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〜 東南アジア縦断鉄道旅 〜(後編)

旅程図・後半はクルンテープ・アピワット・セントラル(バンコク)から始まる

東南アジア縦断鉄道旅の前半ではシンガポール~マレーシア~バンコク(タイ)について綴った.後半ではバンコク~ラオスの区間を綴りたいと思う.

第10列車 MRT Blue Line / MRT ブルーライン

Hua Lamphong/フワランポーン 〜 Bang Sue/バーンスー
運賃 43バーツ(約167円)

2023年1月からバンコクのターミナル駅は旧・バンスー中央駅であるクルンテープ・アピワット中央駅に移転した.しかしフワランポーン駅の方が繁華街に近く利便性が高い.駅移転の救済措置として無料シャトルバスがあり,往路はそちらを利用したのだが,復路は地下鉄を利用してみた.華金帰宅ラッシュ時間帯だったので,車内は大変混雑していたが地下鉄は外国人でも利用しやすかった.

MRTはホームドアがあるので写真を撮ることができない
都市内交通でよく見かけるトークン型乗車券だった

このあとクルンテープ・アピワット中央駅で思わぬ列車で出会った.それは日本の元・ブルートレインだ.車内をのぞき込んでみると日本語で「乗務員室」という文字がある.聞くところによる日本人グループの団体貸切車両とのことだった.

カラーリングが変わってもどことなく日本の雰囲気を感じる
乗務員室は日本語表記のままだった

第11列車 Special Express CNR No.25/タイ国鉄 特急25号

Krung Thep Aphiwat Central Termina/クルンテープ・アピワット中央 ~  Nong Khai/ノーンカーイ
運賃(1等個室貸切) 2,350バーツ(約9,510円)

ここまでの旅程でプライバシーのある空間で過ごす場面がほぼ無かった.そこで個室寝台を利用することにした.しかも1等個室を貸切するという贅沢だ.この列車は新型客車で運転されるため1等旅客のみが利用できるシャワールームがある.温水が利用でき,水勢もそこそこで満足だった.また,食堂車も連結されており,セットメニューが準備されていたのでタイカレーを注文してみた.1等個室は客室までデリバリーしてくれるサービスもあるのだが食堂車の雰囲気を試したかったのでテーブルを利用した.食事代は市中のレストランと比較すると安くはないが朝夕別のメニューがあり,旅の楽しみとしてはアリだと感じた.新型客車には乗客用モニターが備え付けられており,列車走行位置や時刻表が表示されていた.特に時刻表は通過駅の時刻も分かるので鉄道ファンにとって嬉しい機能だ.そんなわけでテンションが上がってしまい,夜ふかし気味になってしまった.

新型車両は乗降口の横にLEDで行先などが表示される
1等個室の車内,発車後に乗務員がベッドメイクをしてくれる
モニターやUSBポート,さらにBGMサービスまである
食堂車は明るく清潔で利用しやすい雰囲気だ
タイカレーの弁当は190バーツだった
朝夕別のメニューのほか軽食類もある
1等車にあるシャワー,水勢はそこそこあるのだが排水が弱いのが難点

翌朝,ウドンターニーの手前で目覚め,慌ただしく身支度を済ませてラオスとの国境の街,ノーンカーイで下車した.

第12列車 Drdinary No.481/タイ国鉄 普通481号

Nong Khai/ノーンカーイ〜Thanaleng/タナレーン
運賃(3等車) 20バーツ(約81円)

いよいよタイからラオスへ越境する.乗車するのは3等客車2両のなんともかわいい列車だが,立派な国際列車である.この列車はタイ・ラオス友好橋の自動車道を通行止めにし,車道の中央をまるで路面電車のように走行する.出入国審査がかなり混雑しており,全ての乗客の手続きを待っていたので40分ほど遅れて発車した.友好橋には両国の国旗が掲げられている.中央部から先はラオス国旗と人民革命党の鎌と槌が印された赤旗がはためいていた.

ノーンカーイの駅名標は国境を感じられてとても良い
国際列車は1日2往復運転されているようだ
切符はタイ国鉄と同じ様式だった
ラオス行きを牽引するのはGEA型ディーゼル機関車だった
駅構内はまるで貨物ヤードのようだ
タイで最も一般的な3等車だ

なお,タナレーン駅はビエンチャン市街地からかなり離れており,バスなどの公共交通は皆無だ.個人的に「ロカ(LOCA)」という配車アプリが便利だと感じたので事前にインストールしておけば役立つだろう.この旅では運良く知り合ったラオス在住の日本人の方に出会い,路線バスのある場所まで送っていただくことができた.本当にありがたい.

