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パリで観た名コレクション ベスト5 第5位 GIVENCHY

私は2000年代初めから2015年頃までセレクトショップのメンズバイヤーをしておりましたので、インポートから国内ブランドまで幅広く展示会等を回っていました。
そのルーティンワークの中で最も大きなイベントといえば、パリ・ミラノコレクションに合わせた海外出張でした。
年2回(春夏と秋冬)およそ1週間から10日前後の日程を組み、ブランドごとにランウェイショーと展示会を回り、パリとミラノを行き来しながら約1年後に店頭に並ぶ商品の買い付けをしておりました。

実際の商品をピックアップして買い付けを決める展示会がもちろん優先ですが、「ランウェイショーはできる限り見た方がいい」という代表の教えのもと、日程的にも幅を持たせてもらい、ランウェイにも多く足を運んでいました。「ブランドやデザイナーの世界観、場の雰囲気などをお客様にもしっかり届けて欲しい」という想いから代表はその様に配慮してくれていたのだと思います。

ミラノのブランドも多く取り扱っていましたが、日程的にランウェイを観ることは難しく、自分の中でコレクションといえば主にパリ。会場が狭い場合などはチケットが貰えない事もあったので、全部が全部観れたという事ではありませんでしたが。そんなところで、私が実際に観る事ができたパリコレクションの中で、最も印象的だったベスト5を今回からご紹介していきたいと思います。

第5位 GIVENCHY(ジバンシィ)2011-12/AW

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ラグジュアリー×ストリートのイノベーターが繰り出した、エポックメーキングな名コレクション

現BURBERRY(バーバリー) のチーフ・クリエイティブ・オフィサー、Riccardo Tisci (リカルド・ティッシ)。彼が手掛けていた時代のGIVENCHY(ジバンシィ)からパリで観て印象的だった名コレクションをご紹介。

彼を初めて知ったのは、ジバンシィでのメンズファーストコレクション(2009年春夏)。
当時ジバンシィのメンズはほぼノーマークでしたが、このコレクションをウェブで観て「とてもカッコいいね!」という事に社内でもなり、すぐさまお取引きの打診をしたのを覚えています。
イタリア人らしいセクシーで骨太なテーラードスタイルを軸に、エレガンス、ゴシック、アンダーグラウンド、ヒップホップ、バスケットボールといった彼の生い立ちやルーツを投影した、振り幅の広いアイデアを緻密に交錯させ、ど迫力のグラフィックでイメージをまとめ上げた渾身の内容。
ラグジュアリーでロマンティックなムードを保ちながらも、ビックシルエットのTシャツやショートパンツ×レギンスなどからは90年代的ストリート/ヒップホップの影も。エレガンスとストリートカルチャーという対極にあるようなものを組み合わせて、全く新しいスタイルを生み出した、とてもインパクトのあるものになりました。
まさにメンズウエアにおいて、リカルド・ティッシのセンス、才能が開花した瞬間でした。

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その後もジバンシィはこの路線を進化させ、ラグジュアリー×ストリートのスタイルは最高潮に。いよいよエポックメーキングな2011-12年秋冬コレクションが生まれます。
アイコンとしてロットワイラーの大胆なグラフィックを全面にフィーチャー、ヨーロピアンなエレガンスは若干鳴りを潜め、ヒップホップ/ギャングスタ色強めのエネルギッシュなスタイルを披露します。
ラグジュアリーとストリートの融合がモードの常識となった現代においても、リカルド・ティッシが間違いなくこのジャンルのイノベーターである事を、当コレクションは如実に物語っています。
実際このランウェイ観に行きましたが、停電が起こり確か1時間半近くもスタートが遅れ、暗闇の中、今か今かと待ちわびた記憶があります。
オーディエンスの方々もかなりイライラしているようでしたが、ショーが始まると皆ランウェイに釘付けになり、フィナーレはもの凄い熱気とオベーションに包まれていました。

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リカルド・ティッシと言えば、やはりゴシックなムードがデザインの特徴。ジバンシィ時代から現バーバリーまでスタイルは一貫しているように見えます。そのルーツはイギリスのロックバンドTHE CURE(キュアー)だったんですね。ダークでロマンティックなスタイルをこれからも楽しみにしています。

僕はイタリア人であることを誇りに思っている。それとともに、運命が僕を英国へ、インドへ、さらにパリへとみちびいてくれたことに感謝している。イタリアでは、僕のダークさ、狂気、荒唐無稽さを引き出して、発展させることができなかったと思う。それは英国とセント・マーチン美術大学だからこそできたことだ。他の人と違うことをするようにとも教えてくれた。
僕は以前、インパクトのある格好をして黒いロングヘアーだったんだ。ザ・キュアーの大ファンだったからね。ゴスメイクもしていたよ。黒のケープやビニールを使ってクレイジーな洋服を作ったりもしていたね。ファッションというよりはゴスだったかな。それからヒップ・ホップのようなセクシーな音楽に興味を持ち始めたりしたよ。


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