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営業目線のweb小説売り込み研究 第4回「1ツイートにすべてを詰め込む」

 web小説創作アカウントとしてツイッターを眺めていると、こんなツイートを見かける。

 「小説読みます」

 大いに結構だ。読みたい作品を勧めに来てほしいという考えや作家仲間を増やしたいという考えなら良い。ただし中には相互評価を要求したり、フォロワー稼ぎのためにやっている者もいるので見極める必要がある。

 ただ、今回はそういう話ではなく、その「小説読みます」ツイートにぶら下がっているリプライを見て感じたことから、お伝えしたいことがある。以下の自作紹介ツイートを見てほしい。

「チートハーレム無しの作品です。本作は女の子が記者として活躍し、呪い事件を追ってその事件の謎を解き明かすミステリーです!推理シーンが売りです!スチームパンクで、機械が発達して魔法が廃れた世界観です!」

 こんな感じの自作紹介がぶら下がっている。はっきり言って、まるで興味がわかない。これは、1ツイートに要素をきちんとまとめきることが出来なかった典型だろう。ツイートは、あらすじよりも短い文章にすることを要求される。

 営業においても、要素を極端に圧縮してプレゼンしなければならないことがある。そんな時に役立つのが、プレゼン手法の基本である「ホールパート法」だ。

・ホールパート法とは

 ホールパート法とは、読んで字のごとく「whole(全体像) Part(一部)」という意味だ。どういう事かというと、「全体像を説明してから一部を説明する」手法の事を指す。営業を例にとってみよう。

 最新のボールペンが開発された。その内容は「なめらかなインクによりかすれない」「人間工学に基づいたデザインにより疲れない」「低重心で筆圧をかけずに書ける」といったものだ。都合よく、前回(第3回)で語った通り3要素である。営業マンはこれを1分でプレゼンすることになった。

 「​弊社の新しいボールペンは、かすれないなめらかなインクを搭載し、デザインは人間工学に基づいており疲れず書けます。さらに低重心で筆圧もかからずストレスフリーという3つの特徴があり、快適な筆記感を得られます!」

 要素を抑え内容は絞れているが、いまいち伝わりにくい。ここにホールパート法を組み込んでみよう。

 「弊社の新しいボールペンはストレスフリー!その3つの機能をご紹介します。1つ目はかすれないなめらかなインク、二つ目は人間工学に基づいたデザイン、最後は低重心です。これらの機能が快適な筆記をお約束します!」

 いかがだろうか? 最初に全体像である「ストレスフリー」を語ることで、3つの機能をごちゃごちゃ説明せずともそれが「快適さ」につながることがよくわかるのではないだろうか。そして最後に全体像を話すことで、ストレスフリーの快適なボールペンであることがよく伝わる。

・1ツイートにすべてを詰め込む

 では、ホールパート法を作品紹介ツイートに詰め込んでみよう。冒頭で書いた悪い例を、変えていく。

「スチームパンクと魔法の世界のミステリーです。主人公は魔法が廃れかけ機械が発達した世界に残る呪い事件を追う、若き女性記者。彼女が呪術事件を、魔法ではなく推理で解決していきます!」

 いかがだろうか。最初にスチームパンクと魔法の世界観でミステリーを書く、という事を明示し、次に要素として魔法が廃れ機械が発達していること、呪いの事件が主になっていること、主人公が女性であることを明示し、最後にまた、ミステリーであることを示している。

 ちなみに、「チートハーレム無し」という枕詞は最近、自作の紹介で好まれるようになったが、それは異世界ファンタジーものにおいて「異世界転生」だけでなく「チート能力」と「ハーレム状態」があるものがあふれて常態化したことによるものであり、これをあまり好まない読者もいるため多くの作家がそう宣伝する様になったのだが、今回の宣伝の場合、「女性主人公」「魔法ではなく推理で解決」の2点を書いておけばどちらもおおよそ否定されているため(ハーレムを男性主人公のものと捉えるならばだが)、わざわざ書く必要は無い。要素の取捨選択は、このようにして行う。

・あらすじにも応用が利くホールパート法

 このように、1ツイートにすべてを詰め込んでも興味を引ける様にできるホールパート法だが、この書き方は当然、あらすじにも応用できる。前回(第3回)で書いたあらすじに必要な書き方を、ホールパート法を使って書いてみると、あなたのあらすじは劇的に分かりやすいものになるだろう。

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