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海外移住と親の介護

カナダの住宅価格が天文学的なので、将来的に日本に帰ることを想定して母に連絡。まだ、QRコードあーだこーだ言っている。

母は実家を孫(私の息子)に相続させたい意向なので、私が相続して弟と妹に金銭補償し、私がカナダにいる間は独身の弟に住んでもらう。と提案すると、母、
「弟は、自宅を売却して施設に入れといっている」
と。

いやいやいや、施設はまだ全然早いっしょ。
大体、今どきの老人施設の入居者さん、相当衰えた方が多い。
昔とは違うのだよ・・・

大金はたいて、比較的自由に過ごせる高齢者住宅に入るのならまだしも、一般的な老人ホームなど今まで自由に暮らしてた人が到底住めるものではないよ・・・
数千万円払って入居しなければならない近所の高級老人施設でさえ、認知症&精神疾患の隣人が住んでいるのだ。出ていってくれて安心したというのに、その人と毎日顔を合わせるなんて、お金の無駄でしかない。

母の友人たちも、80歳前後でいわゆる「サ高住」へ入居したもののほうほうの体で出てきた人が多い。現実は、結構厳しい。
一昔前は、豪華なレストラン、温泉、コンシェルジュ・・・ホテルみたいな施設もあったけど、実際はカフェに集う人たちなどほとんどいない。みんな年を取りすぎていてお話ができるお相手があんまりいないのだ。母の親友も最初はお金持ちの入居者と食事や麻雀を楽しんでいたが、数年で飽きてそこを引き払いマンションで一人暮らししていた。

高級感がある外観、広々とした庭。明るいデイルーム。
お食事も美味しそう・・・
でも、
認知症を発症している方も多いので、施設内を徘徊、奇声を上げる、他人の部屋に入ってしまう・・・日中は穏やかでも夜になると別人になる人がいる。

認知症じゃない人が、認知症の人と一緒に暮らすのはかなり大変だ。
あるグループホーム形式の施設にバイトに行ったときのこと。
入居者は食事の後は、デイルームでぼんやり座って時間を潰すことになっている。それぞれ個室はあるのだが、寝たきりになるのを防ぐために、部屋には戻さず、別に何もすることはないのだが、ただテーブルの周りに座っている。
会話というものは、ない。人はいるのだが、みなさんお互いが見えていないかのように見える。
2,3名は物を探してウロウロしている。
「食事を食べさせてもらってない」「お金を払ってない」と不安を訴える人もいる。私も、初めての現場だし良くわからないので、5分に一回同じことを質問してくる利用者さんにそれぞれ丁寧に対応する。
利用者は全員認知症なのかなぁと思っていたら、一人の紳士が口を開いた。
「大変だね、あなたも」とニヤリ。
うへ、この人は認知症じゃなかったのか・・・
施設に入っているからには少しは認知症があるのかもしれないが顔つきは穏やかだ。世間話をする相手もなく、1日中ソワソワしたり、ウトウト眠っている同じ顔ぶれで毎日過ごす。これはキツイだろうなぁ・・・

施設に入ったら友だちができると思っている人もいるかも知れないが、よほど自立している人たちばかりの施設じゃなければ難しい。しかも年を取ると、引きこもりがちになるから、なかなかデイルームや娯楽室まで来ない。

かといって、マンション形式で玄関も別々で食事のときだけ食堂に降りるという形態では、一人暮らししているのと変わらない。
ある母の知人は、
「夜間はスタッフは常駐してないし、何かあっても誰も来てくれない」
とこぼしていた。それでいて、料金は結構高い。
自宅を売却して入居したので、戻るところもない。
結局、遠方の息子さんを頼って転居し音信不通になった。

ある知人は、軽度の認知症ということでサ高住に入っていたが、大事な薬をちゃんと飲んでいなかったらしく、もっと介護が厚い施設に移動した。
玄関には鍵がかけられていて、外出も面会も自由ではない。気の毒に、何度か脱走したらしい。会いに行きたくても、親類じゃないので連絡もできない。

室内歩行ができれば、軽度の見守りや、食事を提供すれば自宅での生活は可能だ。施設に入るなら、自力でトイレにいけなくなるぐらいになってからでいいのではないか・・・

しかも、今入居できたとして、母は持病もなく認知症もなく元気なので20年生きるかもしれない。いくら年金があるとはいえそんなに長期間施設には住めないでしょう。サ高住だって結構高いのだ。だったら、配食サービスと週1度か2度掃除や洗濯を頼んだほうが安い。

弟は母と同居することによって、住宅費が浮くしむしろ食事を作ってもらえるから助かると思うんだがなぁ。私の大学にボランティアに来ていた方は90歳近い高齢だったが、介護どころか体の不自由な息子さんのために食事作りをしていた・・・うちの母は、スマホは苦手だが、あと10年は大丈夫そうだ。

そもそも、私の弟は非正規で給料も安いから今の生活はギリギリだ(仕事は何をしているのか教えてくれない)。性格は変わっているがとても頭が良いので、起業でも投資でもなんでもできそうだがガツガツ働く気がないらしく、貯金もない。年金の支払いを拒否していたので無年金かもしれず、定年後はむしろ母の年金を当てにした方が良い。みかねた母が同居を申し出たが、気が進まないらしい。いい歳をして母に生活態度をガミガミ言われるより、ボロアパートで自由を満喫するほうがいいらしい。

母がカナダに来てくれたら一番いいのだが、田舎すぎると散々馬鹿にされたし、足が悪くなってしまったのでトレイルやビーチも一切楽しめない。過去に、実家を売却したお金でカナダに家買おう!とそそのかしたのだが、以前は折り合いの悪い家族とのしがらみを切りたがっていたのに、今は故郷を離れたくないという。それに、いつでも病院に行けないカナダの医療が嫌だという。あれ?もうがんになっても治療しないとかいってたのに、どういう心境の変化か?

まあ、いきなり環境が変わって言葉も通じない外国に引っ越ししたら、認知症が一気に進むかもしれない。本人が、冒険好きだったら良かったんだけど、膝を悪くしてから一気に老け込んだ。老後独身で身寄りがいなくて困っているという人もいるが、実子がそばに住んでいても全然使えない・・・そんなどうしょうもないお話でした。


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