不老不死って科学の力で何とかできるの?
「不老不死」はいずれ手に入る。もうそんな時代に来ている。
人はみな「若さ」を求めている。いつまでも若く元気にハツラツとしていたいと願っているだろう。
しわだらけになって杖をついて歩く生活が待ち切れない!
と強く望んている人がいれば、それはよほどの変わり者だ。
2024年現在では、不老不死は実現していないし、どちらかというと漫画の世界の話だ。漫画「ドラゴンボール」には何でも願いが叶うと言われているドラゴンボールが存在する。
7つ集めると神龍がでてきて願いをかなえてくれるわけだが、敵であるフリーザは不老不死を願う。
あんなに強いのに不老不死まで手に入れたらどうなるんだ、と肝を冷やすが、結果的にこの願いはある理由でかなわなかった…。
とまあ、漫画の世界ですら神龍に頼る必要がある。先進医療を受けて不老不死がかなうのであれば、フリーザもナメック星に行く前に先端医療を受けていただろう。
しかし、2024年現在、神龍を呼ばなくても「不老不死」を手に入れられる可能性が出てきた。
今回は、その老化研究の最前線に立つ研究や技術、そして私たちの生活にどのような影響を与えるのかについて詳しく探ってみる。科学の力で「不老不死」という夢に向かって着実に歩みを進めている今、未来への期待と共にその実態に迫ってみよう。
老いない動物っているの?
「不老」というのは、単に「長寿」ということではない。今回参考にしたAGELESS「老いない」科学の最前線 著:アンドリュー・スティールの言葉を借りれば、
「無視できる老化」
である。つまり、加齢による能力の低下が無視できるほどに小さいということだ。こんな生き物いるわけない、と思いきや、実は存在する。なんと魚やカメが該当する。
メスの魚は年を取るごとに体が大きくなり、繁殖能力も増す。体が大きければ、当然敵から襲われるリスクが減るし、産卵する卵の量も増え質も高まる。
カメも同様に、年をとっても老いることはなく、何歳になっても生殖機能を失わない。
理由として、魚もカメも年を取って体が大きくなる(カメは立派な甲羅のおかげ?)ことで外敵からの脅威がほぼなくなり、急いで次の世代につなぐ必要がないからということが考えられる。というかその方がメリットが大きい。
環境要因で死ぬことを計算に入れる必要がないのであれば、年長者に子供をたくさん作ってもらった方が効率的である。
私たちは年を取れば老いるというのが当たりまえだと思っているが、年を取ってもほぼ老いない生き物たちがこの地球には存在しているのだ。
ヒトは現時点で老化に抗えているのか?
生物学的にみてヒトは「無視できる老化」は持ち合わせていない。そもそも、不老や不死に近づいていることを客観的に判断することは結構難しい。
たとえ前の世代(親や祖父母)よりも老いにくく、長生きになっていたとしても気づきにくいものだ。80歳で亡くなったとしても、ほぼ平均寿命と同じであるので「不老不死に近づいている!」とは思わない。
では一昔前の人たちと比べて寿命がどう変化したか見てみよう。
実は、ここ200年でヒトは寿命を倍に延ばしている。
2倍だ。200年前の平均寿命は40歳なのだ。
しかも、この寿命の延びは今のところ留まることを知らない(ずっと右肩上がりでいまだに延び続けている)。もう少し具体的にいうと、1840年から世界の平均寿命は正確に毎年3ヶ月ずつ延びている。
ここには医療の進歩はもちろん、公衆衛生の発展やヘルスケアの充実など様々な要因が考えられるが、200年前の人に「寿命が倍になりましたよ!」と伝えたら、不老不死に近づいてると誰しもが思うだろう。
老化をいかに止めるか
老化に抗う術を人類は模索し続けている。そこで、現状老化止めるためにどのような方法が考えられているか、ご紹介しよう。
①老化細胞を消す
老化というのは表面上の老いだけではなく、当然細胞も老化していく。老化が進み、これ以上細胞分裂ができなくなった細胞は老化細胞と呼ばれ、体内に蓄積される。
この細胞ががん化するよりはましかもしれないが、蓄積した老化細胞は炎症作用を引き起こし、周囲の細胞を老化させてしまう。まさに諸悪の根源である。だが、この老化細胞を除去する薬が開発されている。
