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営業目線のWeb小説売り込み研究 第5回「短いプロローグは営業的アプローチ!?」

 物語の導入であり、あらすじに次いで重要なのがプロローグだ。

 プロローグはあなたの考えた最高に面白い物語に読者を引き込む、いわば扉の様なものである。読者はプロローグという名の扉に手をかけ、あなたの物語世界へと足を踏み入れてくれる……はずだ。

 しかし、プロローグの時点で切られてしまい、読まれなくなるパターンも数限りなくある。なぜだろうか。プロローグなど書いてしまったから、読者が逃げたのだろうか。
 たしかに「プロローグを飛ばして第一話から読み始める」という読者も少なくない。なぜなのか。

 それは、多くのWeb小説のプロローグが、読者にとって無用の長物だからだ。重たすぎる扉の横に開きっぱなしの勝手口があれば、そこから敷地を覗き込むのは、当たり前の事だろう。

 では、どうしたらプロローグを機能させる事ができるのか。これも、営業手法に当てはめて考えていこう。

・気になるものは魅力的

 営業手法で有効な心理効果の中に「ツァイガルニク効果」というものがある。これは旧ソビエト連邦の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクが提唱したもので、「目標が達成されない行為に関する未完了課題についての記憶は、完了課題についての記憶に比べて想起されやすい」というものである。これでは少し分かりにくいので、わかりやすい例を挙げる。

 マンガ好きのA氏は、ある日とても面白い無料のWeb漫画を見つける。ついつい「次へ」ボタンを押し、次話、次話と進んでいく。しかし、途中で「コインを購入して読もう!」と課金を迫られる。A氏は課金するならいいや、とその漫画を読むのをやめた。関連リンクから、完全無料の漫画があったので、A氏はそちらを全話読み切った。最新話の最終ページに「コミック版は加筆あり!」と書かれていた。A氏はコミック版の発売が楽しみだと思いながら、その日の読書を終えた。

 数ヶ月後のある日、A氏は途中で読むのをやめた漫画を書店で見かける。そして、A氏はその漫画の単行本を購入する。しかし実は、A氏が購入した漫画の隣に、読み切った方の漫画の単行本も積まれていた。だがA氏は、そちらの漫画の事はすっかり忘れていたのだ。

 ……これが、ツァイガルニク効果だ。達成されなかった読書体験の方を、A氏は強く覚えていたのだ。

・ツァイガルニク効果をプロローグへ

 ここで、Web小説のプロローグを考えてみよう。

 ツァイガルニク効果を知った今なら分かるだろうが……主人公がトラックに轢かれて女神に救われ、異世界にたどり着くまでのシーンや、唐突な戦闘シーンとその決着、はたまた謎の夢でお告げを受けて目覚めるところまでを、プロローグで書いてはならない。なぜなら、それらのシーンは「その先が気にならない」からだ。
 どのシーンも、プロローグとしては本来問題ないものと言える。だが、主人公が死んで、その後異世界に行くまでを書ききってしまうと、この先の展開はなんとなく読めてしまう。プロローグでバトルが展開されるまではいいが、決着してしまえば一話は過去に戻るなりバトルのしばらくあとの話になると容易に想像できる。謎の夢を出すまではいいが、そこから目覚めるシーンを書いてしまえば、その後夢に出てきた何者かに出会うシーンが書かれることが読めてしまう。プロローグで一区切りつくところまで書いてしまうのは、悪手中の悪手であることが、よくわかるだろう。

 ではどうすべきか。主人公がのっぴきならない状況に追い込まれ、絶体絶命になるまでのシーンにしようか、それとも鮮烈な殺人劇が行われるが、犯人の正体はわからない、そんなシーンにするか。それとも世界が滅びるシーン? 書きたいジャンルによって、色々な「気になる」シーンが考えられるはずだ。

 そこで気をつけたいのは、プロローグの「長さ」だ。プロローグを何千文字も書くのは、あまりおすすめできない。ツァイガルニク効果を狙うなら、プロローグで読者に「満足感」を与えてはいけないからだ。プロローグはできるだけ短く「え? もう終わり?」と読者に思わせる、もしくは「この先、この主人公がどう活躍してくれるんだろう?」と思わせる内容を書くと良い。それを、2000文字未満で書くと良いだろう。

 短くて気になるプロローグを書くことで、あなたの物語の扉はぐっと軽くなり、読者はその扉を勢い良く開いて、物語世界に足を踏み入れてくれることだろう。

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