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営業目線のWeb小説売り込み研究 第3回「長過ぎるあらすじは今すぐ削れ!」

 あらすじは、Web小説における「顔」だ。営業で言うところの商品紹介の営業パンフレットにあたる。

 あらすじの書き方、読まれるためのあらすじ、良いあらすじダメなあらすじなど、Twitter上でもあらすじの書き方は度々議論されてきた。そこでよく言われる内容をまとめると、下記の通りだ。

 ・長過ぎるあらすじは良くない
 ・内容が伝わらないあらすじは良くない
 ・まとまっていないあらすじは良くない

 主にダメなあらすじについて語られている。では、何が良いあらすじなのだろうか。その逆を考えると、短く内容が伝わりまとまったもの、となる。

 至極当たり前過ぎて、よく分からない。では今回も、営業パンフレットに当てはめて考えていこう。

・営業パンフレットの例

 商品の紹介パンフレットを考える時に大事な事は、まずその商品がどんなものなのかを覚えてもらうことにある。たとえば最新コーヒーメーカーのパンフレットを作る時に、「奥行き30センチで場所をとらず、最新ミルを搭載、ステンレスブレードから進化した5cmの新セラミックブレード採用で均一に豆を挽き、30秒でお湯を沸かして蒸らし30秒機能を搭載、3分で抽出されたコーヒーカップ4杯分のコーヒーを30分保温する、お手入れ簡単な最新全自動コーヒーメーカーです」と書いたらどうだろう。これでは何が売りなのか、さっぱり分からないはずだ。

 今の例では、やってはいけないあらすじの内容をすべて網羅した。つまり、「説明が長い」「内容が伝わらない」「まとまっていない」のだ。

 このコーヒーメーカーを紹介したければ、私ならば「美味しい挽きたてコーヒーをご家庭へ。コンパクトな全自動コーヒーメーカー」と書く。小説のあらすじも同じである。一つずつ解説していこう。

・短くする

 まず、先程挙げた悪い例は説明が長過ぎる。読む気が起きない。これは小説のあらすじにも同じ事が言える。もしあなたの作品のあらすじが、第一話の内容の3分の1を説明する様なものであれば、すべて削除して良い。むしろ、あらすじは第一話から最終話直前までを140文字以内で説明できるくらいの内容にするべきだ。コーヒーメーカーで例えると、最終話直前までが「コーヒーの抽出まで」、最終話が「出来上がったコーヒーを飲む」ところにあたるからだ。
 コーヒーメーカーのパンフレットを手にとって「2センチのステンレスブレードを廃止し、5センチセラミックブレードに変わった、高速回転ミルを搭載。豆を均一に挽く事が可能となりました。その全容はご購入してお確かめください」と書いてある商品を買うはずがない。美味しいコーヒーを淹れたいのに、コーヒーミルの事を長々と書いてあるだけの商品パンフレットを見て、商品を買う気になるはずがないのだ。

・伝わる内容にする

 次に考えるのは伝えたい内容だ。すべてを網羅していても伝わらなければ意味がない。人間は一瞬で覚えられる要素に限りがある。
 人間が覚えられる要素について、アメリカの心理学者ジョージ・ミラーが1956年に提唱した「マジカルナンバー7」というものがある。つまり人間の短期記憶は7±2要素が限度、というものだ。これがしばらくの間定説となっていたのだが、実はミラー本人も「7」は仮説であると言っており、その後の研究で人間が瞬間的に記憶できる要素は3〜4±1要素と言われる様になった。郵便番号を見ると分かりやすいだろう。1080075より、108-0075の方が覚えやすい。
 あらすじもこれと同じく、3〜4±1要素で構成すると良い。「美味しく淹れられる」「ミルを搭載」「家庭向け」「コンパクト」「全自動」これで良いのだ。
 あなたの作品のあらすじに、要素が10も20も入っているならば、最も大きな要素4つまでに絞るところから始めると良い。

・複数の内容を一つにまとめる

 ここまでわかれば、あとはそれをまとめるだけだ。たくさんの要素を短くまとめるには、要約力が必要となる。コーヒーに求められるものは、美味しさに他ならない。美味しいコーヒーを淹れるために、この新商品は新しいブレードで均一に挽いた豆を、適切抽出時間と蒸らし時間をもって、4杯淹れることができる。それを「美味しい挽きたてコーヒーをご家庭へ」と表現した。
 あなたの作品のあらすじが4要素に収まらない場合、複数の要素を一つにまとめる言葉を探すと良いだろう。

・あらすじを変えると本文も変わる!?

 これで、あなたの作品のあらすじはかなりスッキリとまとまったことだろう。そのあらすじを読み直してほしい。すると、あることに気付くだろう。

 ……この話は、本当に必要なのか?

 そう、横道に逸れすぎた無駄な話を書いている事に気づくはずだ。あらすじが長いWeb小説作家の作品は、本文もあらゆる方向に手を伸ばしすぎている傾向にある。文字数は膨らみ、ついてきてくれていたはずの読者の、読む意欲を削いでいるのだ。読者の求める話の流れから脱線し、横道に逸れ続ける。これでは途中で切られてしまうだろう。

 あらすじが変われば本文も変わる様な作家は、迷いながら執筆している事と思う。今一度あらすじを見直して「自分が本当に書きたかった物語」を再構成して欲しい。

 そこにはきっと、たくさんの読者の求める物語があるはずだ。あなたの書きたかった物語は、読者の読みたかった物語でもあるのだから。

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