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ミュージカル 『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』 感想

ミュージカル ストーリー・オブ・マイ・ライフを観た。
初演は万里生くんと元基くんで、アルヴィンとトーマスを入れ替わりでやっていたこの作品。再演では万里生くんアルヴィン・元基くんトーマスで役が固定となり、更に太田アルヴィン・牧島トーマスという新たなペアが加わった。期間は2週間。週末は2回。とはいえ2回目の週末というのは12/25いわゆるクリスマスで、更に地方公演がないこの作品はこの日が大千穐楽で、この作品でクリスマスに大千穐楽というのはファンにとっては何かしら意味を見出さずにはいられないわけで。激戦必須。なので私は最初から挑まず、他の日程でうまいこと両ペアまとめて取れました。
初演は気になってはいたけどチケットを取っておらず、評判を聞いた時には時すでに遅し、チケットは完売、そもそも自分の予定が合わない。再演があったら絶対観に行こう!と心に決めていた作品でした。そして、観て、しっかり泣きました。

以下、好き放題ネタバレして、あらすじとか、時系列行ったり来たりしながらダラダラと感想とかペアの違いや共通点とか、思ったこととかを述べていきます。長くなりそう。
田代平方ペアも太田牧島ペアも、どちらもとっても好きでした。



「人が死んだら、いいことを言うんだよね」
「弔辞っていうんだよ」
「君が僕に書いてくれたら、僕が君のを書くよ」
「そんなことできる?」
「あ、そっか…じゃあ、どっちか先に死んだほうのを書くっていうのは?いいよね?」
「うんっていったら、帰っていい?」

こんな呪いみたいな約束をした二人の物語。

映画『素晴らしき哉、人生!』のテーマや大切なセリフがそこかしこに散りばめられている。
・クラレンスの仮装
・進む者と留まる者
・バタフライ効果
・ベルが鳴るのは、天使が翼をもらった合図なんだ!
・アルヴィンの死

同じセリフ・やり取りが繰り返されるのが効果的。
書けないトムにアルヴィンがちょっかいかけて、顔を見合わせてしー!ってやるのは、①帰省したトムが課題が書けなくて悩んでるところ、②アルヴィンの死後、彼への弔辞が書けなくて悩んでるところ。どちらも手を差し伸べるのはアルヴィンなんだよね。温かいんだけど、2回目(作品の中では冒頭)ではアルヴィンはもうこの世にいないので、つらい。
弔辞の約束も、①子供のころに契約書を書いたとき、②雪の中の天使を歌って二人の本当の別れの直前。「人が死ぬと、いいことを話すんだよね」「弔辞っていうんだよ」って言うのが最後だけ逆になる。

【衣装】
平方トム→黒のチェスターコート。似合いすぎ。
牧島トム→ベージュのトレンチコート。たぶんバーバリー(裏地)。
万里生アル→クラレンスイメージのピンクのヒラヒラ天使。マジ天使。
太田アル→生前本屋で働いていた服。落書きコートが可愛い。「留まる者」イメージらしい。え、つら…ジョージ・ベイリーじゃん…。

【ミセス・レミントン】
アルヴィンが6歳のとき、母親が死んだ。だけど、担任のミセス・レミントンが人生を変えてくれた。
段ボールの羽とハンガーの輪っかを頭につけて、手にはハンドベルと、『トム・ソーヤ』と書かれた手作りの本を持っている…ハロウィンパーティに『素晴らしき哉、人生!』のおじいちゃん天使クラレンスの仮装をしてきたトムと、死んだママの幽霊の仮装をしてきたアルヴィン。クラスの中でアルヴィンだけが、トムの仮装がクラレンスだとわかった。クラレンスはママのお気に入りだったから。それで、担任のミセス・レミントンが二人を引き合わせてくれた。「天使クラレンス。あなたにミセス・ケルビーを紹介するわ。彼女、あなたの大ファンなんですって」それ二人の出会いだった。
ママの姿をしたアルヴィンと、クラレンスの姿をしたトムの出会いを「ママはママの天使に出会って、僕は出会ったんだ。君と」と表現するの本当に素晴らしい。仮装をした二人が出会ったことで、同時に二つの出会いが生まれたんだね。

【神の偉大な図書館①】
これじゃない、と「見落とした瞬間」を探るトム。「もっと絞り込んで探したいってこと? じゃあ、大事な物語に飛ぼう」と言って、アルヴィンは次の物語を出す。ちょうど一週間前、アルヴィンはこの場所に立っていた。彼の父親を偲びながら。アルヴィンとトムが最後に会った日の物語。
田代平方ペア→アルヴィンはその場で、トムの方から近づいてアルヴィンを抱きしめる。アルヴィン、ゆっくりトムの背中に腕を回す。きゅっと目をつむる。「待たせておけばいい」の万里生アルヴィンの左手が好きです(ピンポイント)
太田牧島ペア→二人で駆け寄ってハグ。ひしっと抱き合う感じ。
父の弔辞を今聞きたいというアルヴィン。トムは途中まで読んで、「これは違う」とその物語をくしゃくしゃにする。

