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コロナ対応、いま日本がやるべきこととやめるべきこと

〇菅首相は2021年5月7日、東京都や大阪府などの緊急事態宣言について5月11日の期限を5月末までに延ばすと発表した記者会見で、「安心した日常を取り戻すことができるかどうか、それはいかに多くの人にワクチンを接種できるかどうかかかっている」と述べました。そして、「1日100万回の摂取を目標とし、7月末を念頭に希望するすべての高齢者に2回の摂取を終わらせるよう政府としてあらゆる手段を尽くし、自治体をサポートする」と述べました。

〇今、国民が最も望んでいるコロナ対策はワクチンの早期接種です。その要望に応える菅首相の発言や良し、と言いたいところですが、うーん、実際に実行可能なのでしょうか。日本がいまや、ワクチン接種が世界で最も遅れた国の一つであるのは国民みんなが知っています。4月27日の日経新聞によると、この時点で1回目の摂取を済ませたのは180万人(そのほとんどは医療従事者)で、日本の人口比1%超。アジア全体の4%からも取り残されています。バイデン米大統領は2021年1月の就任後100日間で、1億回の接種を目指ましたが、3月に早くも達成、さらに4月には2億回を突破しました(4月25日「朝日新聞」)。比較するのも恥ずかしい政治の力の格差です。

〇ワクチンの早期接種には、ワクチンと接種するスタッフの確保が両方必要です。これまではワクチンの確保が思うにまかせず、菅首相の早期接種の約束が食言続きとなる大きな原因となっていました。今回は、ワクチンの確保は何とかなりそうですが(日本にも順番が回ってきた!)、問題はスタッフの問題。電話での接種の受付業務でさえ、まともにやれずトラブル続きの日本の行政能力ですから、どうなるか、やってみなければわかりません。
〇ワクチン接種はいま取り組むべきコロナ対応の代表とすると、逆にコロナ対応のために、取りやめるべきことがあります。言うまでもなく、オリンピックの開催です。政府は(自治体も)、不要不急の外出はするな、などと国民に呼びかけますが、コロナ下のオリンピックほど不要不急どころか、有害無益なものはないでしょう。

〇今更理由を挙げるまでもないでしょうが、(1)たとえ無観客で開催しても、各国の選手とそれを支える人たちなどが万単位で来日し、その人たちと日本人が相互に感染する可能性が大である(2)各国の選手たちを迎え入れる以上、それらの人達を感染から守るのは開催国の責務。しかしそのために医師、看護師ら貴重な人手をオリンピックに割くとなれば、到底国民の理解は得られない(3)政府は、人類がコロナに打ち勝った証としてオリンピックを開くなどというが、日本は打ち勝つどころか負けっぱなしであることは明らか。そうした現実を見ないことが日本のコロナ対策の失敗の原因であることは、私が繰り返し指摘してきたことであります。

〇コロナに対応するのに、今日本で、やるべきこととやめるべきこと、二つながら、明らかです。しかもその二つとも、この5月中の今、取り組まなければ意味がありません。2か月後に迫ったオリンピックの開催の断念は、遅すぎるとも言えますが、早くやめる決断をすればするほど、傷は浅くなります。ワクチン接種は再スタートのこの五月、しっかり取り組まなければ、とても高齢者の接種が7月中に終わるなどということは実現しないでしょう。日本のコロナ対策は、正念場を迎えています。

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