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祝銀獅子賞受賞!黒沢監督が惚れ込んだ旧グッゲンハイム邸と『スパイの妻』

 映画館の席数制限が9月19日に排除されるというニュースに、安全面で100%手放しで喜べないという映画館の声も耳にする中、久々日本映画界に明るいニュースが飛び込んできた。イタリアで開催された第77回ベネチア国際映画祭で、黒沢清監督作『スパイの妻』が、見事銀獅子賞(監督賞)を受賞したのだ。

 黒沢監督が初めて神戸で撮影したという本作。元々神戸を舞台にした作品というコンセプトから、『ハッピーアワー』を作るために神戸に移り住んだという濱口竜介×野原位コンビが見事なプロットを書き上げ、黒沢監督を唸らせたという。二人は東京芸術大学大学院時代に黒沢監督の指導を受けた教え子で、優秀な教え子と見事なタッグを組み、太平洋戦争前夜の不穏な空気に満ちた時代を舞台にした見事なミステリーを編み上げている。蒼井優が演じる聡子と高橋一生が演じる夫、優作の真の正義を貫こうとする姿勢は、国の大嘘を認めないという強い意志表明だ。特に聡子の佇まいが、往年の原節子を思わせ、当時の良家の妻らしい芯の強さと言葉遣いの美しさにハッとさせられる。「お見事です」は見習って使いたいぐらいだ。

 さて、いわゆる港神戸より西寄りの海が見える垂水の地にあるのが旧グッゲンハイム邸。現在は森本アリさんが管理している同邸は地元ではコンサートが行われたり、見学もできる市民に愛されている品のいい洋館だ。先日行われた黒沢監督×野原位×森本アリの3人によるトークセッションでは、脚本で洋館と書かれていたものの、当時の洋館を探すのは不可能に近いと諦めかけていたと黒沢監督が激白。今は神戸の北野在住だという野原さんが、黒沢監督に旧グッゲンハイム邸を紹介し、黒沢監督が見学して、その見事な保存具合に歓喜したという。豪華な洋館はたくさんあるけれど、人が暮らした息遣いのある洋館はなかなかないと、この洋館を見つけたことで、映画にできると確信したのだとか。アリさんも、建物を最大限に活用してくれ、とてもうれしいと絶賛されていた。聡子と優作が暮らす家として登場する旧グッゲンハイム邸。映画をご鑑賞の際は、こちらもぜひご注目ください!

(C) 2020 NHK, NEP, Incline, C&I


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