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6月に考えたこと

先月のInstagramへの投稿です。↓

今日は父の日でした。

お父さんのいない人もいる人も、そう言われて思うところはなかったりあったり、だと思います。

ここ最近、ある出来事を見るときに悲しんでいたり苦しんでいる人のことを見逃さないようにしたい、そのように感じることが増えました。

先ほどTwitterでウィトゲンシュタイン研究者/哲学者の槙野沙央理さんが書いていたことを引用します。

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Twitterでは様々な人がジェンダー・マイノリティについて語り、どんな問題があるか発信しているけれど、現実でそのような話が通じることは少ない。そもそも「シス/トランス/ノンバイナリー」という言葉を知っている人がほとんどいない。

私の範囲では、当事者ないし WOMEN:WOVEN で話す人たちくらいしか、LGBTQ +関連の話が通じない。ある大学の学部生に試しに聞いてみたけれど、「シス」という言葉を知っている人は、100人クラスで1-2人くらいしかいなかった。知り合いの40代の先輩研究者にも通じなかった。

一方で、しばしばSNS上でなされる、マイノリティ属性の強い人たちの存在を脅かすヘイトや差別的言説に対抗していく必要があるが、他方で、日常的に接する人たちに、すごく基本的な説明をしなければならない。この落差がとてもしんどい。

それに加えて、LGBT理解促進法という、マジョリティの特権・価値観・制度を守ることを優先し、現に生きる権利を脅かされているマイノリティをさらに抑圧する法律が可決されてしまった。何を・どこから・どのように対処すればいいのかわからない。

どんなにがんばっても、カタカナの専門用語(「シス/トランス/ノンバイナリー」)が理解をシャットアウトしてしまって、「そんな言葉を使われたらわからない」という反応を引き出す。これはかなり頻繁に見られる反応で、深刻だと思う。

私自身が無知からのスタートで、周囲の人に色々と教えてもらってきたので、今現に基本的な知識がない人に対して「勉強しろ」とは言えないが、それでも、なんでカタカナの専門用語(「シス/トランス/ノンバイナリー」)になると急に消極的になるのかなという疑問は残る。

幸い、私自身の研究において、「使い勝手のいい思考を編み出す」ということを意識的にやっているので、なぜカタカナの専門用語が拒絶の反応を引き出すのか、どうすればこれらの言葉に込められてきた考えにアプローチしやすくなるのかについて考えることはできそう。
「LGBTQ +関連の専門用語を考えやすくなるZINE(byアライの哲学者)」でも作るかな。

もしやるとしたら、私が「この言葉はこういう意味ですよ」と説明する文章ではなく(なぜならそんな資料ならすでに優れたものが山ほどあるので)、なぜLGBTQ +関連の専門用語がしばしばマジョリティの消極的な態度を引き出してしまうのかを考察するものとなると思う。

私は自身の研究で、ある言葉が担う歴史性(公共的なこと)と、ある言葉が特定の使い手によって担わされる身体性(個人的なこと)との両方をうまく分析できるということを目指して活動しているので、少しは役立つことができるかもしれない。

マジョリティのケア・教育・啓蒙をマイノリティの方々にさせるのは不平等だと思うので、シス女性である私がこの仕事に取り組むことはバランスのいいことかもしれない。(とはいえ、本当に死ぬほど金がないのでやるとしてもかなりゆっくりになるとは思いますが)

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みなさん、こちらを読んで考えるところはあるでしょうか。

今回の写真は、先日、母と父と3人で近所で食べた鰻。父の奢りでした。父がいるということにも、高価なものを食べることができることにも、そうではない/そうすることができないケースに考えを巡らせていたいのです。

少し前に読んだ川上未映子さんの小説『黄色い家』。あるいは、読み返している『夏物語』(今日は暑かったですね)。貧困と、階級が描かれています。雑誌「ダ・ヴィンチ」のインタビューで川上さんは、「『黄色い家』でも書いたことだけれど、人にはそれぞれ苦労があって、全員の苦しみをカバーできる問題提起なんてないし、全員が満足する答えもない。(川上さんが責任編集を務めた「早稲田文学」の)『女性号』の定価は税抜きで2200円。ネットフリックス2ヶ月分くらいの金額です。それを買おうと思ってくれるのは、ある程度、意識が高く、文章を読む素養のある人。それがいけない、というわけではないけれど、いわゆるフェミニズム文学からは貧乏な女性が除かれがちだということは、知っておきたいです。」「私たちは常に、何かを、誰かを、とりこぼしている。そのことに、自覚的であるかどうかで、変わっていくものがあるんじゃないでしょうか」と述べていました。この部分が強く印象に残っています。

「ダ・ヴィンチ」は、良い雑誌ですけれど、巻頭に荒木経惟氏の写真が載っています。第312回とありました。ダンサーの KaoRiさんが荒木氏からの性被害を告発したことを覚えている方は、どれだけいるでしょうか。

#父の日 #槙野沙央里 #川上未映子 #ジェンダー #マイノリティ #プライド月間 #FathersDay #LGBTQpride

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