見出し画像

【連載エッセイ】嗚呼・・・熟年婚活~[10.Mr.Fに会いにアジアへ]


結婚願望がなかったワーキングウーマンのチャレンジはいかに・・・


未曾有の大震災は、ほとんどの人びとが生まれて初めて経験する事態で、その影響は多方面に大きく広がり、国内での深刻な社会や生活の変化はもちろんのこと、海外にも大きなショックをもたらした。
外国人のFくん、国際線キャビンアテンダントのFくんも、勤務する航空会社の方針により東京便を見合わせたり、減便したりしていたため、東京に来たくても来れない。つまり、私と会うことはできなくなってしまい、Fくんも私も会えないジレンマをかかえながら、日々社会の状況をうかがいながらお互いの生活を送っていた。

私のほうは被災国の人間だから、日々のいろんな深刻かつ重要な情報を確認しながらの生活を営んでいるわけだが、Fくんのほうは「気を付けて」「がんばって」という声をかけてくるものの、「会いたい!」コールが止まらない。
こちらの状況や心情を深く汲み取っていない様子で、聞き分けのない子供のようだ。そんな彼に、ときどき「わかってよ!」と少々強く返すことが増えちょっとストレスになってくる。
これが9年人生に差がある人の深みのちがい?なのだろうか。

話は少しそれるが、歳の差カップルということでは21歳差の夫婦が身近にいる。学生時代の親友は卒業と同時にアメリカLAへ行き、そのまま一生をLAで送っているタフな女性だが、彼女は50歳になろうというときに当時まだ20代の外国人と結婚。今年で結婚11周年を迎え夫婦円満である。

彼らは何年もの間、いわゆる遠距離恋愛のような形で愛を深めていた。当時は彼らの愛のライン通信はスカイプだった。
ある年、クルーズ客船の仕事で彼がマイアミに数日停泊することになったとき、彼女はマイアミまで彼に会いに行き、なんと何年かぶりの再会をした際にプロポーズされ、婚約したのだ。
スカイプでマメに顔を見たりおしゃべりしたり、愛を確かめ合ったりしていたのだと思うが、実際に何年も会っていなかったわけだから、会えた勢いでプロポーズ→「YES♡」というのもわからないわけではない。
結婚すると決めたその後から彼女は、外国人同士のアメリカでの結婚における様々な、そして非常にタフなリーガル面のハードルを奔走しまくって乗り越え、さらに年月を経てとうとう正式に結婚する。
18歳のときからの親友の、彼女らしいあっぱれな結婚を祝福。その一方で、他人の勝手なおせっかいではあるが、大きな年の差夫婦に容易に考えられるいくつかの問題など、私も彼女のまわりも予想して内心心配した。
数年間は、若い彼の「まさか!」と思うような思いこみや無知さで、夫婦の大事なことが話し合いにならずに彼女がほとほと困っていたことも、実際あった。そんなこともあんなことも経て、今はしっかり二人三脚の仲睦まじい愛のある夫婦である。
Fくんの聞き分けない感じに困惑したことが、次元がちがうが、今では親友の当時の困惑と似たようなことだったのかと思った。が、こちらはお遊び・・・

話を戻すと、いつFくんとTokyoで会えるのかわからない。そして、私たちは会いたい。彼の駄々こねのようなメッセージを聞き続けるのもストレスになる。なので、私はFくんに会うため、デートするために彼の国へ行ってみることにした。もちろん、彼の勤務する航空会社の便に乗って。
「私がそっちに行くわ。」
と伝えると、Nice idea!! とすごく喜び、休みを取るからなるべく早く日程を教えて!と、話は早い。
私が予定した日程を伝えると、本当にその日程を休みを取ってくれてスムーズだ。
そんなわけで、Fくんの国を訪れてみることになった。
当時、世界トップと言われるようなその国の経済の勢いは、日本のメディアでも次々と特集されているような時だった。
異国の街歩きと美味しい食事を楽しみにしつつ、メインはFくんと3日間を一緒に過ごすこと。私服の彼も見たかった。
最低限のその国の知識と準備しかしないで、とにかくFくんに会いに飛んだ。