【素晴らしい贈り物】
アルヴィンと父親は、父親の経営する本屋の二階に住んでいた。アルヴィンの父親は、その人にぴったりの本を選ぶ不思議な才能を持っていた。本屋に忍び込み、トムのためにぴったりの本を選んであげる!というアルヴィンに対して、
平方トム→「プラモデルがいいんだけど(変顔)」
牧島トム→「プラモデルでもいいんだよ(あきれ顔)」
↑この反応を考えると、田代平方ペアは幼い頃は二人揃ってやんちゃっぽい、太田牧島ペアはトムの方が少しお兄ちゃんしてたのかなって感じがする。
パパの真似をして、本の神様の声を聞こうとするアルヴィン。並んでおとなしく立ち、謙虚に返事を待つ…ここの平方トムが可愛い。
トムにぴったりの本が決まって、取りに行くアルヴィン。「はやくはやくー!」とはしゃぐ平方トムが可愛い。アルヴィンがトムに選んだ本は『トム・ソーヤの冒険』
クラレンスの仮装をしていたときトムが持っていたのは手作りの本だったから、まだその頃はまだこの本に出合ってなかったんだよね。
田代平方ペア→万里生アルヴィンは結構高い位置まで登って、平方トムは本棚に手をかけて割と全力ジャンプで本を受け取る。万里生アルが意地悪で仲良さげで可愛い。
太田牧島ペア→太田アルヴィンはトム・ソーヤの真横ぐらいの位置まで登って、牧島トムもぴょんって感じ。太田アル優しくて可愛い。

【1876年】
1876年に書かれた作品が未だに読まれてる。こんなの書けたら格好いいな…と、トムが小説家を志すようになった時の気持ちを歌った曲。シンプルでじんわりする。作中の他の曲に比べて動きは少ないけど、心に強く残る曲。
後ろで汗を拭いて水分補給するアルヴィンは必見。万里生アル、飲んだ後に大きな口を開けるの可愛い。

【よりよい場所】
二人はカーター葬儀場に忍び込んだ。ミセス・レミントンのお葬式だった。
重要なシーンなのにおもしろポイントが多くて困る(笑)
まず怖がってて縮こまってるリトルトムが可愛い。
「彼女は、よりよい場所に行きました?…ディズニーランド?」と言うアルヴィン。トムはその言葉の意味を理解してる。ここの万里生アルヴィンのDisney Land?の発音がやたらいい(笑)
ここで二人は、冒頭のやり取りを経て、どちらかが死んだら弔辞を書くという約束をして、契約書を書く。
約束をしたらすぐ帰ろうとするトム(怖いから)を「待っ!て!!!!」引き留めるアルヴィン、力強い。両トムの肘にあざができないことを祈ります。私が見た回では平方トムが「ほんとに痛いんだけど…」ってちょっと漏らしてた(笑)
契約書と言えばどうしてもよぎるホリ〇ロの某二人ミュージカル。なんとかミー。
アルヴィンが読み上げて、トムが書く。
「私、トーマス・ウィーヴァーは、アルヴィン・ケルビーの弔辞を書くことを誓います。どれだけ仲が良かったか発表します。どれだけ愛していたかも。逆もまた然り。どちらか先に死んだ方のを書く。もし約束を守らなかったら、その場で死んで朽ち果てるー!」「アルヴィンは、トム・ソーヤの最後の一節の盗作を倒錯した」
この「どれだけ愛していたかも」のところでトムが筆を止めて「君、女の子だったの?」って笑って言うところ、つらい。アルヴィンすごく戸惑って、笑ってないんだもの。アルヴィンはトムをちゃんと愛していた。だからトムが先に死んだらその想いを話したいし、自分が先に死んだらトムに自分への想いを話してほしい。愛する=男女の恋愛だと思い込んでて、気恥ずかしくなってついつい笑ってしまった、幼いトムの無邪気で残酷な一言。「いいから書いて!」と言って、なんだかんだ書いてくれたのは、アルヴィンにとって救いだっただろうな。
田代平方ペアふたりとも汗だくで書いてる間も汗がポタポタ滴ってた。サインするとき「アルヴィ~ン・ケルビ~」みたいな言い方してて可愛い。私が見た回で、汗でくっついちゃったのか、万里生アルがサインしたときビリっていって「あ、破けちゃった」って言ったのも可愛かった。

