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中小企業の製造業の課題と対策

1.製造業における4つの課題

 日本の製造業を取り巻く環境はここ数年で大きく変化する中、さらに多くの問題が顕在化しつつあります。具体的には、「人手不足」「自動化の遅れ」「技術継承問題」「人件費の高騰」です。製造業が今後も生き残るためには、これらの課題と真摯に向き合い、対応策を講じなくてはなりません。

課題1:人手不足

少子高齢化が加速する日本では、さまざまな業界で人手不足が叫ばれていますが、製造業においては特にその傾向が顕著です。経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同で取りまとめた資料によれば、2021年における全産業に占める製造業の就業者数の割合は、2002年と比較して3.4ポイント低下しています。 
さらに、製造業では34歳以下の若年就業者が20年間で約121万人減少しています。
対して、65歳以上の高齢就業者数は20年間で約33万人増加しており、2022年時点の就労者数は若年就業者が25%、高齢就業者が9%の割合で落ち着いています。
このまま人手不足の状況が続けば労働環境が悪化し、従業員のモチベーション低下、離職率増加により、さらなる人手不足に陥るという悪循環が懸念されます。
そうなれば生産性の低下は免れず、事業の縮小、ひいては国力の衰退にもつながるでしょう。 
日本は今後も少子高齢化による労働人口の減少が続くと見られており、人手不足の抜本的な解決を図るには、雇用だけでなく多角的な観点からアプローチが求められます。

課題2:自動化の遅れ

手作業の多い製造業では、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」による業務自動化が、課題解決に貢献することが期待されています。
DXとは、AIやIoTなど先端技術の活用により企業変革を図り、競争優位性の確立をめざすことで、日本でもDX推進の取り組みが進んでいます。
製造業にAIを導入することで、これまで手作業で行っていた業務を機械に任せ、手が空いた従業員がコア業務や有人対応を要する業務に回ることが可能になります。
加えて、作業品質の均一化や正確性の向上、現場従業員の負担軽減も期待できます。
ところが、日本の製造業におけるDXは、ICT活用に対する経営層の理解不足や、システムのレガシー化、ICT人材の確保の難しさなどの問題から、諸外国と比べて普及が遅れているのが実情です。
加えて、IoT機器やAIシステムを導入するためには多額のコストを要するため、金銭的余裕がない中小企業では導入しづらいのが実情です。
もっとも、近年では製造業DXに対する意識が向上してきているのも事実です。
IT投資で解決したい重点課題として6割強の企業が「業務プロセスの効率化とスピードアップ」を、4割強の企業が「ビジネスプロセスの変革」を挙げています。 
さらに、2021年における製造業のIT投資額は、前年比で約0.1兆円のマイナスながらも、一部の業種では増加しているところも多く、今後の伸びが期待されます。 
加えて、中小企業庁がとりまとめた資料では、製造分野の中小企業におけるデジタル化への意識が、新型コロナウイルス流行前後で大きく変化していることも示されています。
流行後の調査では、約65%の企業がデジタル化の優先順位を「高い」もしくは「やや高い」に位置付けており、DXに対する前向きな姿勢がうかがえます。

課題3:技術承継問題

企業独自の知見やノウハウを共有・継承していくことは、事業継続の観点から多くの企業で重視されています。
もちろん製造業も例外ではありませんが、技術承継に問題を抱えているケースが少なくありません。 
まずは少子高齢化により、次代を担う若手人材が不足している問題が挙げられます。
技術承継をしようにも、そもそも後継者がいなければ話になりません。しかし、ただでさえ人手不足な製造業では、生産性との兼ね合いで人材育成に時間や人員を割けず、せっかく採用した若手人材が育たないうちに退職してしまう恐れがあります。 
さらに、終身雇用制度から成果主義制度への変化が原因となり、技術を有した従業員がいなくなる場合もあります。
成果主義を採用している場合、高い技術を持つ従業員が定年まで働かずに転職するケースがあるため、技術承継ができていないと、技術そのものも失われる可能性があります。
技術承継が適切に行われなければ、生産効率の低下や、新製品の開発が難しくなるなどの問題が生じます。
今後の企業経営に悪影響を及ぼす恐れも十分に考えられます。

課題4:人件費の高騰

人材不足に関連して、人件費の高騰も製造業にとって大きな課題です。
日本の労働人口が減少している現在、安価な給与では、企業が人材を獲得することも、雇用を継続することも困難です。
このような状況の中、競合他社に先んじて優秀な人材をより多く獲得するためには、給与や福利厚生などの面で好待遇をアピールすることが重要です。

2.製造業が取るべき対策

こうした課題を踏まえ、製造業が取るべき対策としては、「ICT化」や「ナレッジマネジメントの構築」、「無駄の削減」が考えられます。
この3つの対策で業務効率化を図ることで、従業員の作業負担を減らしつつ、生産性の向上が可能です。

対策1:ICT化

ICT化は、企業規模を問わずこれからの製造業に必要な変化です。
たとえばIoT機器を導入することで、製品を生産する機械の稼働状況や製造工程、故障箇所の有無など、工場内のあらゆるデータを自動的に収集して保存できます。
必要なデータを抽出して確認・分析もできるため、製造ラインの稼働状況や生産効率まで幅広く把握することが可能です。
ロボットもICT機器として、多くの企業が導入を進めています。
ロボットの導入により、製造や検査などの作業工程を自動化できるため、生産性の向上が期待できます。
加えて、品質のばらつきやヒューマンエラーが生じにくいメリットもあります。
対策2:ナレッジマネジメントの構築
企業の技術承継をスムーズに行うためには、技術に関する知識やノウハウをチームで共有することが大切です。
そのためには、ベテランの従業員が蓄積している知識や経験、ノウハウなどの暗黙知を言語化して、手順書やマニュアル、動画や写真などに残す「ナレッジマネジメント」を構築する必要があります。
ナレッジマネジメントを構築することで、誰もが理解・習得できるデータやマニュアルを社内で共有したり、従業員が検索システムで必要な情報を簡単に閲覧できるようになります。
手順を何度も確認できるため、技術承継も無理なく行えるでしょう。
対策3:無駄の削減
製造業の現場においては、「加工」「在庫」「不良・手直し」「手待ち」「造りすぎ」「動作」「運搬」の7つの無駄が生じやすいとされています。これらはそれぞれの頭文字を取って「かざふてつどう」と呼ばれ、製造業が業務効率化をめざすうえで意識すべき標語となっています。 
この「かざふてつどう」の標語を意識することで、不要な加工プロセスや加工方法がないか、余剰在庫が保管スペースを圧迫していないか、不良品の発生防止のために品質管理が適切に行われているかなどがチェックでき、無駄の削減につながります。

私の考え

現在の状況では日本の製造業は、人手不足をはじめさまざまな課題を抱えていますが、この記事で紹介したような、ICT化・スマートファクトリー化を推進することで、工場内のあらゆるデータが有効活用できるようになり、業務の自動化や効率化、設備の最適化からエネルギーコストの削減も期待できます。
もし自社のビジネスの将来に不安があるのであれば、工場のICT化・スマートファクトリー化の検討をおすすめします。
その前に改善すべきこと、これらの設備を導入しても改善すべきことができてなければならない部分が多くあります。
ビジネスDrが皆様に伴走をして問題を解決するためのサポートをさせてもらっています。

ご意見またはご相談等がありましたら、comisapo1@gmail.com    迄、ご連絡ください。

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