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「先を見据えた対応でコロナを乗り越える」

千葉県を中心に活動する中間支援組織「ちば市民活動・市民事業サポートクラブ」の鍋嶋洋子さんは、行政にNPOの支援を訴えるため4月と5月にアンケートを実施。コロナ禍で苦しむNPOの活動を支えてきた。千葉県で自然体験活動を提供する「千葉自然学校」久保田康雄さんとも連携し、行政への働きかけを行った。両名からアンケート実施の経緯やコロナ禍の活動についてお話しを聞きました。

特定非営利活動法人「ちば市民活動・市民事業サポートクラブ」:鍋嶋洋子様
特定非営利活動法人「千葉自然学校」:久保田康雄様

(鍋嶋様)
―アンケートの実施と要望書提出の経緯を教えてください―
【行政に根拠を示すため”緊急アンケート”で働きかける】

コロナの影響でNPOの活動が大変という状況が見えてきた、2月・3月頃アンケート調査を実施しました。行政にNPO支援を訴える全国的な動きが当時あり、千葉でもアンケート調査をして、県や市に要望書を出すという動きを作りました。4月10日締め切りのアンケートを行い。2月・3月のNPOの状況を調査しました。

アンケート実施時は「もう団体を閉めるしかない」という声も聞こえ、行政を動かすには1、2団体でなく全体の状況を把握して根拠を示す必要があると思いました。284の団体から回答を得ることができ、4月16日付で中間支援組織である当団体(「ちば市民活動・市民事業サポートクラブ」)と「ちばのWA地域づくり基金」の連名で要望書を提出しました。千葉県と千葉市に対し「緊急経済対策等において、NPO 法人及びそれに準じる組織も対象とすることを明確化」すること等、6つの支援策を(*1)提言しました。千葉県も千葉市も「NPO支援の施策を積極的に進めたいと思います」という回答でしたが、千葉県固有の課題に踏み込んだ要望ではなかったため、具体的な回答はありませんでした。

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【状況の変化を見極め再アンケートを行う】
その後千葉県の中小企業再建支援金が始まりますが、NPOは公表段階で対象になっていませんでした。(*2)企業・個人事業主であれば対象になる制度が、法人格が違うNPOだと対象にならないということで、「これは困る」と思い再度アンケートを実施しました。

実施したのは5月22日から5月28日までの間で、3月・4月の状況を改めて調査しました。 回答していただいた団体うちの89%が活動に影響を受けて、68%は減収になっている等、団体の存続が本当に大変になってきているという状況が見えてきました。(*3)

5月に要望書を提出する際は、中間支援組織だけでなく、具体的な事業をしている行政の支援がないと存続が難しいと思われるような団体と連名で提出したいと考えました。そこで日常からやり取りのあった「千葉自然学校」と「日本ファイバーリサイクル連帯協議会」、当団体の連名で提出しました。

(*1)「新型コロナウィルスの影響による NPO 及び多様な市民活動の 存続危機に対する支援に関する要望書」
https://blog.canpan.info/npo-club1/img/E8A681E69C9BE69BB8EFBC88E58D83E89189E79C8CEFBC89docx.pdf
(*2)6月16日の規制緩和で特定非営利活動法人も対象に加えられた
(*3)「第2弾新型コロナウイルス感染症対策に係るNPO等支援のための緊急アンケート結果報告書」
https://blog.canpan.info/npo-club1/img/E7ACAC2E5BCBEEFBCAEEFBCB0EFBCAFE7AD89E694AFE68FB4E381AEE3819FE38281E381AEE7B78AE680A5E382A2E383B3E382B1E383BCE38388E381BEE381A8E38281.pdf

(久保田様)
【千葉自然学校について】
キャンプなどの自然体験を提供することで、子どもたちの自然に対する興味、関心を引き出す活動をしています。子どもたちの「たくましさ・やさしさ」を引き出すと同時に、野外生活を通して災害や事故などの緊急時に生きる知恵を伝えています。

―コロナ禍でどんな影響があり、どんな対応をしましたか―
【夏の事業再開を見据え、5月・6月で独自ガイドラインを作成】

春に小学校、中学校、高校が休校になり、社会全体が止まりました。日本全体が機能を停止して、がまんがまんの3ヶ月(4~6月)でした。県と市から要請があり、青少年教育施設の受け入れが中止になりました。そこで収入が0円になるわけですが、何とか夏はやりたいなということで、キャンプが安全にできるよう「キャンプのコロナウィルス対応ガイドライン」を5月・6月の休んでいるときに作りました。

7月頃からはガイドラインの徹底をしながら、事業の受け入れを開始しています。事業の本数を減らして、参加者の定員を半分にして三密を避けて実施しています。事業本数は減りましたが、社会的な要望は強く、日帰りの家族向けのプログラムは1日、2日ですぐにいっぱいになり、キャンセル待ちになりました。

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※webで行った本インタビューの様子。(左上:久保田康雄様、右上:鍋嶋洋子様)

【コロナ禍での収入不足を予想し副業・クラウドファンディングを推奨】
持続化給付金、雇用調整助成金、鍋嶋さんと要望を出した千葉県の中小企業再建支援金も申請しました。4月・5月の仕事がない時期は職員に積極的に副業を推奨しました。

副業では昨年9月・10月の台風のとき支援した、農家さんに仕事をさせてもらいました。当時ボランティアの方が倒木の伐採等をしてくれた繋がりがありました。

またクラウドファンディングで「自然学校エイド基金」(*1)の立ち上げをしました。

―「自然学校エイド基金」発足の経緯を教えてください―
【早期に基金の立ち上げを実施。859万円の資金獲得に成功】

4月・5月の仕事がなくなった時期に「公益社団法人日本環境教育フォーラム」、「特定非営利活動法人自然体験活動推進協議会」、「一般社団法人日本アウトドアネットワーク」の3つのネットワーク団体で基金を立ち上げたという事例があります。基金は500万円が目標で、10月5日現在859万円集まっています。

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―今後についてお考えをお聞かせください―
【自然活動の大切さを知ってもらうチャンスにしたい】

運営は厳しいですが、7月以降社会的にもだんだんwithコロナで付き合っていく方法が分かってきているので、安全・安心に運営できる方法を確立したいという前向きな気持ちでいます。自然体験や、人と人が直接コミュニケーションを取る大切さがいままで以上に実感できるようになってきたと感じています。がまんがまんで子どもたちがほとんど外に出ない期間もありましたが、子どもたちは野原があれば走り回るし、カヌーに乗れば嬉々として漕いでいるし、抑圧されたものが解放されたと7月、8月は実感できました。

zoomを活用してオンラインでインストラクターが、「これから10分間家の近くで、赤いものを探してこよう」とか、「においのあるものを探してこよう」ということもできますが、直接体験に比べたら効果が違うと考えています。

本を読んで感動するのは、直接体験の積み重ねで、本を読んで感動するようになるのではないでしょうか。自尊心などいろいろなことがも直接体験で養われると思います。

自然体験の大切さを知ってもらうチャンスだと思っていますので、我々のネットワークで課題を持ち寄って解決したり、コロナ禍でできることを考えていきたいです。

(*1)自然学校の存続を目的とした基金。人件費や活動費などに使用するため、賛同団体に加わっている全国72の自然学校に分配される。

<ちば市民活動・市民事業サポートクラブ>
https://blog.canpan.info/npo-club1/archive/497

<千葉自然学校>
https://www.chiba-ns.net/
▼こちらから寄付を受付中
https://www.chiba-ns.net/mp/donation

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