【むかつくぴらぴら虫】
「バタフライ効果」のことを嫌でも考えさせられるシーン。蝶ばっかっり追いかけてないで、年頃の男の子が好みそうな雑誌を読め、普通になれとトムはアルヴィンに訴える。「普通になれ」というのは、トムなりの優しさ。変わり者のアルヴィンがいじめられないように。
とはいえトムだって小さい頃は、誰も知らないクラレンスの仮装でハロウィンパーティに出るような、少し変わった子だった。もしかしたらそれがきっかけでトムは少しずつそれを自覚して、できるだけ周りと同じように、普通になろうとしてたのかもしれない。なのに相変わらずアルヴィンは変わった子のままで、それが心配だった。アルヴィンは自分が「個性派」だってわかってて、その上で周りにどんな風に思われてもかまわないといったような感じだったけど。
二人で下手で蝶を見つめてるとき、音楽に合わせておしりを振ってる万里生アルヴィンが国宝級に可愛い。
ミス・エイプリルの写真を見せられた時の反応。
万里生アル→「寒そうだよ」マジで興味なさそう。
太田アル→「彼女、居心地が悪そうに見える」何か裏にあるものを感じ取ってそう。
「小さな蝶の羽ばたきが世界を変える可能性があるなら、僕はどうなんだろう」と、指を、手を、腕をバタバタさせるアルヴィン。万里生アルと太田アルで動きが全然違ってて可愛い。
このあと、高校生になっても幼いころと変わらずハロウィンパーティに母親の幽霊の仮装をしていったアルヴィンは、クラスメイトのドニーにいじめられる。トムが助けに入るが、ドニーはアルヴィンの母親のローブを川に投げ捨て逃げてしまう。ローブを捨てられた時、牧島トムはかなり限界まで腕を伸ばしてキャッチしようとしてた。

【アルヴィンが考えていたこと】
これまでアルヴィンとトムで共有していた時間の物語だったけど、ここでアルヴィンだけの、トムの知らない物語が挿入される。
アルヴィンがどうしてずっとママのローブを大切にしてきたか。万里生アルヴィン、すごく遠い目をしていて切ない…歌声がいい…。
ママのお葬式。借りたネクタイ、お花に香水。そんな細かいことは覚えているのに、ママのことはどんどん忘れていってしまう。それでも人は生きていく…。

【神の偉大な図書館②】
もう一度試してみる?というアルヴィンの言葉から、「遅刻だよ…」から繰り返し。
トムは、アルヴィンの父親のために弔辞としてジョン・ダンの詩を読み上げた、と説明する。アルヴィンは喜んでいなかった。明らかに。「見せて」と言われ、書いてきた弔辞をアルヴィンに手渡すトム。
平方トム→書いてある面を外側に向けて渡す。
牧島トム→書いてある面を上に向けて渡す。
トムに、トムの言葉で書いてほしかったのに、他人の作品の引用を書いてきたトムを責めるアルヴィン。
ここで、1876年のリフレイン。書かれた文字は煙のように消えはしない。時を超えてどこまでも旅をする。こんなの書けたら格好いいな…。
こんな気持ちで小説家を志した瞬間の歌を、自分の言葉で弔辞が書けなかったシーンで歌う。なんてつらい…。

【素晴らしい仕事】
大学の願書の課題である短編小説の感想をあるに求めるトム。
「もし、僕がこれを気に入ったら、君はこれを提出する」
「うん」
「もし、大学がこれを気に入ったら、君は合格する」
「うん」
「合格したら、君は町を出る」
「うん」
「もし僕が、気に入らないって言ったら?」
「状況が変わる」
「君の運命は、僕の手の中だ」
ここのやり取りがとても好き。黄色い封筒を抱きしめてる万里生アルヴィンが本当に天使みたい。
トムは作品を読み上げる〈バタフライ〉
それは蝶の海への憧れと、蝶の小さな力が世界を変えるという、かつてアルヴィンが熱く語っていた「バタフライ効果」について書かれていることは明白だった。無自覚にそれを書き、それをアルヴィンに見せてしまうというトム。なんて残酷。
バタフライ、ホリプロコンで万里生くんが歌ったのを聞いて、大好きでCDでも繰り返し繰り返し聞いてたんだけど、こんなにしんどい曲だと思ってなかった。これからどんな感情でこの曲聞けばいいんだ。
この作品をアルヴィンが気に入るかどうか、それもバタフライ効果だし、二人の大切な映画『素晴らしき哉、人生!』も、ジョージ・ベイリーという存在が世界を変えたという描写があって、これもバタフライ効果。
アルヴィンはトムが語るのを最初はニコニコしながら聞いていたが、徐々に表情をなくしていく。アルヴィンは、トムがこの町を出ていく予感を察したように見える。蝶の夢は、そのままトムの夢だ。トムはこの町を出ることを夢見た。そしてそのきっかけは、自分がトムに本を選んだから。そして、自分がバタフライ効果という物語をトムに与えたから。自分の行動が、大好きなトムの人生を変え、結果的にトムを自分から離れさせるきっかけになってしまった。じゃあ、僕の人生は?僕はこの街にとどまったまま、ずっとこの本屋にいるんだろうか?僕にバタフライ効果は起こるのかな…?いろいろな気持ちが巡る。
表情が消えるタイミングは万里生アルヴィンと太田アルヴィンでも違うし、日によってもちょっと違ったりする。2番サビ「一緒に行きませんか?」「僕は蝶〜」とか「蝶は海を夢に見た」とからへんかな。
語り終えたトムに対しアルヴィンが発した「送れば」という短い言葉は、表面上でさえも取り繕いきれないほど当惑したアルヴィンが、精一杯考えて、必死になって絞り出した4文字だったのかも。
ここで、平方トムは差し出された封筒と一緒に万里生アルヴィンの手もがしっとつかむんだよね。でも歌うのは「この瞬間、覚えてない…」
トムは大学に合格した。街を出る。

