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ネタバレ感想 花束みたいな恋をした

<あらすじ>

東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生、菅田将暉と有村架純の5年間の恋愛を描く。好きな音楽や映画がほとんど同じであっという間に恋に落ちた二人は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店してもスマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるがーーー。

数パーセントは生き残れる?恋愛生存率

演出で使われる「恋愛生存率」の話が秀逸。恋愛はいっときの花火を打ち上げて(彼の出身も新潟長岡)、好きなものをテーブルに並べて二人で楽しむパーティだ、それでも刹那的なパーティはいつか終わる。恋はみんな死にゆく運命だけど、数パーセントは生き残れると信じる。という話。

きっと、恋愛初期の有村架純は、恋愛生存率って何パーセントくらいなんだろう?と考えた時に、その割合が多いことを願ったのだろう。でも、こんなにも奇跡みたいな恋愛ですら終わるんだから、そのパーセントはきっとゼロなんだ、と最後は思いたかったんじゃないかな。

恋愛生存率はゼロパーセントだと思ってる

私が考える恋愛生存率はゼロパーセントだ。でも、消費期限は伸ばすことができる。伸ばす方法は、まず二人の存在に共通の「やっぱお前いいね!」みたいなことを感じられる趣味があること。この二人で言う所の漫画や小説などのカルチャー。これがあると、グッと心が吸引されるし、時間を長く引き伸ばせる。

例えばこの二人に共通の趣味がなかった場合の期限を2年として、趣味が奇跡的に合うと5年くらいに引き伸ばせると仮定する。(多分不倫とかは生活感がないから、恋愛をチルド室にぶち込んでいるようなものなので、すでになまものではなくて、期限も長いと思われる。が、あくまでなまものではない)

恋愛の最初にパーティは、好きなだけやればいいし、思い出をまずたくさん作るのはみんな同じ。その先が多分重要。菅田将暉は「現状維持が目標です」というけど、会社で昨対100%を維持するためには110%以上何かしなくては維持できないのと同じで、去年と同じ今年は、努力なしではなかなか存在しえない。

恋愛中の二人でつくる、激情アルバムコレクション

「何も起きないと関係は維持できる」が大問題なのだ。この二人はとてもラッキーで、期限は通常2年のところ、5年ある(仮定)。

この年数の間にしないといけないことは「恋愛以外のかけがえのなさを『あくまで二人で』ゲットすること」だったのではないだろうか。

この映画では、酒金女的なトラブルは発生しない。ただ彼がカルチャーとは遠く離れた会社に就職しただけ。どんな二人にも起こりうることだ。

でも、例えば、結婚式をすること。子どもができること。無事に産まれないかもしれないこと。両親を介護すること。どちらかが精神的あるいは肉体的に病気になること。若い二人には、身近ではないことが、生きていると色々発生する。そんな仰々しいことではなくても、互いにとっては激しい嵐が人生に吹き荒れること。そんな時のお互いの立ち振る舞いに信頼を覚えたり、人間失格と烙印を押したくなるような絶望を感じたりする。

こういう激情を、期限内に二人のアルバムにコレクションしていって、出来上がったアルバムが二人ともお気に入り、と感じたら、その時まだそう思えたら、それは二人で手にした「恋愛以外の大切なもの」と確信して一緒にい続けるための糧になるんじゃないのでしょうか。

この二人は「現状維持」を目標にした時点で、やはりアルバム作りをきれい目に仕上げてしまい、あまり魅力ないものが出来上がっちゃったな...たまに見る分にはいいけど、どうもこの先の糧にはどうもならなそう。という結論になってしまったのでは。

恋愛生存率はゼロパーセントだけど、消費期限内に恋愛以外のものを作れる可能性はゼロじゃない。ゼロパーセントになる寸前で心中決意するベティブルー的な刹那性ももちろん魅惑なんだけど(あ、作中のブログ作者はこれで亡くなったのかな)。

恋愛ってチームプレーなんだね。

どうでも話①甲州街道には基本あんまり人歩いていないのに、の謎

甲州街道を二人で歌いながら缶ビールを飲み飲み歩いたり、歌ったり、笑ったり。甲州街道ふらつきの思い出って東京西側カルチャー人間には絶対に馴染みのあるものだと思うんだけど、大体の時間人がまばら。みんなやっていることなのに、意外と同じようなことしている人に出会わない。これが甲州街道は私だけのもの魔術なんじゃないかとまず思う。

どうでも話②カルチャーも年を取る

すれ違いの表現にカルチャーが使われるんだけど、このカルチャーが私(1987年生まれ/33)よりやっぱり5年くらい若くて技が細かい。菊地成孔とか穂村弘はカルチャー共通用語として殿堂入りしたとして、私の時代のカルチャー小説家という文脈なら村上春樹とか若くて川上未映子とかで心を掴んで来てただろうから、長嶋有とか今村夏子と言われて、やっぱり少しさみしくなる。ごめんもうそこまで追いかける元気はないのだよ。

















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