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「tiny company」とても小さい会社の在り方として考えたこと。

「なぜ、量り売りなのか」

 私が量り売りマルシェでやりたかったことは「オーダーカットハム」だ。
会場にスライサーを持ち込み、お客様にオーダーを頂いてからカットするというもの。厚さ、枚数、グラム数などのオーダーができる。切りたてのハムの美味しさを、生産者だからこそ知っている故、この美味しさを世の中に知らせなかったら、何をもってハム屋なのか?と常々思っていた。流通するためにはパックが必要。だけどそのパックは、食べる瞬間「ゴミ」になる。どんなに美しいデザインであっても。その儚さを楽しむために、デザインというのは機能しているけど、私はいつしかそれすら疑問にしか思えなくなっていった。

ハム1枚から買える「量り売りマルシェ」


「ミニマリスト的会社経営」

 私の生き方のスタイルの基本は「ミニマリスト」である。必要なものを必要なだけ持ち、持っているものすべてを把握し、使い切るというもの。だから私が持っているものは、厳選された少ないものだけだ。そして使い切ったら捨てて、買い替えるという生活を10年くらい続けている。
 そして洋服も大好き。昔は好きなブランドの服を「デザインがかっこいいから」という理由で買っていたけど、その時の目的は「着る」ではなく「所有する」ことだった。ただただかっこいい服に、機能性はあまりなく、職場に着ていけるようなデザインではなかった。
 今でもそのブランドは大好き。でも、選び方が変わった。毎日気兼ねなく着られる素材と、デザインを吟味して選ぶようになり、ほぼスタメンで着まわしている。
 食材は一週間分をまとめて宅配してもらい、それを工夫して使い切ることにしている。
買い足すこともないし、残ることもない。予算も決めているので家計のやりくりがしやすくなった。スーパーはほとんど行かないので時間の節約にもなっている。
 このような生活スタイルに拍車がかかったのは、自分が「ハム屋の代表」になったから。とにかく「時間」を上手く使わないと、仕事が永遠に終わらなくなる。しかも私は子育ての現役選手。まだまだそれは数年先まで続く。だからと言って、やりたいことを我慢して仕事だけの生活は絶対に嫌だ。そこで、生活をミニマムかつロジックに組み立てる「ミニマリスト」というスタイルが、私にはとてもしっくり馴染んでいった。

 ミニマムな生活をしていると、思考も段々精査され、考えなければならないことと考えなくても良いこと、やるべきこととやらなくていいことの判断が付きやすくなる。そうなってくると、外部から聞こえてくる「雑音」が気にならなくなっていく。そんなことをいちいち気にして大切な時間を奪われる方が無駄だから。必要な情報だけ入れる。取捨選択を誤らない。

「必要な文を必要なだけ」手にしている


「なぜ、容器を用意しなければならないのか?」

そんな思考の中、生まれたのが「量り売りマルシェ」だった。それまでのジャンボン・メゾンが参加するイベントといえば「焼売り」で、炭火で焼くワイルドなスタイルが売りだった。

厨房は灼熱状態でハードなイベントだった

しかし、自分の代になってからの気候変動が著しく、炭火の前は簡単に50℃を超える事態。女性だけの従業員、しかも家に帰れば家事や子育て、介護も待っている。そんな人たちが、炎天下の中で倒れてしまったら各家庭は瞬時に回らなくなってしまう。自分だってそうだ。ある程度の余力を残していなかったら、家族に優しく向き合うこともできなくなってしまう。
 そこで、外のイベントは辞めることにした。これには両親から「根性なし」と言わんばかりの説教を受けたが、数字をきちんと見せて逆の説得を挑みました。苦労している割には儲からない。これからは苦労して身を粉にして働くのではなく、アイデアで新しいビジネスを考えることが大事、と懇々と説明した。
 それに付け加え、いつも疑問だったのが「容器は食べたらゴミになる問題」。シンプルにいつも思っていた。「なぜ、自分が容器を準備しないといけないのか?」
 今までのサービスとは「過剰なお客様は神様神話」で成り立っていた。その根底にある考え方は「私はお客でお金を出しているのだから、容器はあなたが準備してね」というものだ。でも裏を返せば、「その食事代の中に容器代も含まれていて、その支払った容器をあなたは食べ終わったら捨てています。あなたが一生懸命稼いだお金の一部が、食べたらすぐゴミになっていることを想像できますか?」ということになる。


「これからのイベントは容器持参」

 そこで生まれた「量り売りマルシェ」の容器持参スタイル。主催は私のほかに2人いる。量り売りマルシェを広げる方法はSNSのみ。FacebookとInstagramの公式アカウントで、繰り返し情報を流した。忘れもしない初日。私たちは「本当に容器なんか持ってくるのかな?」と自分たちの企画に半信半疑。だけどその心配は全くの杞憂だった。
 初日の容器持参率は98%。その結果にはさすがの私も泣いてしまった。感動だった。すごいぞ仙台!すごいぞお客様!

 「オーダーカット」で美味しさを、「量り売り」で無駄をなくし、「容器持参」でプラごみの削減を。このスタイルのマルシェは、もう足掛け3年。コロナもあり、スタイルはそれに合わせて進化してきた。今では、山形、岩手で独自のスタイルで展開されているし、私の街でもやってみたいと、多くの方が見学に来られる。ありがたいこと。

 自分の生活を見直すための行動が、ミニマリストというスタイルになり、会社の運営にも反映し、主催するイベントにも影響してきた。今後は、もっとミニマムに会社を経営していくと思うし、自分のやりたいことへの時間を増やしたいと思っているところ。

お客様と作り手が直接対話できることも魅力

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