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アディスアベバライトレール乗車録

 アディスアベバ・ジブチ鉄道に乗車する前に、アディスアベバライトレールにも乗車した。一部区間しか乗車できなかったが、少し面白い体験もできたので乗車記を綴りたいと思う。(アディスアベバ・ジブチ鉄道については下の記事にまとめている)

 アディスアベバライトレールはその名の通り、エチオピアの首都・アディスアベバを走るライトレールだ。アディスアベバ・ジブチ鉄道と同様、中国の一帯一路構想によって建設され、2015年に開業した。現在はE-W Line(Line1)、つまり東西線と、N-S Line(Line2)、つまり南北線の2路線で運行されている。使用される車両については両路線で変わりないようだ。今回はN-S Lineに乗車した。

アディスアベバライトレールの路線図

 このライトレールで特筆すべき点が、ライトレールであるにも関わらず、地下区間があるということだ。N-S Lineの末端区間である、Menilik Square(メネリク広場)駅~Atikilt Tera(アトキルト テラ)駅の一区間だけは地下を走行する。メネリク広場駅のホームや地下へ下りる階段は地下鉄と同じ雰囲気だった。アフリカ大陸で地下鉄はまだ珍しく、エチオピアは、エジプト・南アフリカ・アルジェリアに次ぐ、4番目の地下鉄がある国である。現在の地下区間はさらに延伸される計画だ。また、他の区間も延伸される予定で、アディスアベバ・ジブチ鉄道のフルレブ駅やボレ国際空港へ乗り入れる計画もある。

メネリク広場駅は地下鉄のような雰囲気だった

 実際に乗車したときの様子だが、まず切符売り場が非常に見つけにくい。夜間ということもあるのだが、7割ほどシャッターを下ろした窓口は営業しているのか疑わしい感じだ。隙間に恐る恐る声をかけ、行き先を告げると乗車駅のスタンプが押された切符を売ってくれた。この切符を持って高架ホームに上がる。駅に改札機はないが、代わりに車掌が検札にやってくるので切符をちゃんと購入しないとトラブルになるだろう。今回は中心部のStadium(スタジアム)駅から乗車した。この駅はE-W LineとN-S Lineの両方が乗り入れる駅で、両路線の列車が10分間隔くらいで運転されていた。乗車したのは20時ごろだったが車内はかなり混雑していた。

ライトレールの乗車券。裏面には購入駅名が捺印されている
ホームに上がる階段の近くに切符売り場があるが非常に分かりにくい
スタジアム駅のホームは真っ暗だった

 市街地ではライトレールは高架区間を走る。昼間ならアディスアベバの都会的な景色が見れるだろう。停車駅などは自動アナウンスと車内モニターで案内されるそうだが、あまりメンテナンスされていないようで、放送なし、モニターもフリーズした状態だった。そのためGoogleマップで現在地を慎重に確認しながら乗車した。

夜なので都心から郊外へ向かう列車はかなり混雑していた
反対に郊外から都心への列車はガラガラだった

 メネリク広場駅で列車の写真を撮っていると、運転士がこちらに何か話しかけてきた。撮影を咎められるのかと思ったが、そんなことはなく、興味あるなら乗務員室を見てみるかというお誘いだった。終点なのでそのまま引上線まで、まさかの入換添乗までさせてもらった。乗務員室は意外と広く、運転台には左手で操作するワンハンドルタイプのマスコンがあった。引上線でエンド交換のため、客室を通って移動すると警備員に何で客が乗ってるんだ? という怪訝な顔をされてしまった(笑)この列車の運転士はライトレール開業時の一期生で、研修のため中国へ行ったことがあるとのこと。開業初期は指導員を兼ねた中国人乗務員がいたので、懐かしい気分だと話していた。乗務員室を見渡すと中国語表記の配線略図が貼られており、今も中国の影響は大きいのだと感じた。この後、運転士とSNSを交換したところ、終点に着くよりも早くフォローリクエストの通知が届いたのは内緒だ。

とてもフレンドリーな運転士だった
乗務員室の雰囲気はこんな感じだった
出典:新華通信社「中国轻轨提升埃塞幸福指数-新华网」
http://www.xinhuanet.com//world/2015-10/04/c_128289659.htm

 アディスアベバライトレール乗車の感想としては、想像よりずっと良い印象を受けた。アフリカで2番目に人口が多いエチオピアにこのような安定した公共交通機関があり、しかも大勢に利用されていることは素晴らしいことだと思う。中国との関係性で懸念される点はあるが、今後の延伸計画に注目したいところだ。
 実際乗車しても、列車はとても快適で、治安面の不安も特に感じなかった。乗車券については、切符売り場が分かりにくい不便さがあるが、有人窓口なので買い間違いがないというメリットはある。また現時点で駅がそれほど多くないので、シンプルな料金形態なのが良いと感じた。

帰りの列車をスタジアム駅で見送った

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