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ギンレイLOVE-3 アパルトマン最上階の秘密「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」

監督 フィリッポ・メネゲッティ

CAST

ニナ = バルバラ・スコヴァ
マドレーヌ = マルティーヌ・シュバリエ

introduction

短編作品でも評価されたフィリッポ・メネゲッティ監督による初長編作品。取り上げられることの少なかった高齢の女性同士のカップルを題材に、秘められた恋愛、家族による障壁、人生最後をどう生きるかなど重層したテーマが描かれる。

Story

南仏モンペリエにあるアパルトマンの最上階。向かい合わせの二つの部屋にはそれぞれマドレーヌとニナが住んでいる。二人は単なるお隣さんではなく長い付き合いの恋人同士。夫はすでに亡くしているが独立している娘と息子のいるマドレーヌ。ずっと独身だったニナは、マドレーヌの部屋に自由に出入りする。部屋を売却してローマへ引っ越し、二人一緒に老後を過ごす計画が以前からあるのだが、子ども達にそれをなかなか言い出せないマドレーヌ。それに苛立つニナとの間に亀裂が生じるが、マドレーヌが脳卒中で倒れたことにより、二人の状況は大きく揺らぐ。

熟女も過ぎた人のクローズアップ。皺の美しさ。

自分の顔をスクリーンでアップで見たい人なんているのだろうか?
映画を見ていてふとそういう思いがよぎる。ましてや中年過ぎた人だったらなおさら、それは恐怖に近いですよね。(と共感を求める)
監督の要望で、女優二人ともノーメイクで挑んだ本作品。クローズアップにされても、皺の陰影が美しく表現されていて、リアルにその年代の女性を、いや深い人間性を感じさせる。この映画には、それが必要だと挑んだお二人の女優に拍手。撮影カメラマンの技術にも拍手。

過激、ヤバい女性ニナ、正体は?

二人の性格の違いが、それぞれのファッションや部屋のインテリアに表現されている。
結婚生活と子育てを経て、老境に波風立てたくない価値観のマドレーヌは、ニナとの関係も守りたい気持ちとの間で気持ちは揺れる。
かたやニナはラディカルな女性で、怒りに任せて他人に「レズビアンで何か問題ある?」とか口にするし、目的のためには暴力的な振る舞いもするので、見ていてびっくり!私がマドレーヌの子どもだとしたら、母の老後をこの人にまかせることには不安を感じるかも。
仕事はすでにリタイアしていて悠々自適の様子だったので、何この人?と思ったけど、映画の途中で「昔はツアーガイドをしていた」との言葉。ツアーガイドとしてもこの性格いまいち心配。

アパルトマン最上階フロアの構造がドラマを語る

真ん中にエレベーターの扉。短い廊下を挟んで二つの玄関ドアが向かい合う構造。二人だけの時は両方のドア開けっ放しだったり、片方のドアが閉じられていたり、鍵がかけられていたりの状況が人間ドラマを象徴している。
ドアの真ん中にある覗き穴のアップや、開けっ放しのドアの暗闇などの映像は観客の想像力を刺激してやまない。
わざとらしいライティング無しで、暗い部屋のシーンが多いが、わずかな光の使い方で最大限の効果をあげている。

限られた時間を誰と、どう生きるか。

LGBTQ+をテーマにした映画やドラマが、今や百花繚乱のような状態ですが、根底にその当事者じゃなくても感じる普遍性があることが、人を引きつける要因だと思います。そして若い人を主役にした方が観客を呼びやすいのかもしれませんが、あえてこの年代を取り上げた監督の二人を見る目の優しさも画面から感じられます。年齢や性別を超えた人間同士の繋がりを包み込むような眼差し。そして本作品はセクシャリティの問題もありながら、家族を含む社会規範や一般常識とどう対峙し、老境における限られた時間を自分らしく生きたいと願う多くの人達に出された課題でもあります。


飯田橋ギンレイホールにて
2022年9月10日~23日の上映

しかしショーック!

飯田橋ギンレイホール閉館のお知らせ
詳しくはホームページで
https://www.ginreihall.com/

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