【映画】「リコーダーのテスト」(THE RECORDER EXAM/리코더 시험)と「はちどり」 キム・ボラ監督
キム・ボラ監督の短編「リコーダーのテスト」をMUBIで観ました。27分の短編です。この短編の評価が高かったことが、長編「はちどり」の制作につながったそうです。
そんなことはつゆ知らず、「はちどり」の前日譚なのかな~くらいのキモチで観たら・・・凄かった・・・。もうエッセンスだけ、ギューッっとなってて、瞬間瞬間の緊張感が濃いので時間がたつのが遅い。観るほうの向き合い方というか、そんなものも求められている感じがする。
まったく別の、完成度が高すぎる作品という印象を持った理由を自分なりに考えてみると、そのひとつは、個人的に「はちどり」で一番印象に残っているのが、漢文の先生との出会いと別れだからだ。そこか寂しげではかないようでいてとても確かな存在。どうしても「はちどり」というと真っ先に浮かんでしまう。
一方、「リコーダーのテスト」では、なぜ先生が主人公の人生ではじめて理解者と思える大人なのか、までがじっくり描かれている。ここで彼女には姉と兄がいる第三子という事実が、韓国ではわれわれの想像の及ばないほどに子供の自意識に大きく影響することを実感させられる。
「はちどり」で重要な背景となるのが1994年の聖水大橋の崩落事件。これはソウルでもらったチラシにも、一見ウニに目を奪われて気づきにくいが、しっかり描かれている。
「リコーダーのテスト」の背景にあるのは1988年のソウル・オリンピック。連日のオリンピック報道が彼女や家族のリアルな生活の背景音となっており、大々的に報じられるTVのニュースと、今、家族の目前にある問題とがいかに関係ないか、その温度差が際立って印象的だ。
きっと、大人になってソウル・オリンピックという言葉に触れると、彼女はそのイベントでもなく、その頃辛かったことでもなく、なぜ辛いと感じるのかもわからなかった自分を思い出すのだろう。誰にでもそんな記憶ってあると思う。
この機会にユリイカの韓国映画特集も読み直してみた。韓国映画の今だけでなく、過去からもバランスよくまとまっていて、概観するのにおすすめ。
「リコーダーのテスト」(THE RECORDER EXAM/리코더 시험)
Director Kim Bora
Eunhee Hwang Jeongone 황정원
Father Jung In-gi 정인기
Mother Park Myung-shin 박명신
Release date 23 September 2011
Runtime 27 minutes