【滝を越えて】
トムの旅立ちの日、滝に向かって枝を投げるトムとアルヴィン。トムの投げた枝は必ず滝へと吸い込まれ、アルヴィンの投げた枝は石に引っかかってしまう。「それが象徴していることは極めて明白だった」
トムは成功して町を出る。アルヴィンは、父が病気になり、町に留まり本屋を継ぐ。ここでのアルヴィンは、まさしくジョージ・ベイリーだ、とトムは言う。
「さみしくなるね」というアルヴィンに対し、トムはさっぱりした返事。アルヴィンはもう一度「さみしくなる」と言うが、「さっきも聞いたよ」と茶化されてしまう。
相変わらず枝が滝へ届かないアルヴィンに、トムは「ジョージ・ベイリーには、枝を投げる練習が必要みたいだな」と言って頭をくしゃくしゃに撫でる。瞬間、全ての音が止まり、アルヴィンはトムに抱きついて、キスをした。首筋、耳の下あたり。初見時の衝撃といったら…。万里生アルヴィン、すぐに離れたけど、撫でられた頭と、キスした唇を、呆然とした表情で触ってた…。
何事もなかったかのようにまた枝を投げるアルヴィン。今度は、滝へと届いて、アルヴィンは喜んだ。「滝越えた!」
最後に枝が滝へ届いたのは、どういう意味なんだろう。トムは出ていき、アルヴィンが留まる事実は変わらない。アルヴィンのトムへの気持ち?だけどきちんと言葉で伝えたわけではないし、完全に届いたとは思えない。『素晴らしき哉、人生!』の中でも、屋敷の窓に石を投げて、窓が割れたら願いが叶うというシーンがあるけど、もしかしたらアルヴィンも、何か願い事をしながら枝を投げていたのかも。

【初めてのさよなら】
途中で万里生アルヴィンがカメラ構えて平方トムが謎のダサいポーズして写真撮るシーン、某作品の新聞記者がよぎる(笑)。そして平方トム、ポーズはダサいのにスタイルが抜群にいいからかっこよく見えてしまう。腕も腰も脚も美しい。罪。万里生アルヴィン、このあと自撮りもしてた。トムを入れて自撮りでツーショット撮りたかったのにトムがすいっとどっか行っちゃうから、ちょっとムッとしてた。でも、たぶん、二人が写った写真が撮れたのかな。
別れ際にトムがアルヴィンをハグしようとしたとき、アルヴィンが「香水、つけてるの?」と言って離れるがつらい。どんどん昔と変わっていってしまうトム…。このあと結局ハグしないんだもの。

【ここが始まりの場所】
クリスマスに帰省してきたはいいけど課題に追われるトム。周りでちょこまかしてるアルヴィンが可愛い。
「何かの本で読んだんだけど、雪の欠片の総数は10の24乗と言われてるんだって。ゼロが24個もつくんだよ。その数は一般的に無限ともいわれてる。その無限の多様性を舞い上がらせるってのはどう?」
「ノイローゼの症状は、自分の仕事が重要であると思い込むことだって聞いたよ」
こういうところを聞くと、アルヴィンは賢い子なんだなと思う。どこかで聞いたこと、何かで読んだこと、詳細に覚えていて、会話の途中で引っ張り出してくるのが上手い。トムはこういうことに気づいてて、少なからず劣等感を抱いていたのかも。見ないふりをしてただけで。
「スノーエンジェルを作る伝統を一人で守ってるからねー!」って飛び出して行くアルヴィン可愛い。ベルが鳴って「ベルが鳴るのは、天使が翼をもらった合図なんだ!」←『素晴らしき哉、人生!』の中のセリフ。
スノーエンジェル、(ホリプロコンCDの「雪の中の天使」を聞いてて)クリスマスのオーナメントとか置きものみたいなものを飾り付けてるんだと思っていたけど、やっと意味が分かった。ゲネ動画見て、寝転がって何やってんの?とか思っててごめん(笑)。
ズボンに入った雪を真上に投げ上げるもんだから全部自分にかかっちゃうアルヴィン。
なんやかんやあって(つい万里生アルヴィンばっかり追ってしまいトムの歌詞をあんまり聞けない)、トムもジャケットを脱いで外に飛び出し、雪合戦をして二人で寝転がってスノーエンジェルを作る。「実演ありがとう!そこをどけ」で起き上がったあと、おしりに雪がついたまま真面目ターンに流れ込む平方トムが愛おしい。牧島トムは立ち上がった時に自然に一払いしてた。このシーン楽しくて可愛いから永遠に続いてほしい。

【その次のさよなら】
トムはサラという女性をアルヴィンに紹介した。仕事仲間で、彼女で、一番のファン。編集者で、俺の小説を雑誌に載せた。アルヴィンはさみしそうな顔をする。
サラに会うことを、忙しいんだと言ってやんわり拒否するアルヴィンのことを、トムは「サラが気に入らなかったみたいだ」という。
「違う。彼女は本当に素敵だよ。すぐに、君に身を固めさせるだろうね。結婚して、家を買って、犬を飼って、子供を持って。彼女、僕の名前を付けてくれるかな…犬にだよ!」
しんどいポイント。「君に身を固めさせるだろう…子供を持って」→男であるアルヴィンには絶対不可能なこと。犬にだよ!という冗談で、想いをひた隠す。
アル「幸せそうで嬉しい」
トム「悲しそう…」
ここの対比とてもつらい。見えてるじゃん、気づいてるじゃん、トム!