ラオスを走る路線バスは日本が供与したものだ

第13列車 中老鉄路(LCR) C92次列車/中国ラオス鉄道 C92列車

万象(Vientiane)/ビエンチャン~万荣(Vang Vieng)/バンビエン
運賃(二等座) 125,000キープ(約979円)

ラオスに到着して最初にするべきことは明日乗車する列車の切符を抑えることだった.中国ラオス鉄道の切符は2023年3月時点,ネット購入ができず窓口へ出向くしかない.市内で切符を購入できる唯一の場所であるビエンチャンセンターへ行ったのだがそこは長蛇の列だった.Laos - China Railway Company Limited のFacebookページで残席を確認することができるのだが,翌日の列車は全て満席.無理だろうなと思いつつ窓口で尋ねてみると意外と切符が取れてしまった.ただし往路しか買えなかったので復路は別途バスを取ることにしたのだがこれは後ほど無駄になる.

中国ラオス鉄道の乗車で最大のハードルは切符の購入かもしれない

翌朝,夜明け前のビエンチャン市内から路線バスに揺られて郊外の鉄道駅を目指した.車窓はどんどん寂しくなり,本当にこんなところに駅があるのかと思っていたら荒野のなかに巨大な駅が見えてきた.

荒野の真ん中に突然現れるビエンチャン駅

中国ラオス鉄道は2022年に開業したばかりの鉄道で,筆者が乗車したときはまだラオス国内でしか運転されていなかった.2023年4月13日から中国雲南省の昆明南駅から直通列車が運転されるようになったようだ.

ここで復路の切符を購入することができ,往復鉄道を利用できることになった.市中からバスの本数が少ないので待ち時間がかなりあったがようやく列車に乗る時間となった.駅に入る前にセキュリティチェックがあり,乗車券とパスポートも確認される.乗車は列車別改札で,かなり直前までホームに入ることができなかった.

乗り込んだ列車は中国鉄道のCR200Jだった.車体のカラーリングこそ,ラオスの雰囲気があるが,車内はほぼ中国鉄道だった.

ビエンチャンの駅ナカは小さな売店がひとつあるだけなので駅前の屋台で朝食を済ませた
空港ターミナルのような巨大な待合室
切符売り場にはリアルタイムで残席が表示されている
レシートのような切符だが手に入れるのに苦労が伴う
車体には中国語とラオ語が併記されている
前面から写真を撮りたかったが係員氏に呼び止められてしまい断念
車内には売店もある,後ほどワゴンで客席にも回ってくる
品揃えはあまり良くない.まともな食事はカオ・チーぐらいだ
車内や駅待合室には給湯器が完備されているのが中国らしい
二等座は日本の新幹線とほぼ同じ雰囲気だった

第14列車 中老鉄路(LCR) K11次列車/中国ラオス鉄道 K11列車

Vang Vieng(万荣)バンビエン ~ Vientiane(万象)ビエンチャン
運賃(硬座) 90,000キープ(約705円)

復路は普通列車(Ordinary)を利用した.こちらは中国鉄道HXD3C型機関車と25G型客車の編成だった.緑皮車は一昔前の中国を彷彿させる.なお,硬座のほかに軟臥(寝台車)もあり,ヒルネができる編成であった.

普通列車の行先表示板は中国とほぼ同じ
硬座は固定式クロスシートだった
先客が下車した後の軟臥を覗かせてもらった

これでシンガポールからの東南アジア縦断鉄道旅は終点を迎えた.国境を超えるたびに雰囲気が一変する国際列車の旅は本当に貴重な経験となった.

シンガポールの鉄道は日本と同等,もしかするとそれ以上に発達しており,とても利用しやすかった.一方,マレーシアの鉄道は車内が大変賑やかで,乗客は思い思いにスマホの動画を大音量で流し,乗務員まで暇な時間にスマホで遊んでいるような大らかさがあった.タイ国鉄では,客務係,運転扱い担当の車掌,保安要員の鉄道警察官が乗務しており,明確な役割分担があった.そのためか車内秩序が保たれていると感じた.そして,ラオスの鉄道は中国式で,車内の雰囲気も完全に中国であった.ゆえに中国・ラオス共同の鉄道でも実質的に中国が主導権を握っている印象を持った.
もし機会があればラオスから旅を再開し,ビエンチャン〜ボーテン/モーハン〜昆明,そして北京〜満洲里/ザバイカリスクを行く「東アジア縦断鉄道旅 」を実行してみたいと感じた.

旅行日:2023年2月


第15列車(おまけ) Hanoi Metro Line 2A/ハノイ都市鉄道 2A号線

Cát Linh/カットリン ~ Yên Nghĩa/イエンギア
運賃 15,000ドン(約86円)

トランジットで立ち寄ったベトナムのハノイには2021年に開業したベトナム初の都市鉄道があった.せっかくなので始発から終点まで乗り通してみたが,全線高架なので渋滞を回避でき,列車や駅はかなり清潔なので利用しやすかった.ベトナムには南北縦断鉄道をはじめとした魅力的な鉄道が存在する.こちらも計画をしっかり立てて巡ってみたいと感じた.

車両は北京地鉄車両装備(BSR)製造だった
イエンギア駅前はバスターミナルになっている

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