おもしろい人文書をみつける。/本編#3


本のジャンルに"人文書"、てのがあります。

紀伊國屋書店の企画「じんぶん大賞」では、人文書が次のように定義されています。

「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍

https://corp.kinokuniya.co.jp/kino-jinbuntaisho-2022/

なんて言われるとなんだか難しそうですが。まぁ要するに文系分野のおもしろ本です。
さて、問題はおもしろい人文書を探すことがけっこう難しいということ。そういうわけで、今回は面白い人文書、自分にとって当たりの人文書を引き当てる方法を3つほど紹介しましょう。


① Twitterアカウントをフォロー(新刊向け)


色んなコンテンツを効率的に探索する方法のひとつに、定点観測式があります。自分と好みが似ている人間やメディアを定期的にチェックしておいて、面白そうなものをピックアップする方法です。悪くはありませんが、こと人文書の場合ちょっと苦戦します。ワケは後ほど。
最初のおすすめは、全てをチェックするローラー方式。例えば@Philo_Shinkanは哲学書の新刊を随時お知らせしてくれるTwitterアカウント。1.関心のある分野の新刊情報を発信しているアカウントをフォロー、2.題名で惹かれたものをチェックしてみる、の順で淡々と見つけていきましょう。行く手間はかかりますが、新宿紀伊國屋などの大規模書店に定期的に訪れる、も古典的ですが有効です。

②参考文献を読む(旧刊向け)


この手法はいわゆる芋づる式に基づきます。元手となるおもしろ書籍を1冊用意できれば準備万端。その書籍の参考文献に記載されたものを芋づる式に収穫していきます。
方法①は興味のない分野の当たりを引きやすいものの、大当たり=自分の関心と広く重なるを引く確率は低くなってしまいます。その点参考文献は大当たりがけっこう期待できます。なにせ面白いと感じた本の筆者が面白いと感じた本ですから。
芋づる式の良いところは一度当たりを引けば確変に入れる点。参考文献の網の目を辿ることで、まだ見ぬ面白い本に出会えます。

③ ゲンロンカフェの「人文的、あまりに人文的」イベント


上で定点観測式は人文書向きではない、と書きました。定点観測が意味を成すのは、観測する対象がコンテンツを大量かつ正確に摂取している場合に限ります。大量かつ正確に採取されたデータから、質の高いものを勧めてもらう。これが定点観測式のシステムですが、小説と異なり人文書の場合、キュレーションできるほどのデータ数を保証しているメディアはほとんどありません。だから向いていないのです。
しかし。しかしです。何事にも例外はつきもの。恐ろしい量の新刊人文書をチェックし、確かな選球眼で面白いものを教えてくれるイベントがあります。それがこちら(昨年開催版)。

人文系イベントスペースゲンロンカフェで、半期ないし1年に1度開催されるイベント「人文的、あまりに人文的」。文筆家、編集者である人文書のプロ3人が、期間内に出版された膨大な人文書の中から特に良かった書籍を紹介してくれます。五反田で現地観覧もできますが、独自プラットフォームでのオンライン視聴も可能(放送から半年間視聴可能)で、これだけ見ておけば新刊に関してはバッチリ!
youtube版もあり、こちらは隔週で新刊情報などがチェックできます。無料ですので併せてどうぞ。

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人文書はヘビーで時間がかかるイメージがあるかもしれません。が、もっと気楽に触れていいものです。(この記事では、人文書を読む、とは1度も表現していません。チェックと書きました。目次をみて興味のあるところだけ読む、各章のまとめだけ読む、引用箇所や固有名は読み飛ばす、などなどがチェックのイメージ。)

ここで紹介した方法は、人文書に限った話ではありません。小説も、音楽も、そして映画もこの方法が有効です。ローラー式、芋づる式、そして定点観測式。3つを上手く使い分けて効率的におもしろコンテンツを掘り当てていきましょう。

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