スウェーデン移住計画1- プロローグ
こんな引っ越しはもう2度とないだろう。
いや、2度とあって欲しくない。
過去最悪の3日間。
緊張の途切れで頭をもたげた疲労に身を任せ、何もない部屋に寝転がり安堵と後悔に包まれながら僕はそっと目を閉じた。
どのくらいの時間そうしていたのか。
静寂の中、ふと脳裏にあの言葉が浮かんだ。
「そろそろスウェーデンにも住みたいな」
ロス、プラハ、韓国など数都市を経て東京に住み着いたNinaの口からそんな言葉が出たのは、彼女がスウェーデンを離れてから17年目の春だった。
去年、僕はNinaとスウェーデンを訪れており、神話の眠る王国にすっかり魅了されていた。
自然と建物の調和が取れている美しい国。
自然が多く残り、至る所に湖がある神秘的な国。
見聞きしたもの全てに心が洗われた。
空の広さにも感動を覚えた。
建物が低く、道が広いので空が見渡せる。
高層ビルなど見当たらない。
スウェーデン中探しても数えるほどしかないだろう。
日本の田舎も空が広いと言われるかもしれないが、札幌、東京と大きな都市に住み続けた僕にはすごく新鮮だったのだ。
滞在中、他愛もない話から移住の話になり「いつかスウェーデンに住もう」なんて言っていたが、まさか半年後に移住計画がスタートするとは……
「そろそろスウェーデンにも住みたいな」
全てはこの言葉から始まった。