外貨預金、高金利通貨に思わぬリスク

　外貨預金は通貨を交換する手間などを反映した為替手数料がかかる
為替相場が変動する仕組みについて話し合った筧家のダイニング。
　息子は洋書を通販サイトで物色しつつ「ちょっとでも円高の時に買いたいけれど、いつがいいかなあ」と困り顔です。
夫　「そうだよな。迷うよな」と相づちをうちます。
妻　　手数料とか細かい話を省けばそうなるね。でも海外の通貨を持つ意義

　　　は、買い物や旅行で使うだけではないのよ。
息子　他に何があるの。
妻　　資産運用の手段ね。日本は超低金利だから預貯金にほとんど利息が

　　　つかないでしょ。　

　　　海外は日本よりは金利が高い国が多いわ。

　　　例えば楽天銀行の期間1年の定期預金の場合、円預金の金利が

　　　0.02%（13日時点）なのに対し、米ドル預金に円から預け入れると

　　　0.1%よ。　　

　　　また、物価上昇へのそなえとしても有効ね。

　　　物価が上昇すると、円の実質的な価値が目減りしかねない。

　　　物価上昇は通貨安につながりやすいから、保有資産の一部が外貨建て

　　　なら、こうしたリスクを抑えられるわ。

夫　　初心者の外貨投資は何がいいかな。
妻　　外貨投資といえば、まず外貨預金が思い浮かぶ人が多いんじゃない

　　　かしら。

　　　円預金と異なるのは、円として引き出す際に預入時から円安が進んで

　　　いれば、為替差益を得られ、逆に円高なら差損が発生する点ね。

　　　専門家は「日本より金利が高い国の債券や外貨預金への問い合わせは

　　　増えつつある」と話していた。
夫　　手数料はかかるの。
妻　　外貨預金は通貨を交換する手間などを反映した為替手数料がかかる

　　　わ。

　　　手数料は金融機関によって違う。

　　　米ドルならメガバンクの窓口では、外貨預金するときや円として引き

　　　出すときに1ドルあたり1円かかることが多いけれど、ネット銀行など

　　　はもっと低いわね。

息子　為替手数料まで考えると、預金の魅力は低くなるね。
妻　　そう考える人も多いわ。新型コロナウイルス感染症などによる景気

　　　への影響が懸念される中、多くの国の中央銀行は金融緩和政策を打ち

　　　出したでしょ。

　　　外貨預金の金利も主要国の通貨は軒並み低いのよ。
夫　　しかし、通貨も色々あるからな。新興国は金利も比較的高いんじゃ

　　　ないか。
妻　　新興国の通貨は流通量が少なく、価格変動が大きくなりやすい傾向が

　　　あるわ。

　　　金利が高くてもインフレなどで通貨安が進めば高金利の恩恵が打ち消

　　　される可能性がある。

　　　例えば利息収入を狙う個人投資家に人気だったトルコリラは、インフ

　　　レや地政学リスクなどを背景に長期的に下落基調よ。

　　　専門家は「金融商品は自分で仕組みが分からないものは買わないのが

　　　原則。

　　　通貨も、発行国の情報が調べにくいものは避けたい」と話していた

　　　わ。

夫　　そうなのか。では海外の金融商品で何が人気なんだ？
妻　　資産自体の値上がりが期待できる海外株、特に米国株は人気よ。

　　　米国の主要株価指数は最高値圏だしね。
息子　僕はナスダック上場のハイテク株に興味あるな。
妻　　米国株は日々の株価がドルで表示されているでしょ。

　　　国内の証券会社で日本円で決済する場合は、証券会社の提示する

　　　レートで売買する仕組みなの。

　　　株式を売って利益や損失を確定する際には、株価そのものの動きに

　　　加えて、為替の変動が乗ってくることになるわ。
夫　　海外株は円ベースの値動きが大きくなるかもな。
妻　　個別の銘柄選択が難しい初心者は、海外株に投資している投資信託が

　　　選択肢になるわ。

　　　投信は比較的少額から購入できるし、複数の銘柄に分散投資できる

　　　からね。

　　　ただ、海外株に投資する投信は基準価格が円建てでも為替の影響は

　　　受けるの。

　　　海外株の円換算の評価額が為替次第で変わるからよ。

　　　外貨ベースの株価が同じでも、円高になると基準価格が下がるわ。

夫　　資産全体で、海外資産はどれぐらいがいいのかな。
妻　　リスクに対する考え方にもよるから一概にはいえないけれど、

　　　若い世代は資産の多くを振り向けやすいわ。給与など収入の増加が

　　　期待できるし、運用期間が長く見込めるから。

　　　一時的に損失が出ても補いやすいでしょ。

　　　専門家は「万が一に備えて6カ月分程度の生活資金は円建て預金と

　　　して確保したい」とした上で「老後を見据え50歳を過ぎたら海外資産

　　　の比率を徐々に引き下げていくのがよい」としていた。
息子　外国為替証拠金（FX）取引は運用としてどうなの。
妻　　FXは担保として預け入れたお金の数倍のお金を取引できる「レバレッ

　　　ジ」という仕組みが特徴よ。顧客保護の観点などから倍率に規制が

　　　あり、現在の上限は25倍。

　　　つまり10万円のお金を投じた場合、最大250万円相当の売買ができる

　　　のよ。

　　　その分、利益だけでなく損失も大きくなるリスクがある、いわば

　　　もろ刃の剣ね。
夫　　損失を限定する仕組みもあったんじゃなかったっけ。
妻　　評価損が一定まで膨らんだ場合に持ち高を解消して損失を限定する

　　　強制ロスカットがあるわ。ただ、急激な為替変動で想定の水準で

　　　ロスカットできず損失が大きくなることもあるのよ。レバレッジを

　　　かけすぎない方法もあるけれど、他の外貨投資と性質が異なるわね。

ビジネスDr.