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春の折詰と鯉川 純米吟醸 亀治好日

行きつけの居酒屋さんがテイクアウトを始めた。

最近は仕事もほぼ在宅勤務になりつつあり、出社は週に1回あるかないか。そんな折、行きつけの居酒屋さんがテイクアウトをひっそり始めたというので、こないだ出社した日の仕事終わりに立ち寄ってみた。

この状況でお店は営業を控えているため、生憎いつものようにカウンターで日本酒片手に一息つくことが叶わない。でもいつものお店の味を自宅で楽しめるということで、少しわくわくしながらの帰り道になった。

テイクアウトの内容は、酒の肴の詰め合わせ。8寸の折詰にぎっしり詰まっているので、夕飯としても十分な量だった。1品1品の写真は撮っていないのだけど、思い出深い食事になったので書いておく(持ち帰りとなることに伴う衛生面の配慮等は十分にされています)。

1.独活とふきのとうのスパニッシュオムレツ
口にした瞬間、鮮やかな春風が吹き抜けた。独活とふきのとうをオムレツにするってあまり聞いたことがない。オムレツなんだけど、純和風な余韻が心地良い。不思議な料理だ。

2.竹の子の木の芽和え
毎年楽しみにしている定番が折詰になって感無量。柔らかい若竹の歯ごたえと木の芽の爽やかな風味が織りなす、淡い春の息吹。少量なのがまた憎い。

3.ピンチョモルーノ
ここのお店の大将はスペインのファン。オムレツに続きSpanish愛が溢れていてもはやよくわからないけど、家庭料理では再現不能な複雑なスパイスが、野趣溢れる羊肉の味を引き立てている。これぐらいパンチのある味になると、ガツンと温めた燗酒が欲しくなる。凱陣ぐらいの。濃いやつ。

4.ポテトサラダ
お品書きの中で1品だけ有り得ない安定感を放つ、黒胡椒を頭に被った少しスモーキーなナイスガイ。「おかえり」とか言いたくなった。

5.ホタルイカと菜の花
木の芽和えに続く春の仲良し2人組。ホタルイカの奥行きある苦みと、菜の花のほんのりとした甘みの協奏。旬の2人が結婚すれば誰だって幸せに決まっている。贅沢を言えば、菜の花に瑞々しさがもうちょっと欲しい。でも、持ち帰り用に水分を切っているのでそこはやむなし。

6.さより大葉フライ
「春を告げる美しい魚」を大葉で巻いた贅沢な揚げ物。冷めてもここまで美味しいんだか嬉しい。お店で食べる揚げたては言うまでもなく、折詰でこの味を楽しめるのは新鮮だった。ソースをつけるのは御法度。衣がまとっている優しく絶妙な塩加減を、そのままの味で楽しむ。


夏子の酒を思い出しながら

あわせた飲んだお酒は「鯉川 純米吟醸 亀の尾 亀治好日」。あの「夏子の酒」に出てくる幻の酒米「龍錦」のモデルになった亀の尾を使い、丁寧に醸されたお酒。山形の大好きなお酒のひとつ。

最初に飲んだのはだいぶ前。上品で凛としたキレのある、穏やか純米吟醸。羽のように軽く繊細なタッチが美しい。火入れの一升瓶なので、当面の間は晩酌に付き合ってくれる安心感。冷やされたくないタイプだと思うので、物置になってる部屋の暗いところでいつも待っててもらっている。

普段は四合瓶しか買わないのだけど、何故かこれは酒屋で見つけたときに衝動的に一升で買ってしまった。これを書いていたらまた飲みたくなった。

信楽焼のぐい吞みで飲む。別に高いものではない。というかそもそも酒器ではない。和菓子の「たねや」で手造り最中セットを買ったときに、あんこが詰まっていた小さな壷だ。あんこて。

半合を注げるちょうどいいサイズのぐい吞みをずっと探していて、見つけたのがまさかのたねやだった。最中でもあんこでもなく、この壷が欲しくて買った。たねやさんごめんなさい。でも重宝してます。

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今夜も亀の尾に乾杯。

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