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最近、何かの情報で真贋は別にして、かつて松本隆が筒美京平を松田聖子の楽曲制作に推薦しようとしたという話を聞いたのです。
1980年代、圧倒的トップアイドルに君臨した松田聖子の楽曲においてほぼ一手に作詞を担っていた松本隆。彼女の音楽世界観を構築した立役者の1人です。
松本隆は松田聖子の楽曲制作陣にかつてのバンドメンバーであった“はっぴいえんど”の大瀧詠一、細野晴臣、鈴木茂の3氏と組む事も多く、彼らとのコラボレーションで大ヒットを連発した事から、時代の徒花と評されたはっぴいえんどの復讐劇を見るようだと解析される向きもあり、松田聖子における松本隆のコンセプチュアルな貢献は当時のCBSソニーのプロジェクトチームに一定の影響力を持っていた、もしくは彼からの意見は傾聴に値されていたと推察して全く不思議ではありません。

松田聖子登場以前に作詞家・松本隆を世の中に知らしめた黄金のパートナーこそ天才音楽家・筒美京平です。枚挙にいとまがない大ヒット曲の数々を生み出してきたその黄金コンビにおいて、松田聖子は手掛けていません。
最近の諸説で松田聖子のプロジェクトはCBSソニーの第6制作部で第2制作部に黄金コンビを多用していた名プロデューサーの酒井政利に配慮した所為ではないかと見る向きがありました。しかしながらそれには私は疑問があります。松田聖子のプロジェクトチームは太田裕美を手掛けています。太田裕美について、まさに松本隆・筒美京平コンビは至高の名曲『木綿のハンカチーフ』を始めとして相当数の楽曲制作を手掛けています。
つまり、考え方次第で筒美京平による松田聖子への楽曲提供を促せる環境にあったと考えます。
実は松本隆が筒美京平の楽曲を松田聖子に歌わせてみたいという試みがあったと云います。

ある日、松本隆が筒美京平に「松田聖子に書いてみない?」と訊いたところ、「ボクはいいや…」と回答したとのことです。
松田聖子という完成された領域に自分が加わる事に意義を見出せなかったとする理由等あったのかもしれません。

松田聖子のプロジェクトチームが旧はっぴいえんどの面々と合わせて、重要な楽曲制作陣の柱に据えたのが、松任谷由実と財津和夫でした。ポップ、洋楽志向であり和製変換に長けている点で共通項が重なります。

確かに松田聖子の楽曲群には職業作曲家の色は初期を除き、皆無なイメージがあります。ただ全盛期の松田聖子のハイトーンに筒美京平メロディは案外、相乗効果の効いた凄い楽曲になっていたのではないかと私は思います。

現在日本音楽シーンの生き証人とも言える音楽家かつ評論家の近田春夫氏の解説をご紹介します。

何のジャンルにおいても、もしも…みたいな例えをするケースがあります。
そうした仮想をとかく意味のない事と一蹴する意見もありますが、逆にイマジネーションの原点だと私は見ます。
意味の無いことを誰も論じないからこその考える余地と捉えます。物事のあるカタチについての方法論、その応用で新しい発想に繋がる事もあり得るのです。

締めが硬くなりましたが、時折、夢想する余裕も必要だということです。
今回は筒美京平の楽曲を歌う松田聖子がイメージできるか否かについてでした。

【漁港口の映画館 シネマポスト 次回上映作品(12月21日公開)のご紹介】

『ヒューマン・ポジション』
原題 A Human Position
製作年 2021年
製作国 ノルウェー
配給 クレプスキュールフィルム
上映時間 78分

長編2作目となるアンダース・エンブレム監督が、自身の故郷であるノルウェーの港町オーレスンを舞台に、主人公の心の機微や日常を優しく美しく、静かなタッチで描いていく。
心に傷を抱いた主人公アスタを、エンブレム監督のデビュー作でもタッグを組んだアマリエ・イプセン・ジェンセンが演じた。
敬愛する日本の監督からの影響がそこはかとなく垣間見えて、本作品の軸を感じる。


【『幽霊はわがままな夢を見る』上映情報】

下関リバイバルに続いて1月6日(月)より小田原シネマ館での上映が決定しました!
こちらもよろしくお願い申し上げます🍀





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