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マングローブについて知っておきたい6つのこと

あなたは誰かが「私はマングローブが大好き。」と言うのを、きっと耳にしたこがないでしょう。マングローブ林はサンゴ礁や熱帯雨林、広々とした草原のように、私たちを驚嘆させることも見事だと感じさせることもありません。それどころか、長らくの間、世界の多くの場所で、汚くて蚊がいるマングローブのもつれた根っこはオーシャンビューの邪魔になると嫌がられてきました。

環境の専門家たちでさえ、マングローブの生態学的な役割は、嵐による被害を和らげ、魚に住みかを提供することがほとんどすべてだと考えていました。気候変動の影響によって、嵐の頻度と激しさが増すと恐れられていますが、マングローブは高潮に対して高い防災機能を持ちます。また、マングローブの根は、魚類や甲殻類に住みかを提供するため、沿岸部のコミュニティの持続可能な生活に重要な役割を担っています。

しかし、これらはマングローブのごく一部を説明しているにすぎません。マングローブはもっと多くの役割を担っています。実際、マングローブは地球上でもっとも有益な生態系であると評価されることもあるのです。これには6つの理由があります。


1. マングローブ林は陸地の森林より多くの炭素を貯蔵します

マングローブは、人々が気候変動の影響を切り抜けるのを手助けしてくれます。そして同時に、マングローブは気候変動の原因を緩和してくれます。世界的に森林を保護すると、森林の有する二酸化炭素を吸収し貯蓄する能力によって、気候変動の問題の30パーセントを解決することができるといわれています。そして、マングローブは、大気中から炭素を吸収する能力が陸地の森林よりはるかに高く、同じ面積の土地で比較すると、マングローブ林は地上の森林の10倍もの炭素を吸収します。 

2. マングローブはサンゴの白化を防ぎます

気候変動の最も有害な影響の一つにサンゴの白化があげられます。オーストラリアのグレートバリアリーフでの白化はこの夏、大きな話題になりましたが、実際には世界中の海でサンゴの白化が進んでおり、科学者たちの研究では、海がこれ以上の炭素を吸収した場合、白化がさらに進む可能性があると推測されています。サンゴ礁は海洋生物の基盤であり、サンゴ礁の死は海にとって大災害であるといえます。人々は通常、サンゴ礁と沿岸の森林は異なった生態系として分類していますが、本来自然にはこのような境界線は存在しません。事実、若いサンゴはマングローブの根の中で成長し、また健全なマングローブ林は、白化によって絶滅の危機に脅かされるサンゴの避難場所となります。さらに、マングローブが海洋酸性化の進行を抑えられるかもしれず、それによってサンゴの白化を防ぐことができます。

インタビュー音声

CI戦略的海洋イニシアティブのシニア・ディレクター、エミリー・ピジョン博士へのインタビュー。マングローブの環境保全と気候変動に対して果たす役割を説明しています(英文)

3. マングローブは気候変動対策に有効ですが、気候変動の影響には強くありません

マングローブは完全に陸上でもなく、完全に海でもない境界地帯を生息地としています。そのため、最適な量の海水を必要とします。あまりに少ないと乾燥してしまい、あまりに多いと溺れてしまうからです。海水面の上昇によって、マングローブの生育可能な場所は変わってしまい、マングローブを最も必要としている場所のいくつかでその生存が脅かされています。

4. あなたが食べるエビフライがマングローブ林を傷つけているかもしれません

マングローブは海面上昇の有無にかかわらず、大きな脅威に直面しています。世界中の多くの場所で、養魚池を作るためにマングローブが切り倒されています。主にカニや甲殻類で行われる持続可能な水産養殖は、自然のマングローブ林において実施可能です。しかし、いったんマングローブ林が養魚池に転換されると、コンクリート製の構造物や養魚池に使われる大量の土に魚の廃棄物がたまり、たった数年でその場を使用不能にしてしまいます。マングローブ林が気候変動への適応に対して特に重要な役割を担っているフィリピンでは、現在、マングローブ林と同じくらい多くの養魚池が沿岸地帯を占めています。

養魚池はマングローブが直面している脅威の一つでしかありません。人々は海の景観を良くするためにマングローブを切り倒し、波が運んできたゴミがマングローブを傷つけます。ヤギがマングローブを食べ、フジツボが窒息させます。マングローブにとって生存するのは困難な状況です。

5. 一度消えてしまったマングローブを簡単に植え直すことはできません

マングローブは海岸線を形成し、その形を保持しています。一度マングローブがなくなると、土地は浸食され、潮の流れによって海岸線の形が変わってしまいます。そうなると、元の場所で以前のようにマングローブが成長することはきわめて難しく、ほぼ不可能です。

6. すべてのマングローブは同じではありません

マングローブを植えるときには、その場所にあった適切な種を植えることが重要です。マングローブは単一の種ではありません。「マングローブ」とは、塩水域や汽水域で育つ低木または樹木の総称であり、70種類ほどが当てはまります。それぞれの種類のマングローブには、それぞれ適した特定の生態系があり、その種に適さない場所では生存できません。2013年に台風30号(ハイヤン)がフィリピンの沿岸地域に大きな被害をもたらした後、政府は100万本ものマングローブの植樹計画を表明しました。しかし残念なことに、適した場所と適した種を考慮せずに植えられてしまい、多くのマングローブが枯れてしまいました。

マングローブ林は、気候変動対策で重要な役割を果たします。気候変動の影響に適応するのを助け、大気中から炭素を吸収してくれます。実際、マングローブ林が有するすべての利点を考えると、地球上のどの生態系よりも多くの利益を私たちにもたらしてくれると言えるでしょう。
マングローブ林の脆弱さと、私たちがどれほど多くそれを見落としてきたかを考えると、その真価を真剣に理解するよう務め始めるべき時がきたのかもしれません。


投稿 :アンドリュー・コルブ (Andrew Kolb)、原文はこちら
翻訳協力:CIインターン 名倉麻梨香
TOP画像:©︎ Nandini Narayanan


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