レコード趣味、はじめました。

 「やっぱりアナログレコードのほうが音がいい」「海外だとCDよりもレコードのほうがかえって売れてるらしいよ」そんな話を耳にする機会も増えてだいぶ経ち、もはや音楽を聴くためのメディアの選択肢はサブスクかレコードかの二択といっても過言ではない今日この頃。わたしも興味を持ってレコード屋にはいってみたりはするものの、何がいい盤なのかわからないし、買ったところで聴くこともできないので、少し覗いては帰るということを繰り返していました。

オーディオを手に入れた!

 それでもやっぱりレコードが聴きたい!という気持ちはありつつも、金銭的なハードルの高さに尻込みしていたところ、転機が訪れます。帰省した際に使われていないオーディオがあることを知ったのです。

 ひっそりと部屋の隅で布をかけられていたのはPioneerのPrivate Pro D8。どうやら祖父が買ったものらしく、ほとんど手を付けないまま放置されていました。カタログをみると店員があとから税込み価格を書き足しているので、89年頃に入手したものだと思われます。別段音楽好きという話を聴いたこともないので、20万円以上するセットを持っていたのは驚きました。

 その場で簡単な動作確認をした上で車で持ってきてもらうことに。断線していたスピーカーケーブルは新しいものを調達し、無事大きなアンプとスピーカーで音楽を聴くことができるようになりました。……レコード以外は。

 そう、レコードプレイヤーは規格が古いために交換針が入手できずプレイヤーごと買い替える必要があったのです。一応わたしはボカロPをやっているのでオーディオインターフェースを持っており、PCからアンプに信号を送ることでYouTubeやSpotifyの音を流して十分有効活用できたのですが、肝心のレコード趣味ははじめられないままでした。

 しかし、せっかくこれだけ機材があるからにはレコードをかけてみたい、という思いが勝り、最初はいいものでなくても構わないと割り切って1万円強のプレイヤーを購入することに。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/264404/

 注文したのはaudio-technicaのAT-LP60X。回転速度の微調整が少々面倒な以外はフルオートで扱いやすいターンテーブルです。針を落とす瞬間の緊張とか針圧調整を気にしなくていいので、気軽にレコードをかけられます。

 かくして少額でオーディオ一式をそろえることができたわたしは、ついにレコード沼に片足を突っ込むことになります。

自分の手でレコードをかけて気づいたこと

 オーディオ一式の隣には、ダンボール2箱ほどのレコードが眠っていました。大半がクラシックや唱歌全集みたいなものでしたが、中には気になるシティポップの盤も。ひとまずこれらを譲ってもらって聴くことにします。

左ははっぴいえんど85年再結成時のライブ音源「THE HAPPYEND」
斉藤由貴とエルヴィスはたぶん違う人が買ったんだろうな……

 実際にかけてみると、振動を溝として刻み、針がなぞって音を出すという極めてプリミティブな原理で音が出ているために、ほんのわずかな状態の違いが音に直結するのがよくわかります。回転が安定しないときはプレイヤーのベルトをかけなおしたり、針にホコリがついていないか確認したり、スピーカーの左右差や盤ごとの音量差を聴きながら調整したりと出音に手を加える作業は楽器のよう。ギタリストがプレイだけでなくシールド、エフェクター、アンプまで通り道全てにこだわるように、レコード趣味の人が線や電源にまでこだわりたくなる気持ちが少し理解できました。

 また、「アルバム」という概念の捉え方にも気づきがありました。「ビートルズ以来長らくアルバム単位でコンセプトがまとまった作品を作るようになった」とか「最近はサブスクやダウンロードで聴くので一曲単位で聴かれるようになった」みたいな話がありますが、レコードにはA面とB面が存在します。CDの体験をもとに考えるとアルバムというのは十数曲通しで聴くものですが、レコードにはB面に切り替える手間がある分、1曲目が2回存在するのです。そのことを最も実感したのがGeorge BensonのBreezin'というアルバムになります。

 このアルバムの中で特に有名でキャッチーな曲は1曲目のBreezin'と4曲目のAffirmationなのですが、サブスクで聴いているうちはなぜAffirmationがこんなに中途半端な位置にあるのかという大きな疑問がありました。これをレコードで聴いてみると、Affirmationは見事にB面の1曲目にあたるのです。(あとサブスクにある7-9曲目はレコードには収録されていません。)多様なメディア、多様な機器で音楽を聴いていると音源ファイルはどんな形で記録されていても同じように思えてきてしまいますが、単に音を記録するものではなく体験としてデザインされているということは意外と重要なのかもしれません。

今後もレコードに関するnoteを書いていきます

 レコード趣味をはじめたことは、わたしの音楽体験を想像以上に豊かにしてくれました。今後もレコードを聴きながら考えたことや、持っているレコードとその入手エピソードについてnoteに書き続けていこうと思っていますので、引き続き楽しんでいただければ幸いです。

▼Lu
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