【無害で無邪気な軽い一押し】
アルヴィンの父親の体調が悪くなって療養所に入ることになり、アルヴィンは本屋を引き継ぐことになった。書類の手伝いのためにトムは帰ってきた。
平方トム→コートに袖は通さず羽織るだけ
牧島トム→多分袖を通してきてたと思う。
「ベルが鳴るのは?」とトムが明るくドアを開けるが、アルヴィンは無反応。トムのちょっとした冗談にも反応しない。
万里生アル→その辺の書類を興味なさそうにいじくって紙飛行機を作ってる。この紙飛行機は全然飛ばなくて、アルヴィンの手を離れた瞬間しゅんと落ちていく…。
太田アル→ジャケットを脱いで膝にかけて座って力なく俯いてる。
「大人になったみたい…君になったみたいだ」このセリフつらい。
この本屋、どうするんだ?と問われても答えられないアルヴィン。「今まで選択肢がなかったから」
ここにいて一緒に考えて欲しいと言うアルヴィン。トムが答えない間に、どう?クリスマスもいていいよ!昔みたいになるね?と声が弾んでいくアルヴィン。そんなアルヴィンに、トムは(やることがたくさんあって、3作品の契約が、サラが、…)いろいろな考えが巡るけど、とても言えない。こぼれたのは「こっちに出てくるのはどうかな?」

【僕の独立記念日】
「ジョージ・ベイリーが町を出る!僕やったとこないよ!」
俄かに浮足立つアルヴィン。パパは信頼できる人に任せて、店にはクリスマス休暇の看板を出した。トムは列車や部屋の手配を全部やった。それでも、アルヴィンから毎日電話が来た。舞台上手で電話で話す万里生アルヴィン、なんとかミーか???
興奮が加速していくアルヴィンに対し、トムは仕事は行き詰まっていて、実はサラと婚約していて、サラにアルヴィンが来ることを伝えていなくて、状況が複雑で…追い詰められていく。
「ぼーくーのーどくりつきねーん……びーーーーー!」
万里生アル→机の上で波乗りしてます???
太田アル→ジャケットをバタバタさせて、風を受けてる。
ついにトムのいる町に到着したアルヴィン。トムに電話をする。
「来たぞトム!ついに!」
「こっちに来るな!」
「…………なんで?」
「時期が良くない」
一瞬で表情が消えるアルヴィン。

「さようなら、アルヴィン」
「さようなら、トム…」

この「さようなら」は、もしかしたら現実では言えなかったんじゃないかな。トムが「関係は知らずに変わる…」と歌っていたように。どちらかが意図して追い詰めたとか離れていったわけではなく、お互いに少しずつ変わってしまった。すれ違ってしまった。
トムは「ちゃんと説明させてよ」と、一つの物語を取り出し、現実で伝えられなかった真実を説明しようと試みる。

【二人用のテーブル】
アルヴィンとは共有していない、トムだけの物語。
サラと食事に来ているトム。そこで、結婚を延期しようと伝える。大丈夫?スープひと口しか飲んでない。ワインも……ってそりゃそうだろうがよ。食器を選ぶ段階まで進んでいて、高い店で二人で食事、もう結婚したもの同然のこのタイミングでそんなこと言われたら、とても食べられるようなメンタルじゃいられない。サラとのその後は描かれないけど、どうなったんだろうね…。
「ここが好き」と、自分の好きな店で婚約者に結婚の延期を伝えるってどんなだよ。好きな店を辛い店にする選択をしなくたって、他に店はいっぱいあるはずなのにね。トムなりの罪滅ぼしの表れか。アルヴィンとサラを傷つけてしまう分、自分も同じように傷つかないと…みたいな。自分勝手だ…。まあトム本人はそんなこと考えてなくて、無意識だろうけど…。

【お金と賞讃】
友達も婚約者も犠牲にして、環境を整理して、トムは目の前の仕事に集中できた。でも集中しようとすればするほどアルヴィンの無邪気な賞讃が聞こえてくる。
万里生アルヴィンの「すごいよね♡」目が笑ってなくてこわい。
トムは授賞式でスピーチをしている。スピーチの中では、「作家はパイプで、ただの仲介者です」「僕の頭の中には何千もの物語があって、僕に書いてもらうのを待ってるんです」という発言や、これまでアルヴィンと過ごしてきた物語に着想を得た作品のタイトルがいくつも登場する。トムの成功には、アルヴィンの存在が不可欠だったことは明らか。
「一人でここまで来たなんて、誰が思う?」このアルヴィンの煽り()もまた凄みがある。笑顔なのがより怖さを増す。目が笑ってないのよ。
感謝を伝えずにはいられません、と言って出版社やエージェント、そして最後に…読者に感謝を伝える。そりゃ授賞式のスピーチで友人の個人名なんて出したところで…とは思うけど「支えてくれた友人達」ぐらいのことは言えたと思うのに、と個人的には思う。自分の存在がなかったことにされたように感じたのか、アルヴィンの顔から笑顔が消えた。
「すごいよね…」

