見出し画像

深谷ねぎ物語①キタ「これが渋沢栄一の経営魂!自由豪胆、土・種・人の個性が光る新戒ねぎ」澁澤農園・澁澤昭代さん

甘くてやわらい。埼玉が誇る野菜、深谷ねぎ。

深谷は渋沢栄一の故郷でもあり、栄一もネギ入り煮ぼうとうを食べたと伝えられています。

余談ですが、私は深谷の隣町の熊谷育ち。小学校のかるた大会の「埼玉かるた」で、「え」は「栄一も 食べたネギ入り 煮ぼうとう」でした。笑

画像3

大きくなった私が情熱を込めて刊行する雑誌「1番近いイタリア」では、生産者を訪問して、インタビュー記事を掲載します。

2021年冬号は「深谷ねぎ」がテーマ食材でした。
「深谷のネギ×ロンバルディア州の食卓」を探求しました。

こちらでは、まだ知られていない、ディープな深谷ねぎのお話を、生産者に直接伺った記事をアップします。

※「1番近いイタリア」とは

「日本の食材で楽しむイタリア家庭料理」をコンセプトとする雑誌です


それでは、記事をお楽しみ下さい。

深谷ねぎの2大エリア、キタとミナミ、まずは①キタ、澁澤昭代さんにお話を伺いました。

画像1

受け継がれる渋沢栄一の魂

私は澁澤家の4代目の農家ですが、明治初期の頃からこの地域では組合を作って、利根川を通じて江戸に向けて独自に流通を築き、出荷してきました。

この地で代々大切にしていることは「個人で何を作るか考え、実践する農業」。農業界では農協を通して売るのが一般的ですが、この土地では例外的に農協の力が弱い。それくらい個人の自由度が高く、個々で農業経営をしています。

もともと、この地域の農家は、本家に仕えるのではなく、新宅として自立していったので、個々の農地面積が少なくなっています。また、珍しく田んぼを中心とせず、畑で麦を作り、その他、藍・野菜・養蚕で得たお金でお米を買っていました。その中で、小さい面積でも収穫量を上げられるように生産性を高め、連作を回避するための綿密な計画を立てながら、一軒の農家が色んな野菜を作っています。まるで、経営ポートフォリオですね。


澁澤さんの農業人生

そんな「個人宅版論語と算盤」が根付いたこの土地に生まれ、両親も画期的なことに挑戦するのが好きで、その背中を見て育ちました。しかし、色んな浮き沈みがありました。

両親は花が好きで、きゅうりの裏作として花を育てていました。時はバブル。景気とともに花の事業も拡大しましたが、バブル崩壊後、途端に苦しくなりました。この時、周りの農家さんはみんな花を育てることをやめてしまいましたが、両親は花作りを続けたいと。

そこで、私は子育ての傍ら花の事業を担当することになりました。目標を掲げ、自分の花のファン作りに励むうちに、花のマーケティングにのめり込んでいきました。

そんな時、雪害でハウスがつぶれるという出来事が起こりました。再建したハウスでは、虫がつくようになってしまい、自然農法で育てる私たちのやり方では、植えた花はみんな枯れていきました。ところがある時、花の代わりに枝豆を植えたら、虫害に悩まされることなく育ったのです。花を育てるには土壌消毒をしなくてはならない、花は育たないが野菜は育つ。この状況の中で、夢中だった花栽培を続けるか悩みます。

悩んでいた時に父が亡くなりました。父は亡くなる前から「お前の好きにしてよいよ」と言っていました。その父が亡くなった時、花をやめて、土壌消毒をせずに野菜を育てることを決意しました。代々受け継がれた土を守るため、自然農法で育てられることを大切にしたのです。


澁澤さんがねぎ作りにおいて大切にしていること

同じ種でも土によって全然違うねぎが出来ます。例えば、同じ深谷ねぎでも、このキタの地域は、硬い土だから、土を高く積めるため白い部分が長くなります。同じキタの地域でも、私のねぎと隣の農家さんのねぎの味は違います。

ねぎは、種と土と人、この3つが組み合わさって出来るのです。どれが良いという話ではなく、一人として同じ農家がいないこの個性豊かな地域で、私も自分の軸を失わないように作っていきたいと思っています。私の軸とは、そうですね、両親からの自然農法を大切にしたい、ということでしょうか。

有難うございました

芯の強い、しなやかな女性。今も女手一つで農業に、子育てに。苦労があったからこそたくましく、そんな澁澤さんに育てられた野菜もたくましく育っています。

今日も畑に出て、独自の深谷ねぎを育てているとのこと。今年の収穫が楽しみです。

画像4

「1番近いイタリア」とは

この記事は雑誌「1番近いイタリア2021秋号」からの抜粋です。

雑誌「1番近いイタリア」 は

イタリア家庭料理研究家の中小路葵による、日本の食材でイタリア家庭料理を楽しむ季刊誌です。

毎回、日本の小さなユニークな生産者を取材し、彼らのストーリーと共に、イタリア料理を楽しみます。

コンテンツには、エッセイ、イタリア本の書評、イタリア紀行、論考が入り、イタリアの食を切り口に「豊かな食」「丁寧な暮らし」を綴ります。

「2021冬号」のテーマは、「埼玉県深谷市のねぎ×ロンバルディア州の食卓」でした。

スライド1

次号は「長野県小布施町のカブ×ピエモンテ州の食卓」です。

「1番近いイタリア」ご購読頂ける方はこちらより。

piuvicinoaitalia.stores.jp

頂いた売上金は、想いを持った生産者の活動支援、日伊の食の活動に使わせて頂きます。

どうぞ宜しくお願い致します!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?