しかも、なんと人への臨床実験も2019年からすでに始まっている。健康な人が手軽にこのような治療を受けることができる未来はまだ少し先の話かもしれないが、技術は着実に前進している。
②iPS細胞を用いて新しい細胞と入れ替える
iPS細胞は皆さんご存じの通り、2006年に山中伸弥教授が発見した人工多能性幹細胞(どんな種類の細胞にもなれる)だ。
2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。このiPS細胞を使って、老化により衰えた細胞を新しいもので置き換えてあげるという作戦だ。目が見えにくくなった患者の網膜細胞をiPS細胞で作り、入れ替えてあげると目が良く見えるようになるといった研究がある。
ただし、これはiPS細胞ではなくES細胞と呼ばれ、自分自身の細胞から分化したものではないので、自分の免疫システムが新しい細胞を攻撃してしまうという課題もある。iPS細胞で同様な結果を出すのが次のステップだが、iPS細胞にがん化の可能性があり、研究が止まっている。今後に期待だ。
他にも、マイクロバイオーム(腸内細菌叢)を健康な人と入れ替えるようなことや、短くなったテロメアを伸ばすこと、はたまた血を入れ替えるといった少し突飛なものまである(中世ヨーロッパでは瀉血(しゃけつ)という血を抜く治療もあった)。
今できることは何か?
上に挙げたのはまだ少し未来の話で、今現時点でできることはない。「不老不死」と表現すると大げさになるが、「健康長寿」に近づけるためにできることを最後に纏めておこう。
①タバコをやめる
タバコは体にものすごく悪い。これはみんな知っているだろう。タバコを吸っていると健康寿命(誰の介助も必要とせず、健康に過ごせる時間)が10年ほど短くなる。肺はもちろん、あらゆるがんのリスクが増加し、COPDのリスクも高まる。
タバコの値段もうなぎ昇りに上がっていくし、これを機会にタバコから手を引いてみては?(禁煙は自分の意志だけでは難しい場合も多いため、禁煙外来での治療をお勧めする)
②運動する(座っている時間を短くする)
運動することが健康にいいことは誰しもが知っている。週に2-3回、適度に身体を動かすだけでも非常に有効である。
「Exercise is Medicine. (運動は副作用のない薬だ)」と言われることもある。
ただ、それ以上に座っている時間を短くするということにも目を向けたい。「座る(動かない)」ということが身体に悪いことだというのが多くの研究から分かってきた。座っている時間が長い人は健康寿命が10年短いというデータもあるほどだ。
ん…待てよ。先ほどのタバコの話でも確か10年短くなるって…
その通り、座っていることはタバコを吸うくらい身体に悪いのだ。これは全くもって過言ではない。座っている(運動不足)原因で亡くなる人の数とタバコが原因で亡くなる人の数はほぼ同じだ。
健康のためにタバコをやめる人はいても、座りがちな生活をやめる人はいない。
でも、タバコを止めるより簡単だ。立てばいいんだもの。
③腹八分に抑える
腹八分に抑えることは思っている以上に難しい。だってこの世の中はおいしい食べ物で溢れている。
ただ、腹八分で止めておくことで健康状態が良くなるという研究は多い。というか、空腹の時間が体にとっては重要らしい。
最近では時間制限摂食(Time Restricted Eating(Feeding))も話題だ。食事の間隔を調整し、空腹になっている時間を増やすという手法だ。これなら、1回に食べる量をあまり気にすることなく健康長寿に近づくことができる。
ただ、実際ヒトでの研究では断定するにはデータが少ない。ヒト以外の動物では、食事を制限することによって若々しく寿命も延びることが多く知られているのでヒトでの研究成果がより多く出てくることが待たれる。
どちらにせよ、食べ過ぎないことだ。
まとめ
いかがだっただろうか。「不老不死」はいずれ手に入る、という期待もできるのではなかろうか。今生きている我々がどれだけ恩恵を得られるかは未知だが、この老化研究は日進月歩で発展している。将来的にこのような科学技術が我々の身近なところにやってくるまで、今現時点でできる運動や禁煙などに取り組んでいこう。
参考
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