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感想

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読んだ小説・見た映画の感想や、自作の解題を置く場所です。 たまの更新です。
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記事一覧

「十円」あれこれ

付き合いのわりと長い相方とは、遠距離になった後もしょっちゅうラインをしている。ある日「なにしてんの?」と何気なく送ると「十円玉みがき」と帰ってきた。なぜ? なにしてんの? 彼女はその後「ふふふ」と言葉を添えて、ピッカピカになった昭和の十円玉の写真を送ってきた。ヘッダーの画像がそれである。 電話で十円玉みがきの詳しい話を聞いた。研磨剤にもいろいろ種類があってとか、ドリルの先に着けるタイプの研磨機が優秀だとか、そんな話をしているうち、「十円も鏡面磨きすればそれは銅鏡だよね」とい

「バス停山」あれこれ

●自作自解(あくまでひとつの読みとして) 複数人の乗り合わせたバスが舞台となる。 バスは進行しつつ、「誰も降りないのに降車ボタンが押され続ける」という問題(?)を乗客は共有している。この現象を起点とした、各乗客の受け取り方を軸に、各乗客の抱えている内心が少しだけ見えたり見えなかったりする。 最初の乗客、誠二は息子の悠を連れて父親(悠にとっての祖父)を見まいに行く。誠二の心情の吐露から、父親の余命はそう長くないのかも。また父親の気難しさと息子との間で、緩衝材の役割をしている

「伍糸布集 軽舟過ぐ」自作解題

このたび空の鏡社さんより発売されました「伍糸布集 軽舟過ぐ」に自作をいくつか寄せています↓ 「伍糸布」とは、単語五つを並べて編む、短歌とも俳句とも異なる新しい形の短詩です。発売記念&宣伝として、本書に寄せた自作30作について解題をつくりました。本を手に入れてから読むもよし、先にこの記事を読むもよしです。 春布 ●霞 追想 加速度 霧笛 歩数計 雰囲気で編みました。霞の中ではなにかしらの慣性に従って体や、物の見え方がぐんぐん加速していくような錯覚を覚えます。たしからしい

「袖をひく石」あれこれ

おかげさまで準決勝にまで進むことが出来ました。緊張のしっぱなしで食事も一日三回しかのどを通りません。(以下のリンクから読めます) 作品概観 (あくまで一つの読み方として) 海底炭鉱施設の跡地を見学に訪れた主人公は、黒い砂や石の散る浜で、石を拾う老人に出会う。老人は自宅(?)へ戻り、持ち帰った石を削りながらひとり語りを始める。以下のような話である。 「かつてこの地の炭鉱からは稀に上質の石(姫石)が取れたが、同時に子どもの失踪事件も起こった。失踪した子どもが坑内から発見され

「花」あれこれ

ブンゲイファイトクラブ3(BFC3)という催しで、本戦ファイターとして出場いたしました。大変栄誉なことです。作品は↓のリンクから読めます。 作品概観 (あくまで一つの読み方として)  教室に飾る花がいつの間にか入れ替わっていく。クラスメイト達が早朝こっそりと花の入れ替えを行っているのだと気づいた主人公の私は、いずれ自分の番が来るのではないかと準備を進める。私は花の入れ替えを「ゲーム」と呼び、特に意味のない余興のようにとらえつつ、心のどこかでは「自分のため」に行うある種の儀

かぐやSF2 最終十作品の感想

VG+さん主催の「かぐやSFコンテスト」第二回のテーマは「未来の色彩」! 公開から少し遅れを取りましたが感想を書いていきます。本コンテストの面白いところは匿名で作品が公開され、読者投票にかけられるというところです。知り合いが予選突破していたら、どの作品なのか当てるのも楽しい! 投票締め切りは25日。4000字なので読むだけならすぐに読めるぞ。いそげ! ネタバレなどは気にせず書いています。 友人の作品予想も兼ねるので少し内輪っぽい読みもするかもです。 感想の長さは評価の良しあ

大木芙沙子『かわいいハミー』内での「役に立つ」「幸せ」の解釈と「博士の発言毒親じゃない?」問題

 先日、バゴプラさん掲載のネット小説、大木芙沙子さん「かわいいハミー」を扱った読書会(ブンゲイ実況)を行いました。 「かわいいハミー」はロボットの主人公が博士の手を離れ様々な出会いと別れを繰り返しながら成長(?)していく物語です。作品は以下のリンク先で無料で読めるので是非読んでみてください。本記事にはネタバレを含むので、先に! さて、実況後、匿名視聴者の方から、以下のような質問が寄せられました。 関連して「博士(=親)の遺言が「人と関わってみたらいい、そしていろんな体験

ブンゲイファイトクラブ2 かんそう

ブンゲイファイトクラブ2の本選作品について、ふわふわの感想を書きます。これは普段六枚道場の感想を書くときと同じですが、以下の三点に留意して閲覧いただけますと幸いです。 ・あくまで感想だよ。批評ではないよ ・感想の長さは作品評価に比例しないよ ・基本いいところを好意的に読むよ。でも思ってもない御世辞は言わないよ グループA 「青紙」竹花一乃さん  程よい毒ですね。しびれます。当方、マイナンバーカードをいまだ申請できていないチキンです。「管理=ディストピア」のイメージが自

かぐやSFコンテスト最終十一作品の感想

かぐやSFコンテストの最終候補十一作品を読んでの感想です。 うしろから読んでます。 ネタバレなどは気にせず書いているのでお気を付けください。 あくまで感想です。きっといろいろ的外れです。 基本的にポジティブに読みます。物足りなかったらごめんなさい。 「いつかあの夏へ」ポストアポカリプス系の作品はそのジャンル自体が嗜好に刺さるので気を付けないと手放しで「素敵……」しか言えなくなってしまう。いや、でも、素敵…… 前半ではグループ学習を通してキーとなる「トウキョウボタル」絶滅の真

「天国崩壊」読んだ話

伊藤なむあひさんの「天国崩壊」を読み終える。 なむさんはこっそり推しの作家さんの一人。 BFCの「跳ぶ死」で目にとまり→めずらしいペンネームを速攻で覚え→タイセンEでタイトルに惹かれ読み→「あ、しゅき」となり→「来たときよりも美しく」や、かなこさんとの共著「aneimo」を読み→「しゅき」継続し→「天国崩壊」とか言う超絶香ばしいタイトルの作品が、完璧なタイミングでやってくる。無意識にポチる。なむさんのマーチャンダイジングが半端ない。  感想だけれど「うわあ、なんだ、なんだ