【雪の中の天使(書き途中)】
小説「雪の中の天使」を書いているトム。だけどなかなか言葉が出てこない。
アルヴィンから、会いたい気持ちがいっぱい詰まったクリスマスカードが届く。帰ってこないの?新作は書いてる?会いたいです。愛を込めて。
書けないトム。また、クリスマスカードが届く。愛を込めて。
その翌年、また翌年も、アルヴィンからはクリスマスカードが届く。「また次のクリスマス、また次のクリスマスカード…どうして返事をくれないの?」「書いてよぉ…」最後の年は「ケルビー家より」だった。もうここのアルヴィン泣きそうというか泣いてて私も泣いてる。
カードはヒラヒラとこぼれ落ち、トムに届かない。トムの家に届かないわけではなく、トムの心に届かない。たまにトムの机に落ちたりトムの体に触れて床に落ちたりすることもあるんだけど、その時は余計に辛い。あんなに近くまで届いたのに、見えてない、見てくれない…。
このシーンではアルヴィンが、行き詰まってるトムの後ろでせっせとクリスマスの飾りつけをしてる。12/23万里生アルヴィン、赤×金のティンセルガーランドが絡んで、階段の手すりに引っかかり、思ったところに飾り付けられずやり直し、「たいへん、たいへん…」と、ちゃんとアルヴィンらしく言いながらはしごへ(少し足を滑らせる。気を付けて…)。3枚目のクリスマスカードを出すシーンに間に合わず、はしごに上って飾り付けている状態のまま「メリークリスマス、トム」と3枚目のクリスマスカードの内容を読み上げる。心なしか指揮の音出しのタイミングも遅らせてたように思うし、平方トムのセリフの間もいつもより長く取ってる感じがした。経験豊富な万里生くんの的確な判断、バンド含む共演者の柔軟な対応、すごく”生の芝居”っぽくて良かった。ハラハラした。

太陽が隠れ…太陽が隠れ…太陽が隠れ…………。
結局、アルヴィンが亡くなるまで、この作品は完成しなかったんだよね…トムはクリスマスカードすら書けないまま。
「「私たちはアルヴィン・ケルビーの人生を称えるために集まりました」」ここで二人の声がビタッと合うの、本当にすごいよね。兄チームの経験値と信頼。
トムの焦燥感が加速する。アルヴィンとトーマスがこれまで過ごしてきた物語のセリフが繰り返される。トムはここで初出のセリフもある。頭の中ぐちゃぐちゃでめちゃくちゃしんどいシーン。

【神の偉大な図書館③】
「遅刻だよ…」から繰り返し。
これまで2回とも、トムが限界で語り終えられなかったシーン。今度は、父親の弔辞が要約ではなくトムが引用した詩を含めて全部読み上げられる。
「これだけ?」
「少ないことは豊かなことだ。でしょ?」←ここ、そうだろ?とかでなくて、でしょ?なのずるい。なんとなくトムっぽくない言い方なのに、アルヴィンの前のトムはこういう言い方をするんだよねって自然に思える。
ただの引用じゃないか、僕は君に頼んだんだ、書こうとしてくれた?アルヴィン責められ、もう一度書いてとせがまれて、限界になったトムは、言ってはならない一言を放ってしまう。「君のお父さんは優れた言葉で自分について話してもらえてありがたいと思うべきだ!」
小さな町で本を売って生活してても、壮大な物語は生まれない(、だから君の父親の物語は書けない)、そう言うトムに、アルヴィンは「僕は小さな町で本を売って生活してる。そして君は、ここ(=小さな町)での出来事(=アルヴィンと過ごした時間)を紡いで素晴らしい仕事につなげたんじゃなかったの?」と言う。痛いところを突かれた、というような表情を見せるトム。だけど、認められない。認めたくない。賞讃を手放したくない。だけど、自分の言葉では書けない。
パパのためにもう一度書いてほしいとせがむアルヴィンに「無理」と吐き捨ててしまう。

次の作品は?という問いに「…雪の中の天使」と答えるトム。お前この流れでそのタイトル言う? ここまできたら、もう自分でもわかってるだろうに…。
「それは、何もないところから生まれたわけ?」
「俺が書いた!俺の物語だ!」
アルヴィンと過ごした物語が自分の作品になっているという事実を認められないトム。そりゃあれだけ苦しんでまだ続きが書けないのに、着想まで自分のものじゃないと気付かされてしまったら…。
「悪いけど、みんなが待ってるから、僕、自分で弔辞をなんとかするよ」と、アルヴィンは緊張した面持ちで弔問者に堅苦しい挨拶を述べた後、「父の物語を、お話しさせてください」と言って、話し始める。止まらない。話し続ける。つまらない物語を。でも、いい物語を。
万里生アル→口パクパクさせて身振り手振り多めでずっと話してる。すごく穏やかな表情。よく見てればなんて話してるかハッキリわかりそう。
太田アル→口パク身振り手振り少なめ。ジャケットを脱いで、裏側に描かれたパパの姿をみんなに見せる。そこで無事私が泣く。
トムは、即興でできるはずない、物語を生み出すのは大変なことなんだと、アルヴィンができるのか見届けるため葬儀場に忍び込む。そして、話し続けるアルヴィンの姿を見て、自分の作品が全てアルヴィンのおかげでできたと言うことを、やっと受け止められる。だけど、気づいた時にはもう遅かった…。アルヴィンを見ろ…。見てなかった…。気づくんだ、孤独に。いつの間にか手から砂がこぼれ落ちた。「彼を見なかった、二度と」は、自分の気持ちの問題で彼を見れなかった(眩しくて申し訳なくて居た堪れなくて)というのと、そのまま二度と会えなくなってしまった(死んでしまった)の二つの意味かなと。

