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2023年1月〜2月に行った展覧会について

noteに記録をつけ始める前に行った今年の展覧会についての覚書です。


1月

出光美術館「江戸絵画の華 第一部 若冲と江戸絵画」

全体の展示数が多くないので、あれっこれで終わりなんだと少し拍子抜けしてしまったのですが、入場制限のおかげでゆったりと絵と向き合うことができたし、さすがの名品揃いで眼福でした。

目玉の「鳥獣花木図屏風」は、図版では何度も見たことあったけど、屏風サイズだからこそ気づけたポイントがいくつもあって楽しかったし、鶴を描いた墨絵の連作「鶴図押絵貼図屏風」は、自由闊達な筆づかいが気持ちよかった。胴や首、羽などは大胆にデフォルメされているのに、脚や眼、頭部は細密に描き込まれていて、こだわりポイントがうかがえる。

若冲以外で印象に残ったのは、谷鵬「虎図」でっかい画面いっぱいに描かれたデフォルメの効いた虎くんの姿が、獰猛なのになんともかわいい。毛並みもふわふわだ! また勝川春章「二美人図」のしどけない美しさと背景や小物の細やかさ、勝川春林「三美人図」のファッションや仕草による女性の描き分け鮮やかさもよかった。浮世絵美人の正面画って初めて見た気がするなあ。

それにしてもどの作品も発色が美しい。金泥で細かに付された模様やハイライトまで綺麗に残ってて、丁寧に保存してくれていて本当にありがとうプライスさんと言う気持ちになりました。

三菱一号館美術館「ヴァロットン ―黒と白―」

ヴァロットンの版画作品に絞った展覧会。
膨大なコレクションの素晴らしさは言うまでもなく、空間づくりや音声ガイドを含めた演出も凝っていて、作品世界にどっぷり浸れる素敵な展覧会でした。図録もグッズも手が込んでるし。

一番画面の完成度高くて惹きこまれたのは「怠惰」で、一番好きだと思ったのは「楽器」連作(ポストカードがなくてがっかり……)。一番印象に残っているのは「これが戦争だ!」連作。
戦争の悲惨さを描こうとしてもオシャレでスタイリッシュな画になってしまうところに作家の業のようなのものを感じてしまった。

限られた展示室のみ撮影可でした
壁の装飾がオシャレだ

千葉市美術館「没後200年 亜欧堂田善 江戸の洋風画家・創造の軌跡」

名前すら初耳で、この画家のことを何一つ知らないまま観に行ったのですが、そんな門外漢にも亜欧堂田善という画家がどのように生まれ、才能を開花させていったのか……まさに「創造の軌跡」がわかりやすく辿れるような展示構成になっていました。

西洋の銅版画を模写した習作や、西洋の図版からあちこち要素を集めて別の絵として再構成した作品などはほぼ全て元ネタと比較できるよう並べてあるのが見ていて面白かった。
絵に対する情熱や構成センスもさることながら、ほぼすべての人物の顔が元ネタと比較してちょっとゆるい感じになっているのが微笑ましくて、印象に残りました。序盤に展示されていた月僊(田善が最初に絵を教わった画僧)の作品も、リアルな背景とゆるい感じの人物のギャップが印象的だったので、影響あったのかな?と思った。

作品だけでなく、銅版画の名所絵が販売されていたときの袋や、田善の銅版画の図版を取り入れた国芳ら浮世絵師の作品なんかも展示されていて、観光地でのお土産としてすっかり定着していたんだなあ、写真のない時代、こういうリアルな名所の風景を持ち帰って見返せるってすごく貴重で嬉しいことだっただろうしなあ……と、作品の需要のされ方も想像できてよかったですね。

チラシで爆発事故みたいな花火の絵(「二州夏夜図」)を初めて見たときは、「な、何事?! 」と思ったものですが、火山の煙を何度も描き直した油絵や、空気の流れすら写し取ってやろうという気概が見える銅版画の描線を見ていくうちに、この人は煙が好きなんだな、流れて消えていくものをなんとか紙の中に捉えようとしていたんだな……と感じられてしみじみしてしまった。本当、よい展覧会でした。

2月

太田記念美術館「広重おじさん図譜」

こぢんまりとした展示ながら、キャプションや章題にいちいちクスッとさせられる、なんとも楽しい展示でした。
ワイワイ話し声が聞こえてきそうな生き生きとした人々の営み。広重はそれも込みで一つの風景と捉えていたんだなあ……と、人物にフォーカスした展示で改めて感じられた気がする。

しかしどのおじさんもキュート! 他浮世絵師のおじさん画も展示されていたけれど、比べると広重のおじさんはみんな邪気がないというか、いい奴そうで和む。おじさんの描き方にも個性って出るんだね。

東洋文庫ミュージアム「フローラとファウナ 動植物誌の東西交流」

東洋文庫所蔵の博物学に関する蔵書を集めた展示で、鮮やかで色とりどりの東西様々な博物画が楽しめたのですが、漫然と見てしまった感じでちょっと印象が薄い。

その中でも印象に残っているのは「花壇朝顔通」「桜花八十種」あたりでしょうか。学術的な観点ではなく庶民の中で趣味として植物観察が広まっていたことが伺えて、江戸の文化って成熟してんなあと嬉しくなってしまった。あと蟹まみれの絵巻「諸蟹図」。題材の面白さと絵としての美しさ!

当たり前だけど手描きなんだよね、すごい
帰りに立ち寄った六義園のお茶菓子「水仙」。
ほんのり柑橘が効いて上品なお味でした。