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つみたてNISAの投信選び

はじめに

 積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)が始まって約3年半になりました。

 この間に株式相場は大幅な下落局面をはさみながらも上昇し、制度を利用する人の多くが資産を積み上げています。

 つみたてNISAは2037年まで毎年口座を開設でき、20年間非課税での運用が可能です。

 利用し続ける人や新たに始める人が長期の資産形成に生かすには投資対象をどう選び、何に注意すればいいのでしょうか。

長期の資産形成に関心
 つみたてNISAの口座開設数は21年3月末時点で約361万と前年同期に比べ65%増となりました。

 20~30歳代の開設が目立ち「若年層を中心に長期の資産形成に関心を持つ人が増えた」と独立系金融アドバイザーは話しています。

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 先に制度ができた一般NISAでは個別株などにも投資できるのと異なり、つみたてNISAは投資対象が限定されています。

 購入時の手数料や信託報酬が一定水準以下など、金融庁が定めた条件を満たす必要があり、現在対象となっているのは投資信託が192本、上場投資信託(ETF)が7本の合計199本となっています。

米国株、先進国株投信が上位
 投資枠は年40万円、これを上限まで使い、対象の投信に制度開始当初(18年1月)から今年7月末まで毎月3万3333円を積み立て投資した場合、資産はどれぐらい積み上がったのか?

 QUICK資産運用研究所の集計によると元本の約143万円に対し、8月末時点で最も含み益が大きかったのは「楽天・全米株式インデックスファンド」の約76万円でした。

 同投信は米国株式市場に上場する約4000銘柄を対象にした「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」に連動しています。

 上位商品の多くは米S&P500種株価指数や、日本を除く先進国株式の値動きを示す「MSCIコクサイ指数」など海外の株価指数に連動するインデックス型投信であった。

 アクティブ(積極運用)型では「フィデリティ・米国優良株・ファンド」が3位に入りました。

 背景にあるのがアップルなど「GAFAM」と呼ばれる米IT(情報技術)大手の株価上昇である。

 7月末時点で投信の組み入れ銘柄に占めるGAFAMの比率をみると楽天・全米株式インデックスファンドで18%、フィデリティ・米国株・優良ファンドは25%となっています。

 個人の関心も高く、楽天証券では6月以降につみたてNISA口座で購入された投信の約5割が米国株関連だったという。

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 一方、下位にはバランス型投信が並んだ。バランス型は値動きを安定させるため株式のほか債券、不動産投資信託(REIT)などに分散投資するのが特徴です。

 例えば下位の3つのうち「東京海上・円資産インデックスバランスファンド」は国内債券70%、国内株式15%、国内REIT15%を基本としています。

 ほかの2つも国内外債券の比率が8~9割程度です。

 同じバランス型でも株式の比率を高めにした投信は含み益が多くあります。

 例えば、表にはないが「たわらノーロード 最適化バランス(積極型)」の含み益は41万円。

 国内外の株式が約6割、REITと債券がそれぞれ2割前後という比率で株高の恩恵を受けました。

 つみたてNISA対象の全投信が含み益だったが、口座を開いた人がすべて資産を増やせた訳ではない。

 上昇した株式相場をみて「今から買うのは高すぎないか」とためらう人などもいるからだ。

 金融庁によると、20年12月末時点のつみたてNISA口座(約302万)のうち1度も買い付けがなかった口座は3割超あった。

 専門家は「いつ何をいくら買うのか迷い、なかなか始められない人も多い」と話す。

 運用を始めても相場が動くとすぐに売却する人もいる。

 2018~2019年の利用枠で買われた商品は2975億円で、2020年中に時価ベースで519億円が売却された。

 NISAでは売却すると同じ枠は使えない。

 専門家は「値上がり時の非課税の恩恵を受けるには長期運用が基本で、目安として10年は目指したい」と話す。

株式中心で非課税生かす
 では長期で運用していくため、投資対象はどう選べばいいのか。

 まず大切なのが、つみたてNISAの口座だけでなく金融資産全体で配分を考えること。

 目先必要な生活資金や3~5年内に使い道が決まっている資金は預貯金や通常の課税口座で債券などリスクの低い金融商品を利用する。

 投資収益に通常2割かかる税金が免除されるつみたてNISAでは「長期でリターンの高い株式の比率が高い投信を優先したい」とモーニングスターの朝倉智也社長は助言する。

 米国株投信や、分散を考えて欧州などを含む先進国株投信が選択肢になるという。

 ただ株式相場の変動は大きい。20年春の新型コロナウイルスショックで大きく値下がりし、含み損を一時抱えた投信もあった。

 足元では中国発の金融システムリスクへの懸念から相場は急落した。

 こうした価格変動による損益のブレの大きさを統計学で数値化したのが標準偏差という考え方だ。

 例えば年率リターンが18%、標準偏差が20%の投信なら、リターンは18%を中心に上下に20%の範囲(プラス38%からマイナス2%)で動く確率が約7割あることを示す。

 自分がどの程度の下落なら投資を続けられるかを踏まえて投信を選ぶことが重要だ。

 信託報酬などの費用も注意したい。つみたてNISAは条件があるため比較的低いが一般にインデックス型に比べアクティブ型は高い。

 長期運用では差が出てくる。

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一般NISAから変更可能

 一般NISAはつみたてNISAよりも4年早い2014年1月に制度が始まった。

 口座数は1224万と積み立て型の3倍強ある。

 投資枠が年120万円と多く、投資対象も国内外の個別株など幅広い。

 つみたてNISAとの併用はできないため、一般NISAを選ぶ人も多い。

 ただ非課税期間は5年と短めで、期間後も保有を続ける場合は「ロールオーバー(移管)」などの手続きの手間がかかる。

 個別株に投資はできるが、取引の単位である1単元が100株だったり、1単元当たりの株価が高かったりする個別株では購入できる銘柄が限られるなどの面もある。

 投資初心者やより長期の資産運用が目的なら、つみたてNISAの方が使い勝手は良いとされる。

 いったん一般NISAを開いた人でも変更は可能だ。

 その年に一般NISA口座で1度も取引をしていない場合に、原則として9月末までに口座を持つ金融機関へ区分変更の届け出をすれば年内に新たなつみたてNISAの口座で取引できる。

 元の口座を1度でも利用すると新口座での取引は翌年からとなる。

 変更の手続きは原則10~12月まで。

 金融機関も変える場合は口座や勘定の廃止と開設の手続きが必要。

 税務署の審査も再度必要になるため、1週間から1カ月程度かかることが多い。






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