【台湾留学体験記】 感じたことがすべて/こうた


簡単な自己紹介

名前:こうた
台湾在住歴:4年
学校:台湾大学中国語文学部
学年:3年生
奨学金:有(年に3万元)
趣味:Netflix、ゲーム、バスケ等

台湾に決めた理由

「台湾で大学進学できるらしいよ?」

高校の友達からのこの一言で僕は台湾留学を志しました。もちろん、この瞬間に100%心を台湾に奪われたわけではありません。そこから台湾についてインターネットで沢山調べ、実際に旅行をしてみました。半年くらいは正直迷ったりもしましたが、最終的に台湾留学を決意!決心してからは、台湾生活への期待が大きく不安もあまり感じませんでした。

色々考えた結果、台湾へ行ってまず中国語を学び(1年半)、その後に大学へ進学する(4年)という、単純計算5年半を台湾で過ごすことを決めました。

初めての旅行で見た101は天候に恵まれず! 
それでも圧倒的な景観にワクワクしたのは覚えてます。

語学学校時代について

選ばれたのは、師範大学でした

中国語を勉強するため台湾の語学学校へ入学することを決めた僕ですが、数ある選択肢の中から選んだのは、師範大学の語学学校でした。1956年に成立した歴史のある語学学校。選んだ理由としては、まず第一に、大きいというのがあります。僕の在籍していた時は、世界80か国以上から学生が1700名、中国語を勉強しに来ていました。こんなに大人数の生徒を抱える学校ですが、先生は約150人程いたため、一クラスは基本的に8~10名程度の少人数、みっちりと中国語を学ぶ環境が作られています。学期始めの週は、担任の先生と合わなかった場合、違う先生の受け持つクラスに変更することも可能でした。

僕も、色々なクラスを体験してみました。幸運にも、どの学期も素敵な先生とクラスメイトに出会うことができ、決して流暢ではない拙い中国語を駆使してコミュニケーション。仲良くなって、コロンビア、ホンドラス、アメリカから来た友達を地元沖縄に招待し、短い期間でしたが、沖縄旅行もしました。おいしそうに日本料理に喜ぶ彼らの笑顔は今でも忘れられません。

一応語学学校の雰囲気を伝えたかったのです。微妙な角度の写真しかない…。


大学申請本気モード突入!

盆地という地形のため熱がこもってむわっと蒸し暑い、そんな7月が到来。クラスメイトと楽しく過ごす日々の中、いかんいかん、我の目標は台湾大学合格だったと自分にむちを打ちます。実は、台湾に来て半年経った辺りから、大学行くなら台湾大学へ行きたいと思っていました。

台湾大学申請書類締め切りは2月、締め切りまでにどうしても中国語能力を示す切符(具体的にはTOCFL4級以上)が必要になります。残された時間は十分にあるわけではない、早く中国語を上達しなければならない、そんな危機的な状況の中、不安に駆られて猛勉強がスタートしました。

毎朝3時間の授業を受けた後、コンピューター室に直行し、予定がなければ夜までずっと勉強していました。

当たり前ですが、皆が大学進学のために語学学校へ通っているわけではありません。中国語を単純に学びに来ている交換留学生、夫が台湾駐在になり一緒に越してきた駐在員婦人、定年退職を迎え第二の人生で新しい挑戦をしているご老人。中国語を学ぶ背景は様々です。

ですが、そんな当たり前をなぜか認識できず、勝手にクラスメイトとの中国語能力を比べてしまっていました。焦りのあまり、他人との比較の中で「大丈夫だ、俺のほうが中国語上手だよな」と性格の悪い安心感を得てしまっていました。これは危険状態!他人との比較の中で安心を得ると、他人との比較ですぐに落ち込みます。

そんな状況なので、あまり思い通りにはいきませんでした。目標としていたテストの点数をとれず結構落ち込みました。心は雨模様。

そんな様子を察してか、兄貴分的な先輩が僕を優しく諭してくれました。あの時の「楽しむこと忘れてしまってない?」という言葉にはハッとさせられました。中国語は競争の道具ではない、そう思うと視野が一気に広くなり肩の力もすとんと抜け、落ち着いて勉強ができるようになりました。何より、楽しくなりました。

無事、合格したよ

沢山の方の助けがあって、ついに台湾大学中国文学部に合格!! 努力が報われたんだ、と気分は最高潮。パソコン画面の「合格」を見ながらずっと手が震えていました。

台湾大学での正門にて。この学園を生徒として歩けるという事実に感激。

大学申請に関して、台湾留学を考えている皆さんに簡単にアドバイスをするなら、計画的に行動しよう!ということでしょうか。ある程度でいいので志望校を早く決めたほうがいいです。そして、その目標となる学校の入学申請資料の提出期限と必要中国語レベルを確認します。そこから自分の現在のレベルと目標までのレベルの差を逆算し、目標に向けてコツコツと勉強をしていきましょう。

興味のある分野、学部を見つけるのも大切かもしれません。大学進学の前に語学学校で学ぶことの利点は、1年間の自由時間が多いという点にもあります。3時間の授業以外は、基本的に自由時間です。勉強するもよし、遊ぶもよし、興味のあることを探すもよし。皆さんが楽しみながらこれからの進む方向を決められたらいいな、と願ってます。


大学での生活について

何を勉強しているの?


