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化け物か悪魔か 『桜の塔』(第5話視聴後)

今回は千堂大善(椎名桔平)の“演説”回でした。本作における彼のセリフ回しは、なんか癖になります。前回の記事でも書いたように、“芝居をしている芝居”のような感じなんです。

上條漣(玉木宏)が大善に、父親の自殺の現場にいたのはあなたでしょう、と詰め寄るシーンで、大善は「そうだ俺だ」と事件当日の様子を告白をしますが、やがて高笑いして

冗談だよ。どうだった? 俺の迫真の演技は。

と言います。つまりここはまさに“芝居をしている芝居”だったんですね。

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しかし、漣が仕掛けておいた録音機を見つけ踏み潰した後、今度は「さっきの話は本当だよ」と言います。
何が芝居で何が本当なのか… わからなくなってきますね。
本当だ、と言うのは本当なのかもしれません。
でもなんとなくあと一捻りありそうな気がするんです。

後に捻りがないんだとしたら、大善ってほんっとに悪いヤツですよ。笑
今現在の漣を裏切っただけじゃない。なんの罪もない、父子二人家族の父を失った子である漣を、最初からずーっと騙してたわけですから。
大善っていう名前は単なる皮肉なんでしょうかね。

大善が放った言葉、

俺はお前ごときが倒せる相手じゃないんだよ。

は、相当な自信に裏打ちされていて、その言葉通り、大善を告発しようとした漣は返り討ちに合います。漣の外堀は埋められていたんですね。

「なぜこんなことを」と問う漣に、「出世のためだよ」と答える大善。さらに、俺の本当の貌をよく見ろと迫り、

お前の目にはどう映ってる? 化け物か? 悪魔か?
だがこれは映し鏡だ。自分の出世のためなら他人の犠牲は厭わない、醜いお前の姿だ。

漣がこれまでやって来た事件解決の裏工作を、大善は知っていたんですね。

確かに、表面に現れている行動だけを見れば、漣も“出世のために不正をした悪い人”です。ここで改めて「動機が善ならば悪を行ってもいいのか」という哲学的な問題に突き当たります。(考えるのは視聴者です)

大善が続けます。

言い訳するな。・・・(略)・・・
俺とお前は同じサッチョウの悪魔なんだよ!

同じか同じでないか、第2部で明らかになるのでしょうか。
(サッチョウって警察庁のことですね。薩摩派とか出てくるんでなんか紛らわしいですが)

さて、全くの余談ですが、このシーンで大善が漣を蹴ります。その蹴り方、韓国ドラマでよく見るヤツでした! こう、上から下へ、踏みつけるように脚を蹴る。
政治家が補佐官を、警部が刑事を、えらい検事がヒラ検事を、社長が室長を、みたいな感じで結構あって、主に“まともな組織”の中で行われる暴力として定番っぽい。怪我しても外から見えませんからね。
韓国ドラマではたいてい脛を前から蹴るんですが(そんなことしたら折れない?って毎回心配になる)、大善は膝の脇あたりに行ってるように見えました。これはこれで靭帯やられそうです。

めちゃくちゃどうでもいいことかもしれませんが、暴力ひとつ取っても、どのように表現するかによって、登場人物の心情だけでなく、状況や背景まで表すことができるので、細部は重要だなと思います。


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