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対立する要素が生み出す均衡の妙

POESIES ショップデザインストーリー

モードやラグジュアリーな洋服に、朽ちた空間のコントラスト。POESIES(ポエジー)をデザインする上で、ひとつ大きなテーマとなったアイデア。

相反する要素から生まれる、美しさ。

僕の中でそういった美意識を持つ原点になったのは、やはりマルタン・マルジェラの存在が大きかったのだと思います。

95年99年STREET別冊

INSPIRATION 

今から20年近く前、勤めていたセレクトショップの代表(でありDessin de Modeのデザイナー)から譲り受けた品。当時マルタン・マルジェラを取り扱うにあたり、「これを見てマルタンの空気感を肌で感じなさい」というメッセージだったのかもしれません。
この希少なブックレットには、インディペンデントで最もエキサイティングだった時代のマルタン・マルジェラの全てが集約されていました。

ファッションに本来求められるべき、華やかで贅沢なものと180度反対の場所に、全く違う価値観があることに気付かされた瞬間。
僕がヴィンテージの洋服やインテリア、古い建物などに惹かれるようになったのは、この頃からだと思います。

マルタン・マルジェラがデビューした1988年から1999年までの12年間の軌跡をまとめたヴィジュアルブック。マルジェラ自身が写真のセレクト、アートディレクションを行なった

また、冒頭で触れた「相反する要素から生まれる、美しさ」。

近年で直接的なインスピレーションを受けたのは、ルーシー&ルーク・メイヤー夫婦によるジル・サンダーのヴィジュアル・イメージ。
オリヴィエ・ケルヴェルヌ、リナ・シェイニウス、マリオ・ソレンティらが撮影した、ラグジュアリーでシックな洋服と、無造作な背景のコントラストがとても美しく、いつも見惚れていました。

「日本の風景と文化に浸ることを夢見ていました」
マリオ・ソレンティが捉えた、Jil Sander2019春夏キャンペーン
オリヴィエ・ケルヴェルヌがシチリアを巡る車の旅で撮影した、Jil Sander2020春夏コレクション
自然の風景と都会の質感。シチリアやパレルモほど見事に、歴史を物語る幾重もの層、光と影、明瞭さと多様性、自然と人工が互いに融合し、一体となっている場所は他に見当たりません。対立する要素が生み出す均衡の妙。それはJil SanderでのLucie MeierとLuke Meierによる全ての仕事に反映されているものでもあります。広々とした野原とバロック様式、流れるようなフォルムと彫刻的形状、マスキュリンとフェミニン、コンクリートとレ―スといった正反対のものが絶妙なハーモニーを奏でています。禁欲と官能の原型のように。
「写真は見るものではなく、感じるもの」jilsander.comより

POESIES

物件を探していく中で、築60年ほどの倉庫のような、とても雰囲気のある建物に出会いました。

POESIES最初の状態

その建物のムードを生かし、上品な洋服とのコントラストをショップデザインとして表現できないか、と設計士の間宮洋一さんに相談したのがPOESIESのデザインの始まりでした。
それからというもの、僕が考えるイメージのヴィジュアルを、夜な夜な間宮さんに送り続けました(とても迷惑だったと思います苦笑)。

そんな中で間宮さんから頂いたアイデアが、壁を「塗る」のではなく、逆に今ある塗装を「研磨」して、荒さを出しながら建物を元の状態に近づけるというものでした。加えて重厚感のあるファサード、鍵、照明器具、床などもそのまま使用し、建物の歴史を最大限に尊重する仕事に徹してくれました。
間宮さん、アシスタントの大場さんによる研磨の様子。

POESIESのデザインには「数年に渡りお店を進化させる」というコンセプトが隠れています。
建物の歴史を尊重した元の姿から、数年に渡りデザインを加えていくというアイデアです。
下地処理の状態で止まっている壁が一部ありますが、そのストーリーをそれは表現しています。

完成であり、未完成である今の空間を楽しんで頂けましたら幸いです。
土日は僕もちょくちょく遊びに行っておりますので、皆さま是非お待ちしております。

2022AWのテーマ〈ラグジュアリー・ヴィンテージ〉

先日発表しましたPOESIESオープンのプレスリリースですが、媒体にも取り上げて頂き、お客様に認知して頂くきっかけとなりました。
FASHIONSNAP.COM様、QUI TOKYO様、セブツー様など誠にありがとうございました。

INSTAGLAM

【ショップ情報】

POESIES(ポエジー) 
東京都渋谷区幡ヶ谷2-1-3高橋ビル1F
OPEN 12:00
CLOSE 19:00 
Close Wednesday

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