空港で私の到着を待っててくれて、私を見つけて笑顔で駆け寄りハグするシーンをイメージしていたのに・・・ 待ち合わせは、実際は私の便はBに到着したのに、地元のCAである思いこみから彼は到着便の出口をAだと主張し、私は彼と小一時間会えず、不安とがっかりとプチ怒りで、つれない再会のシーンになってしまった。すぐに落ち合えない想定はしていなかったし、当時はLINEなどまだなくて、現地でgmailでメールしあう連絡のとりかただったから、とても疲れた。
そんなふうに3か月ぶりくらいにFくんと再会した。
いろんなごはん屋さんが連なるストリートで、彼のおススメのポピュラーなごはんをあれこれ教えてくれて食べたり、観光で街や寺院など連れて行ってくれる。街はとにかく人がすごく多くて騒音がすごい。それだけで疲れてしまい、街から少し離れた歴史の残る閑静なリゾート地に行きたいとリクエストすると一緒に行ってくれるが、彼はとにかくつまらなそう。
彼のほうも、どうやら私につき合うのも疲れたようで、自分の用事をしたい。というので、彼の買い物に付き合う。彼はイオンモールが大好きなのだ。私は外国に来たのに、わざわざ何時間もイオンモールで費やしたくないのが本音だが、彼の買い物にも少し興味があったし、今後ステディにつきあうことになれば、「ふつう」の買い物は日常のことだから。と思ってみたりして、彼がオーディオを買い物するのに付き合った。
どうやら、彼と私の興味の方向も好みも合わないようだな、、、と内心感じていたが、彼は3日目は朝から心ここにあらず。という態度。私のリクエストで遅めの朝食にレストランに行くが、嫌々付き合っていて、せっかく美味しいはずの食事が楽しくない。お店を出ると、午後から急なフライトが入った。と言い、さっさとバスに乗り込み、前日に買ったオーディオの大荷物を抱えて行ってしまったのだ。
冷たく、妙な別れ方にとても困惑する。
メールでやりとりしているときの、いつもいつも優しくてスイートで前向きな彼のイメージと、リアルに会って時間を共にした彼とは、乖離が感じられた。
私は、なるべく彼を知りたいし普段の時間を少しでも共にして分かち合えればと常に思っていて、成田で「今回は帰りのフライトまでまるまる半日時間があるよ。」なんて時は、いっしょに電車で成田以外の町に出てデートしよう。などと提案して、彼を彼氏のつもりで手をつないだり甘えてみたりするのだが、そういう時はツレナクされる。がっかりな気持ちになるし、なんだか恥ずかしくもなる。
やはり、彼は「港」での逢瀬に情熱を燃やしていて、それ以外の付き合いには興味がそもそもないのかもしれない。

結局ホテルで過ごす時間だけが、スイートでお互いが笑顔でいたようだ。
おそらく終始私のつたない英語に疲れたのだと思うし、彼が興味ないことにつきあい一緒ににいてもつまらない。という感情にシンプルになったのだろう。
私も、しょうがないかな。と思ったし、彼の住む国は(街は)また行きたい印象は薄い。
再訪があるとすれば、食がわかるお相手と美味しい食を楽しむためかな。
というわけで、終始仲良く過ごした3日間と言えない感じになったが、その後も私たちのやりとりは続く。
彼との関係は徐々に割り切るようになって、こうやってお互い外国人の感覚で、容易に会えない。ということと、非常に限られた時間と場所で会うことでスイートなワンナイトが成立するのだ。と承知する。

それがお互いに必要で楽しめるうちは、世界中から便りをくれるFくんとの軽いやりとりを、ストレッチングの感じで続けるのもありかと思いながら、一喜一憂した関係が続くのだ。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?