【おしまい】
床に散らばるたくさんの物語を拾い集め、シワを伸ばしていくトム。アルヴィンのおしまいの物語を探してる。「おしまい。アルヴィン・ケルビーの物語。君が探しているのは、これでしょ?それを知ることができたら、君はアルヴィンの物語の本を閉じることができる」
拾い集め広げた物語をもう一度くしゃくしゃにして投げ捨てるトム。このあとの流れしんどすぎて…。
ここで初めて、アルヴィンが橋から落ちて死んだことが知らされる。冒頭でトムは「皮肉にも」と言って映画『素晴らしき哉、人生!』の内容を話すけど、その皮肉の答えがここで判明する。
おしまいの物語を見せてくれと言うトム。それは、ここにはないからできないと答えるアルヴィン。じゃあ今ここで教えてくれよ!そうアルヴィンに詰め寄るトムに待っていたのは「無理」の二文字。このアルヴィンの「無理」の言い方が、父への弔辞を書き直してって言われた時のトムの「無理」という返答と全く同じトーン。こんな気持ちだったんだよ、と言いたげに。
「俺は知らなくちゃならないんだ。それが俺に欠けてる物語なんだ!」
トムは必死でアルヴィンの物語を探す。見つけないといけない、とでも言うように。
以下、覚えてる限りのアルヴィンのセリフ。↓
「どこかで読んだんだけど、人間の脳は全てを完璧に覚えてるんだって。全ての瞬間、全ての詳細に至るまで。そして、その全てをしまっておく。でも、その場にいなかったことを思い出すことはできない。そして、君はそこにいなかった。これからは、疑問だけが増えていくだろうね」
「なぜ僕はこの町を出なかったのか。なぜ本屋を売らなかったのか。なぜこんなに長い間、君との友情を手放さなかったのか。あの夜、飛び込んだのか、落ちたのか。ジョージ・ベイリーみたいにクラレンスを待っていたのか。僕のところには決して来ないのに…。かつて蝶々の羽ばたきが火星の氷を溶かすと信じていた子供が、クリスマスイブにどうやって凍った川で死んだのか。そして特に重要なのは、それが君とどう関わりがあるのか」
「どれも同じ答えだ」

君との友情を…のところで、椅子にかけてあるトムのジャケットを愛おしそうに撫でるアルヴィン。それが答えだよね…。
「クラレンスは僕のところに決して来ない」というのは、もちろん映画はフィクションで、現実にそんなこと起こるはずがない、と言う意味もあるけど、アルヴィン自身とジョージ・ベイリーを比べての発言だったのかも。ジョージ・ベイリーは確かに夢を諦めて町に留まって、自殺を図ろうとするけれど、商才があって、素敵な恋愛をして、結婚をして子供もいて、支えてくれる友人もいて、クラレンスに命を救われた後は彼を助けるために町中の人が押し寄せる。アルヴィンは、母を亡くし、ミセス・レミントンを亡くし、トムも町を離れて少しずつ疎遠になって、父も亡くなって…。ジョージ・ベイリーみたいなんて思ってたけど、全然似てないじゃない。じゃあ、僕の元にクラレンスが来るはずもないよね。…そんな意味。

「君の頭の中には何千もの物語があるはずだよ。そこにない物語を探さないで」
そう言ってトムの心を溶かしていくアルヴィン。君の周りにある、君の物語がすべて。このときのアルヴィンはとても晴れやかな顔をしていて、トムは目を真っ赤にしてて…。
隣に座って、とアルヴィンが机の上をポンポンと叩いて、トムがそこに座る。
平方トム→少し離れて座る。アルヴィンがニコッとして距離を詰めて肩に寄りかかる。
牧島トム→素直に横に座る。かわいい。

机の引き出しから原稿を取り出すトム。『雪の中の天使』。アルヴィンが読み始めるが、途中で終わっている。
「これでおわり?」今の君になら書けるはずだよ、と言うようにトムを見つめるアルヴィン。
「太陽が隠れ……雪がズボンに入って天使のダンスを待っていた」ここでアルヴィンの顔を見てハッとしたように続きを歌い始めるトム。あの日、スノーエンジェルを作ったアルヴィンのポケットに雪が入った、あの時の物語。
「雪の天使はやがて姿を消す。だけど天使たちは僕に必要ならきっとここに現れる。昔のように。10歳のように」
トムが書き続ける限り、アルヴィンはたくさんの人の心の中で生き続けるんだと思うとめちゃくちゃ泣けてきた…。

