リスクに飛び込み批判を浴びる、イノベーターという人たち
メディアをやっていて難しいなぁと思うのは、過去に取材した人、推していた人が炎上したりしたり社会的にバッシングを受けている時に、まれに、「悪人を擁護するメディア」というレッテルを貼られてしまうことがあります。
これ、すごく難しい。
イノベーションを起こすタイプの方は、「恐れ」や「リスク」よりも「好奇心」が勝っている、ということがよくあります。
さて、突然ですが、こちらは温泉につかるお猿さん。
かわいい〜〜〜
実はこれ、日本だけで見られる光景らしいですね。「世界で唯一!」と言われている志賀高原の「地獄谷野猿公苑」には、この姿をカメラに収めようと、海外からの観光客が絶えないそうです。(*そして人混みがすごすぎて、かつ駅からは難易度高い徒歩コースで、なかなかハードモードらしいので、行きたい方はよく調べてからどうぞ……!)
(今は各地の動物園でも、こういった温泉を用意しているところは多いですが……)
ちなみに、温泉に入ってるのはメスと子どもの猿だけらしいです。オスは集団を守るために入らないとか、またフッサフサの自慢の毛が濡れてちっちゃく見えるのを嫌がるから入らないとか、そういう理由があるそうです。知らなかった。
🐵
この猿の「入浴カルチャー」を作ったのは1964年に、ある小猿が最初に人間用の露天風呂に入ったことがきっかけだそうです。その姿をみて「これは……」となった群れのおとなたちもお風呂に入っていったのだとか。
今では冬の寒さを凌ぐためにも、定番化してるらしいです。
しかし、このお湯が猿の肌に合わなかったら? 入ったそばから大火傷しちゃってたかもしれません。もしくは、人に殺されちゃってたかもしれません。
最初の小猿が、冷静にリスク分析をして踏み止まっていたら、入浴カルチャーなんて生まれなかったわけで……
みんなが、こんな「気持ちい〜〜〜〜」って時間を過ごすことも出来なかったんですよね。
無知だからこそ、大胆な行動が出来て、結果として文化を作ってしまった小猿。
🐵
スタートアップの世界ではリスクを恐れずに一番に飛び込む人のことを「ファースト・ペンギン」と呼びますが、こんな人が、ちょっと間違ったことをしでかしたときに……
「ほれみたことか!」
って言われちゃいます。突然周囲から、「だから言っただろう」「前々からあいつは危険だと思ってたんだ」「そもそもあいつの経歴は……」という感じで、突然口火を切ったかのように、フルボッコにされちゃう。
イノベーターと呼ばれる人は確かに、見切り発車だったり、熱しやすく冷めやすかったり、傲慢だったり……といった特徴を持つことが多いです。
でもその自由奔放な好奇心によって、私たちが「非常識だ!」と思う世界の扉を開けて、新しいカルチャーやシステムを作ってくれることもあります。
🐵
「イノベーション至上主義者」と「クオリティ至上主義者」は衝突することが多いです。
世の中の空気を読みながらグイグイと進むプロジェクトは、「これ、今までになかったよね」といった斬新なアイデアは注目されつつも、実際の商品の質の低さや、カスタマーサポートの至らなさで炎上しがちです。
逆に、クオリティを突き詰めるプロダクトは、世の中のトレンドとずれていたり、SNS時代のビジネスモデルの大転換によって、マネタイズに苦しみ潰れてしまったりすることが多いです。
私の古くからの友人は(古い美大に通っていたこともあり…)クオリティ至上主義者の人が多く、東京に上京してからの友人は、イノベーション至上主義の人が多いです。
そんな私が運営しているmilieuは、クオリティ至上主義と、イノベーション至上主義のおいしいとこどり、いわば両者の「橋渡し」をしたいメディアです。
あの人のやっている「目新しいこと」が、どうして意義深いのか?
あの人のこだわっている「些細なこと」が、どうして価値があるのか?
そういった両者の文脈に思考を巡らしながら、作品を愉しみながら、歴史にワクワクしながら紡いでいきたいと考えています。
だから、
新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。