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他人のリアルを直視できない

 僕は空っぽ。
 だから、他人のリアルを直視できない。


シャル
主人公
〈ロミルダ〉
妖精


 やっぱり他人のリアルを見ると気分が悪くなる。
〈いつもの嫉妬しい?〉
 んー、それよりひどいかも。
 嫉妬ならまだマシかもしれないって思うようになった。
〈どういうこと?〉

 最近、より強く感じるのは、嫉妬よりどす黒い何か。
〈何かって?〉
 なんだろう。
 うまく言葉にできないけど、とにかく嫌な気持ち。
〈そう…。話を続けて〉
 わかった。

 他の人の記事、プロフィール。
 あとは、ニュースやドキュメンタリー、ノンフィクション。
 そういうところで、リアルな、辛い話、悲しい話、理不尽な話を聞くと、心が悲鳴を上げる。

〈どうしてかしら?〉
 それは、僕が空っぽだから。
〈あ、ここで最初に言ってたことに繋がるのね〉
 うん。

 僕には、リアルがない。
 少なくとも、自分のアイデンティティの支えになるような、頼もしいリアルがない。

〈だから、空っぽ?〉
 そう。

 そして、こんな空っぽの心には、なんでも入る。
 嵐の中に打ち捨てられたバケツと同じ。
 なんでも、入ってしまう。

 そこに、自分と他人の境界を作れなくて。
 自分の中まで侵されたような気がして。

 だから、苦しくなる。
 だから、いたたまれなくなる。
 だから、嫌になる。

〈…対策は?〉
 いい質問。

 確固たる「自分」があれば気にならなくなるかもしれない。
 でも、何もなしに一朝一夕でできるものじゃない。

 だから、これはもう、そういう話から離れるしかない。

 何もしなくても、テレビやインターネットからあらゆる情報が目に入ってくるこの時代。
 意識して情報を目に入れないことも、ひとつの大切な技術だと思う。


 今回はここまで。

 なんか、今日の話さ、曲解されるとさ、「不都合なことには目をつぶればいい」みたいな主張に見えないかな?
〈見えるわ〉
 それは困るぅ…。

 そういう次元の話をしてるつもりはないんだけどなぁ…。

 真実を追求するジャーナリズムの話をしてるんじゃない。
 振り回されてるナイフからは逃げてもいいって言ってるだけなのに。

〈まあ、発信者だもの。クリエイターだもの。誤解される可能性はどうしても拭えないわ〉
 まぁ、それもそっか…。
〈ちゃんとわかってくれる人もいるわよ〉
 そうだね。そうだったら、嬉しいね。

 それでは、またあした。
〈ばいばい!!〉

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