようなので、こういうスピードワゴンはミュ限定なんだろうな。

・ツェペリさんの最期、ジョナサンに親友のようでもあり息子のようでもあった……って言うところ、切なかった。
ツェペリさんは妻子なし→やっぱりいました(シーザーという子孫がいるため)と当初と設定が変わったキャラだけど、この辺のやりとりを見ると妻子なしで石仮面探しに明け暮れた方がそれっぽいなと思った。

・クライマックスのディオとジョナサンの問答と対決、めっちゃ良い。演劇で引き込まれるシーンのひとつに『対立した意見をぶつけあう』というものがあると思うけど、その極地を見た感じだった。

なんか、舞台の全編において宮野ディオの存在感が非常に強いのに、それに対峙するクライマックスのジョナサンを見ると『ジョナサンならディオに勝てる』と自然に思えた。勝てるという説得力があった。それがすごいと思う。

・最後の船のシーン、想像したよりも演出が落ち着いていた。第一幕のジョースター邸での決戦の舞台演出が凄かったのであれ?と思ったかも。
あそこまで凝った演出はなくてもいいけど、せめて船内が爆破されて燃えてる視覚的な描写は欲しかったな。船のシーンよりダニーが燃やされるときの方がずっと演出に力が入っていたように見えた。

・子供時代のジョナサンはエリナがディオに傷つけられるのを防げなくて、別れも満足に出来なかったけど、船のジョナサンはエリナをディオから守って、お別れも言えて……って出来たって思うと、ジョナサンの成長が表われてるシーンなんだなと改めて思った。つらいけど…………

・ジョースター卿から沢山のものを受け継いだジョナサンが、ジョースター卿と同じくディオに命を奪われたって思うと辛いものがある。過酷な運命まで継いじゃったんだな……と思った。ジョースター家は代々短命って言われてたけど、考えてみたらジョースター卿からしてそうなんだな…

・ラスト曲、ディオとジョナサン二人が『星を見た』と歌っていて、衝撃を受けた。(ディオは一生泥を見たキャラだと思っていたため)

ディオは最後に善人になったかというと別にそんな事は無いので(善人は尊敬する人のボディを奪ったりしないし、百年後にラスボスになったりもしない)、ここでの『星を見る』の意味とはなんだろう、と考えた。

ミュージカル中散々出てきたダリオの幻影がディオにとっての『泥』(=生まれついての悪人であり、ダリオと同じ悪の道に走ってしまうという結果)だとしたら、『星』はジョナサンという事かな。ディオがジョナサンのように高潔に生きるという事はなくても、ジョナサンを尊敬し愛していた気持ちもあった事を認めたというか。

ジョナサンの死後、ディオが台詞で心情説明等をしないでラストの歌に進むので、なんか解釈の余地がありすぎるんですよね。一年後とかにもう一回考えたらまた別の答えになりそう。


・カーテンコール、最後の最後でディオが観客へのファンサをして\ワアアア/と湧き、その後ジョナサンがバッッと原作ジョナサンと同じジョジョ立ちをして\ワアアア/と湧いていた。

カーテンコールでの観客、ジョジョミュという名のカロリー高めの作品を三時間長に渡って浴びた事で、ちょっとテンションがおかしくなっていませんでしたか?私はおかしくなっていました。

・ジョジョ一部は舞台映えするだろうなと思っていたが、想像を超えて舞台として仕上がっていた。今回公演中止の日が多く発生した事もあるし、是非再演をしてほしい。見終わった時点の今の感想だと、宮野以外が演じるミュのディオが想像できないので、どうにか宮野を続投して再演してほしい。
ジョジョミュのディオ、原作ディオと比べるとキャラが違う……と解釈に首を捻りそうなところを、宮野の演技力でねじ伏せられた、という感じだったので。

・ディオに『世界』という単語を言わせるとか、一巡……とか、黄金の風……とか、そういう一部以降のワードがちょくちょく出ていたので、ジョジョの舞台は出来れば一部以降もやっていきたいぜという意気をほんのりと感じた。是非やってほしいです。舞台で見てみたいキャラは、吉良吉影とドッピオ/ディアボロです。






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