アルヴィン「人が死んだら、いいことを言うんだよね」
トム「弔辞っていうんだよ」
↑この二つのセリフだけ、ミセス・レミントンの葬儀場の場面(=弔辞の約束をした場面)とは逆になる。
「君が僕に書いてくれたら、僕が君のを書くよ」
「そんなことできる?」
「あ、そっか…じゃあ、どっちか先に死んだほうのを書くっていうのは?いいよね?」
「うんっていったら、帰っていい?」
葬儀場で約束をした時とは全く違うトーンで繰り返される、全く同じセリフ。
弔辞が書けなくて悩んでいる冒頭、「君の頭の中には何千もの物語があるはずだよ」と突然現れた、死んだはずのアルヴィンに、トムは驚く素振りを見せない。それは、トムがいる現実世界にアルヴィンが現れたからではなく、トムの方から、アルヴィンの世界に入り込んでいったから。トムの方からアルヴィンに助けを求めていた。だからここの「帰っていい?」は、現実世界に「帰っていい?」という意味。もう大丈夫。君への弔辞はできたよ。だから、現実の、君のいない世界に帰って、君の物語を読むよ。そんな意味。
アルヴィンが「うん」と答えると、トムも「うん」と言う。トムはアルヴィンを抱きしめ、キスをした。滝を越えてのシーンと逆の構造。ここで私の涙腺が崩壊。アルヴィンの枝、滝まで届いたもんね。

トムが弔問者への挨拶を述べる。「私たちはアルヴィン・ケルビーの人生を称えるために集まりました」アルヴィンは穏やかな表情で階段を上り始める。トムが「彼は私の親友でした」のところで、階段を上る足を止めるアルヴィン。すごく優しい眼差しでトムを見つめる。
トムはファイルを閉じ、自分の言葉で「アルヴィンの物語を、お話します」
アルヴィンに光が降り注ぐ。
万里生アルヴィンは、照明が消えるギリギリのタイミングでオフマイクで「ありがとう」と言ってる。


結局アルヴィンの死の真相は作中でも語られない。トムはもちろん、観客にも真相はわからない。温かい物語と捉えてもいいし、残酷な物語と捉えてもいいし、恐ろしい物語と捉えてもいい。「そこにある物語を探さないで」というアルヴィンのメッセージが刺さる。人が死んだとき、残された人はついつい「なぜ死んだか」を考えてしまうけど、「なぜ死んだか」ではなく「どう生きたか」を語り合うことが死者を弔うということなのだと思う。
ふとした一言で相手を傷つけてしまい、それがお互いの関係を変えてしまうなんてのはよくある話で、あとから気付いてももう遅い、あの時こうしておけば…と思うことは少なくない。どれだけ最後に心を通わせて温かい物語になったとしても、現実としてトムはもう二度とアルヴィンには会えないし、アルヴィンの本当の気持ちはわからない。でも、それが全て。それでいい。
ある意味ではアルヴィンの忘れ得ぬ人になった。アルヴィンが望んだ形とは、もしかしたら違う形なのかもしれないけど。トムは、時にはアルヴィンの思い出が苦しくなるかもしれない。でもこの弔辞を読んだことが、トムとアルヴィンを温かく包み込んでくれるはず。
アルヴィンが幸せな気持ちで天国へ行けたことを願う。トーマスのこれからの人生が幸せであることを願う。

本当に、作中に出てくるすべての言葉、全ての文字、全ての音が重要で、本当は全部を書き出して追体験したいんだけど、既に長すぎるのにそんなことしたら更に膨大な文章になってしまうし、そもそもそんなに覚えてない。「人間の脳は全てを完璧に覚えてるんだって。全ての瞬間、全ての詳細に至るまで。そして、その全てをしまっておく」なんて嘘だよーアルヴィン!
とても素敵な作品で、私の人生の中でも大切な物語になったので、この作品がキャストを変えながら末永く愛される作品になるといいなと思います。

最後に。私が見たときの田代平方ペアのカーテンコールが可愛かった。
元基くんの挨拶ターンで、万里生くんが床に散らばった雪を拾い集め、お辞儀をする元基くんの上に舞い上げる。元基くんはもっともっと!みたいな感じで両手を広げてた。万里生くんのターンになったら、元基くんが雪を集め初め、なんと万里生くんも雪をせっせとかき集めて、元基くんと一緒にわー!って舞い上げて、素早く雪の中に入ってお辞儀。自分で自分の雪を集める万里生アルヴィンが可愛かったー!
二人で口々に「メリークリスマス!」と叫んで、拍手喝采の中公演は終了しました。

ここに書き記したのはあくまでも私が見た回でキャストがやっていたことで、私が受け取った印象で、私の感想です。
アルヴィンの死をどう受け止めてもいいように、この作品をどう受け止めてもいいと思います。
あなたの心に降り積もった物語を大切にしてくださいね。

メリークリスマス! アルヴィン、トーマス!
素敵な物語をありがとう。


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