「中国文学部」では、その名の通り中国文学を主に勉強します。必修科目としては、文学史、文字学、言語学、国学、中国思想などがあります。どれも中国の歴史的文献を読む際に必要な知識ばかりです。いまどき古文!? と言われたり、正直自分も思うことがありますが、長い歴史の篩にかけられてもなお残り続ける作品は、それを応用できるかどうかは置いておいて、人間社会をうまく映し出していて、考えさせられる「経典」ばかりです。

お絵描きクラスじゃありません。れっきとした文字学の授業です。

大学で学ぶは、困難かな


台湾大学生は非常に頭が良くて優秀です。入る前から分かってはいましたが、入った後にそれをもっと思い知らされました。例えば、ある授業で急に20分でプレゼンを用意するよう先生が要求。ここまではまだ想定内…。続けて先生が一言「英語で発表」。いや、聞いていない。僕は英語を使わなくていいからこの授業をとったのに…。そう思いながら周りの生徒を見渡すと、皆も苦しそうな表情。僕の経験では人間は困ったときにこの表情をするのだと思ってました。しかし、いざプレゼンタイムが始まるとさっきの表情は何だったのか、彼らは笑顔で流暢な英語を駆使するではありませんか。そうこうしている間に段々と自分に発表の順番が近づきます。恥さらしのカウントダウンに冷や汗が止まりません…。これ以上のことは聞かないでください。結果は散々なものでした。

上の例は一番きつかったエピソードですが、その他授業中の討論でも、すごく深い感想や分析を聞くときは、「すごいなぁ」と感心する一方、自分の順番が回ってくるのが怖いと感じてしまいます。

ですが、みんな優しかったです。
授業で出会った人の多くは、僕が日本から来て中国語非母語者であることを理解してくれて、優しい眼差しで僕のことを待ってくれました。時には、その優しさに涙がこぼれそうにもなりますが、ちゃんと自らを奮い立たせ、できる限りの一生懸命で向き合います。笑わず真剣に参加すれば、ふざけてはいないんだな、と解ってもらえ、周りに助けの手を求めやすくなります。恥から逃げるためにずっと消極的でいると、ネガティブな印象になりますしね。完璧なパフォーマンスは出来なくても、態度で示すことって重要なのかもしれません。

真剣に授業を聞いています。


普段の生活ってどんな感じ?


僕は今台湾の南勢角という場所に住んでいます。大学までは徒歩電車含めて20分程度かかるのですが、この街は住んでいて面白いです。家の近くにはミャンマー街があり、そこを歩けば聞こえてくる言語は中国語やミャンマー語。ビルマ語の表記は丸っこくてかわいいんですよ。

近くのレストランは中国語とビルマ語表記。

朝8時半になると、外から鐘の音が聞こえます。托鉢をして回るお坊さんや尼さんが家の近くに来るのです。見ていると、近所の人たちはバナナや、お米などをお布施しています。異文化すぎてわけがわからなくなりますが、台湾でミャンマーの文化を体験、この感じも大好きです

これはミャンマー式の朝ごはん。
糖分補給にぴったり! むしろ過度接種…


今住んでいる環境は、とってもごちゃごちゃしています。日本の風景とはまるで違う敷き詰められたオートバイ、活気にあふれた夜市、ハウルの動かない城。ごちゃごちゃしているけれど、どれも、嫌いになれない素敵な景色。

休みの日は、基本的に家にいることが多いですが、天気がよかったら散歩をしたりします。目的もなく歩くのは意外と楽しいですし、まだ見たことない台湾の新たな姿を見れたりします。

散歩をしてると、こんな感じの独特なお店にでくわしたりします。


最後に


フラワーカンパニーズの深夜高速という歌詞の一部にこんなのがあります。

「感じることだけが全て 感じたことが全て」

留学も、そういうことなのかなぁ、と考えることがたまにあります。ネットで「日本人は臭豆腐を食べられない」と書かれていましたが実際に食べると僕は大好きな味でした。

「台北101の年越し花火は生で見たほうがいい」と言われてましたが、実際は人混みがきつくて、もう絶対に生で見たくありません。

台湾はこうこう、台湾人はこうこう、といったカテゴリー分けの主張はどこにでも存在しています。ですが、旅行で見た台湾と実際に過ごした台湾は全然違いました。旅行では気づけなかった驚きや、嫌な部分、そして素晴らしさ、いろいろなものを留学では見ることができました。台湾で4年間という決して短くはない時間を過ごす中で、一つの景色に良い思い出も苦い思い出もつまって、簡単には言語化できなくなってきました。でも、その複雑な感情こそが愛おしかったりもします。

つまり、僕の感じたことは僕だけのものであり、これから留学する皆さんには皆さんだけの台湾が広がっているのです。だから、自分がどう思ったか、どう感じたのか、そんな自分の想いと向き合ってみてください。きっとその過程が一番楽しいはずです。

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