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これ、食べられる!の瞬間


小学生かそれよりも前から、トマトが大嫌いだった。

初めて食べた時のことはさすがに忘れたけど、とにかくあのプチっとした独特の食感と味がダメだった。母親も祖母も「好き嫌いはできるだけないように」というタイプだったが、わたしはそれでも嫌なものは絶対に食べない子供だった。

そんなこんなで嫌いな食べ物はトマトに限らず、蕎麦・にんじん・メンマが嫌いだった。少し大きくなった頃に初めて食べたカツオのたたきも、いまだに食感と匂いがダメで見るだけで吐きそうになるほどだ。


この嫌いな食べ物リストの中でも、群を抜いて嫌いだったのがトマトであった。

こんなに赤くて可愛い見た目してるくせに何だその味は、という感じ。
幼い頭で、いちごはあんなに美味しいのになんでトマトは美味しくないんだろう、とか思ってたのを覚えている。

あれからかなり大人になったけれど、むしろ大人になればなるほど嫌いな食べ物を克服するタイミングなんてものは減っていく。何かしらの好奇心とか興味本位とかで食べたことはあったけど、全滅だった。

蕎麦は1年前に挑戦したところ、突然食べられた。感動した。
好奇心で入った蕎麦屋で、目の前に座っているパートナーに「めっちゃ美味しいじゃん!」と笑いながらぺろりとたいらげた。


妊娠してから数ヶ月経ったある日「ちょっとトマト食べたいかも」と思い始めた。

中学生くらいの時は気まぐれで大きいトマト食べてたな…と思い出しつつ、スーパーのトマトが並んでる棚を見てみた。
目に入ったのはフルーツトマト!その手があったか、と1パック買うことにした。なんとなく、不安と緊張とわくわくという新一年生みたいな気持ちになって面白かった。

「妊娠したら好物が変わる」というのは聞いたことがあったけど、嫌いなものまで食べるようにはならんだろ、と思っていた。
黄色と赤のフルーツトマト。スーパーを信頼しているので洗わずに食べた(正直めんどくさかっただけ)。めっちゃ美味しい。
名前通りフルーツのようにぱくぱく食べてしまう。とまらない。にわかには信じ難いスピードで食べ終えて、その後の買い物ではほぼ必ずフルーツトマトを買うようになった。

「これ、食べられるようになった!」という感動は、大人になった実感というよりもナチュラルに笑みが溢れる感覚である。

なーんだ全然いけるじゃん、みたいなちょっと拍子抜けする感じも楽しくて面白い。何より、美味しく食べられるものが増えることが嬉しい。パートナーに「わたしはこれ嫌いだからさ」と散々言っていたのに、あっさり食べられた瞬間が笑いのネタになるのも嬉しい。

そのうち、にんじんもカツオのたたきも食べられるようになるんだろうか。お腹の子が好き嫌いしてもわたしのように「大人になるまでの楽しみ」として、特に何も気にすることなく好きなものをたくさん食べて大きくなってほしい。

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