怪物 感想

怪物は、誰か1人を表す言葉なのでしょうか。


私は田舎で育ちました。
田舎と言っても住宅街があって、子どもがそこそこ住んでいるような、片田舎です。

田舎ではサイレンが聞こえると人が外に出てくるし、噂はすぐに広まります。

実家に帰れば「○○くんは今××で働いてるんだって」「○○ちゃんのお母さんと××で会ったよ」「○○さん家の犬が亡くなったらしい」そんなご近所話を聞かされます。

自分の変化は望まないけど、他所の変化は娯楽。
そんな世界が私は苦手でした。


この映画は、そんな私の育った町を感じさせるようなものでした。

他所の人間が外から娯楽のように見ていることの内側を見たようでした。

当事者でも1人1人の目線によって見え方が大きく変わってくる。
一見悪事に見えることでも、そこにはその人の正義が、愛がある。
3者3様の視点で紡がれるこの物語は、真実は外側から見ている我々ご近所さんの想像の外にあることを教えてくれました。
当事者にだって捉えられていない真実があることも。
でもそこにはたくさんの愛があることも。

人づてに聞いたことが真実なのか。
自分に見えたものではなく、他人から聞いたことで無意識にイメージを作り上げていないか。


「怪物だーれだ」

予告編で印象的な不気味さを感じさせるこの言葉も、見終わる頃にはきっと印象が変わっているはずです。

本当の怪物は、外から見ているだけの我々なのかもしれません。

そんな我々にできることは、手が届かない出来事には口を挟まない、ということなのではないだろうか。
そんなことを感じました。

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