幼い子と瀬戸際の祖父
赤くストーブが煌々と着いていたかもしれない。こたつ、は、なかった気が。おじいちゃんは、当然おじいちゃんだから、私や、お姉ちゃんや、お父さんや、おじさんより歳上だ。だから気付いてしまった。
「やだやだやだ、おじいちゃん、死んじゃやだ!」
その時の私は小学生で、
おざぶに座っていた私と違っておじいちゃんは四つ足の椅子に座っている。濃くて赤い色の絨毯の上に仕事机を置いている。じゃあ、こたつはない。
これは、ものすごく大きな問題だった。しかも、突然やってきて、私を心臓の底から打ちのめしたのだ。だから私はおじいちゃんの足に縋りついた。
人はいつか死ぬんだよって説明じゃ納得いかない。
人がいつか死ぬのが問題なんだ。
天国に行くんだよって教えじゃ納得いかない。
どこかに行ったきりなのが問題なんだ。
なくなるんだろう。じゃあ、どこに?記憶とか、魂とか、私からは触れないどこに?あちらからも触れないところに?誰も帰ってきたことないでしょ。
死んじゃやだ。会って、話して、触って、できないのはやだ、やだ、やだ!
私は泣き疲れたから、答えまで行かなかった。
おじいちゃんは、生死の瀬戸際から手を引いて、世を去った。
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